2章 相反色の家

さて国を牛耳るのはいつだって富と権力を持つ者たち。この国ならば教会を除けば貴族がまずその一団であった。その者達は常に互いの一族を牽制しあい、時に誰の目も逃れて裏から国のバランスを取るように動いている。
王政と言うよりは宗教国家であるこの国では貴族と言えど教会を蔑ろには出来ないのだから当然の形とも言えるのだろう。
基本的には多くの貴族は各自担い、牛耳る所が違う。言わば役員議会の様なものだった。大抵いくつかの家が同じ役職に就き、その家の差や思想の差、主人の差が繁栄と衰退にこの何百年間かで大きく現れはじめていた。
しかしどんなに差があろうと財力というのは物を言う。医者として茶の瞳、大型の動物を所有するために白の瞳、護衛に赤い瞳を雇い、ステータスとしての青の瞳を買い、財宝になる物を黄の瞳に作らせ、使い捨ても厭わない緑の瞳を使用人として屋敷に置き、または専属の者として契約を結ばせたりしていた。
サファも例に漏れずやはり契約をし商品の卸主として繋がり、ルフスも護衛として契約と繋がりがあった。しかしこの2人の雇われ先は別であり、あろう事か同じ商家。しかし、そのやり方の差から侮蔑しあい対立している家だった。それこそお互いにいつかその中枢を崩さんと狙い続けている関係
だからこそ
「今日、リカルドに会うけど?」
などとサファが言えばルフスは確実に嫌な顔をした。リカルドとはサファが契約をしている商家、ヴィスコンティ家の次期当主であり、ルフスとは過去から腐れ縁である
「会っても気を許すなよ。」
「馬鹿ね。私は商品を売りつけに行くだけだわ。貴方みたいに1日貴族と過ごすなんて肩の凝る仕事はしてないんだから」
「それでも...!」
ルフスの言葉は彼女の背に弾かれてしまうのが常。確かに自分よりも幾分か頼りになる彼女に忠告など不要なのだろう。そうルフスはため息を吐いて雇い主、マクラフリン家に護衛の仕事へ向かうことになっていた。
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