073:天衣無縫

「オレはすごい不安なんですよ」


キラからそう告げられたのは、ある昼時のことだった。自分達の遥か前方ではガイとマヤが草原を駆け回っている。


「何がだ?」
「一体いつまで、マヤはあの笑顔をオレに向けてくれるのかなって」


そう言って遊んでいる二人に目を向けるキラに、なんと答えればいいのか分からなかった。


「いつまでって……たった一人の肉親なのだから、いつまでも向けられるだろう?」
「それは、まだオレ以外に好きな奴がいないからですよ」


導き出した答えにそう返し、キラはどこか寂しそうな声で続ける。


「オレ以外の誰かを好きになったら、もう二度とあの笑顔はオレに向けられない。その好きになった奴に向けられえたままになるんじゃないか……そうなったとき、オレはどうすればいいんだろうってね」


それぐらい不安なのだと続けるキラに苦笑した。
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