ある漫画を読んだ一天使の感想

「ここまできたら、自分を連れて逃げてくれ……くらい、言いませんかね?」


夕食の時間になってもリビングへやって来ないシンを呼びに行った自分の耳に届いたのは、理解に苦しむといわんばかりの声だった。


「随分と大きな独り言だな」
「ゴウ」


ドアノブを回して声をかけると自覚がなかったらしいシンは羞恥で頬を赤らめる。

その反応に思わず苦笑をこぼした。


「何を読んでいたんだ?」


そう言って手に持ったままの文庫本を覗き込んで――目に飛び込んできた古めかしい絵柄に、ああこれかと思った。
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