1章 生きる者達

ここまでの7色は全て公に国の中で生活している訳だが他にもう1色。混ざり物。悪魔や魔物のように扱われ幻、お伽噺の存在のように扱われている黒の瞳を持つもの達がいた。
その者達は「女は生前に禁忌を犯して生まれた魔女。男はその使い魔」であるとされていた。
その為この者達は身を潜め、隔絶された村を形成して生きながらえていた。しかし、彼らは言われるような魔法が使えるわけでなく頭脳明晰であるというだけであり、そのために村は大いに科学の発展を見せていた。
だが、科学は国全体にもたらされることはなかった。これだけでこの国の今が異常であると察せるのは外の世界を知っている者なのだろう。

もちろんこんな瞳による身分制度に従わず、逆風の中定められていない職を手にする者や、法律で禁止されている禁忌を犯すものもいた。
先程の通り黒は魔の色。その色は違う色同士が結ばれ、子を為しても魔を産むことになるという謂れがあった。もちろんそんなのは噂に過ぎず、両親どちらかの色を持つことになるのだが見た目にそうであっても混ざりものとわかった瞬間に禁忌の子になった。
黒では無い混ざり物の瞳の色の説明など実に簡単だった。魔法で変えているのだと。自然をねじ曲げるよくない力の魔法で見た目を変えて騙しているのだと教会が教えるのだ。そうなってしまえば仲間を吐くように拷問されることもあるのだろう、しかしそんなのは序の口でしかない。生きているのだから。何よりその時が来ると必ず火刑にされることになる。火刑のその重さは誰もがよくわかっている。
人は魂がちゃんと召されるために皆の心の中でその人が死に至るまでの器が必要になると考えられている。けれどそれが生きたまま焼かれることで無くなり、魂ごと焼かれることになる。消し去るという意味では適切な方法だろう。
ところでその魔の者達の両親はというと大概は拘束され監視続けることになるそうだ。これまでにあくまで噂でしかない。皆が隠して来ているのだから関わる者が密告者にならないようにひっそりと暮らしていくしか無かった。
何故この事を詳しく話す必要があるのかと言えばサファもルフスも目の色の違う夫婦であり、ここに関わってしまっているという事実があるからなのだ。
しかしながら茶の瞳の治癒能力は魔法でないのかと首を捻るものもいるだろう。けれどそれは神々が与えた賜り物として大切にされることになっていた。

隠された事実も含め全ての元凶であり、この法律や思想を決定したのは教会のシスターの頂点である者。その者は長い間秘匿され政治的国家の重要人物となっているのが現状だった。
何も知らぬ者は、何年経っても見た目も歳もそれこそ代替わりさえしていないなどと噂があるその者を信じて従って、本当は何をしているのかも知らずに。自分の善を信じて歪み切った国の軋みに耳を塞ぎすごしていた
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