出会いをくれた偶然にありがとう
――時々ふと、思うことがある。
「ユダ、偶然というものはすごいものですね」
聖なる泉の辺で何となしに口にしたシンに、ユダは目を瞬かせた。
「シン?」
どうかしたのかと怪訝に名を呼ばれて、シンは小さく苦笑する。
「そう思いませんか? 今、私と貴方がこうしていられるその偶然が、私にはすごいもののように感じるのです」
口にした言葉にユダは返答に窮しているのか、何も答えてはくれなかった。シンは不意に自分の膝の上に置いたハープに目を落とす。
正天使になった自分のために作り上げた手作りのハープ。よくよく考えたら、これを奏でる趣味のおかげで自分とユダは巡り合えたのだ。
1/5ページ