触れた手の温かさ

「随分と冷たいな」


ルカにそう言われたのは、偶然手と手が触れた直後だった。


「え? あっ……」


触れ合ったその手をしげしげと眺めてくるルカに戸惑ったような声を上げる。そんなレイにルカは視線を向けた。


「ちゃんと温めなくてはだめだろう」
「これでも一応してるんですよ?」


ルカの言葉に小さな子供のように言葉を返す。
事実、家にいるときは重ね着をしたり、シンから教えてもらった身体を温める方法を試してみたり、温まる食材を使って調理してみたりなど、自分なりに工夫しているのだ。


(でも、どれも目に見えた成果を得られないんですよねぇ……)
「以前効果があると聞いたことがあるのだが、
お湯に手を入れてその手を揉むというのは試してみたか?」
「それなら毎晩やってますよ……」


定番ともいえるその方法すら効かないのだと、ため息交じりにレイは告げる。
深刻ともいえるこの冷え症は、生きている限り治らないのではないかとすら思った。


「そもそも、天使が冷え症になるって……天使としてどうなんですか? 人間並みに脆弱な感じがしてすごく嫌です」
「確かに……では、なおさら治すしかないな」
「……それができればこんなこと言ってませんよ」


言葉を返して、レイはため息をつく。そんなレイの耳に届いたのは、ルカからの奇妙な言葉だった。
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