出会いをくれた偶然にありがとう


――時々ふと、思うことがある。


「ユダ、偶然というものはすごいものですね」


聖なる泉の辺で何となしに口にしたシンに、ユダは目を瞬かせた。


「シン?」


どうかしたのかと怪訝に名を呼ばれて、シンは小さく苦笑する。


「そう思いませんか? 今、私と貴方がこうしていられるその偶然が、私にはすごいもののように感じるのです」


口にした言葉にユダは返答に窮しているのか、何も答えてはくれなかった。シンは不意に自分の膝の上に置いたハープに目を落とす。

正天使になった自分のために作り上げた手作りのハープ。よくよく考えたら、これを奏でる趣味のおかげで自分とユダは巡り合えたのだ。
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