072:千紫万紅

偶然にも足の向いたその場所には、一面に色とりどりの花が咲き誇っていた。
その花々の中に彼を見つけて、大地へ降り立つ。


「レイ」


名を呼びかけると、レイは驚いた顔で振り返った。


「ルカ」
「こんなところで会うなんて珍しいな。お前はいつもこのあたりまで飛んでくるのか?」


天空城から大分離れていたので尋ねると、レイは首を左右に振ってみせる。


「たまたまですよ。飛んでいて見つけたんです」
「そうだったのか」
「ええ」


最初は眺めていただけだったのだが、この花々を他の皆にも見せてあげたいと思い、摘んでいたところだったのだと微笑むレイの手には、すでに花束ができあがっていた。
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