このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

4章 青い為事

子は生まれた瞬間に世を悟り、憂いて泣くのだと言う。この子達はまさにその通りなのだと、滴る母の血を浴びて薄らと赤く染まった肌が叫びをあげる瞬間、その姿をとらえた薄水色の瞳から一粒涙が落ちた。赤子の桃色の瞳が初めて見たのは母の優しく迎え入れる顔ではなく、水に沈める侮蔑を浮かべた悪魔のようなの産婆のだった
目の色の違う子が生まれることはありえないのだとしたら.......。それは年月が経とうと、この国が存在する限り抱えるものであった。

サファは目の前の女性になんと言われようと決心を固めていた。なにがあっても自らに宿ったこの子は自分たちが望んだ子なのだと。
「わかった。私はサファがそれで納得してるなら何も言わない」
張り詰めた空気がそのままであるのは変わらなかったがそれでよかった。セルマは何も言わないと言った。ただそれだけでサファの想像していた反応よりずっとよかった
「これが私の戦い方なの。私の復讐相手は国よ。」
「そう.......。そうね。」
視線が注がれる腹部に手をあてるが、まだ実感は程遠い。少し膨らんできたとはいえこの場は厚着をすることになる事を考えれば目立つこともない。仕事場の工房は常に一人。正直、飲み仲間さえ何とかなれば大して怪しいこともないとサファは踏んでいた。それより何よりも隠すことなど初めから考えていない相手がセルマだった。喜んで欲しいとさえ思っていたことは今後も一切、誰にだって打ち明けることはないだろう。
「サファ、驚いてるのよ私。今の今まで本気ではないと思ってたの。全部.......手始めなのかと」
セルマはサファに色々なモノを与えていた。彼女にとって生きがいで、善行を働いているという満足感の快楽、つまりはエクスタシーの1種だったのだろう
「セルマが私を支援してくれるのはなんでだか知ってたけど.......私は本気なの。でも復讐である事には変わりないと思う。手始めで変わりないと、私みたいな人は増えるはず」
愚かだとセルマは吐き捨てたセルマの表情は怒りに満ちていたが、それでもサファまでは捨てられなかった。
「そう。それで.......私はあなたに何をすればいいの?」
「ただ、見ていて。子供たちの未来を守れるように」

何とか乗り越えてきた壁が波のように崩れて飲み込みにかかってくる。その前は異様なほど静かに身を引くものだ。セルマとはあれから1度も会うことは愚か、手紙のひとつもやり取りがなかった。1度くらいルフス相手に乗り込んでくると予想していたサファにとっては迫害を逃れて静かに冬をこえ、一言で言えば穏やかに春を迎えることになる。少しばかり森の深いところにあるルフスの実家へ身を寄せ、隠れ村に産婆を頼んでいる。全ては万全。だが、心穏やかに過ごすことが出来ないのは理に反した子を成したからだけではない。何をしていても今の世間からは愚か、姉のようにしたっていた彼女からも異分子としてみられてしまったことに他ならなかった
4/4ページ
スキ