空からの手紙

「本当にすみません」
「いやいや。こちらこそ、こんな場所しかなくて」
「家の方に泊めてあげられればいいのだけれど、ちょっとね……」


何度も頭を下げる老夫婦に、そう言ってキラは普段からは想像もできない愛想を振りまく。
一方のマヤは今夜の宿となる小屋を覗き込んでいた。


「じゃあ、何か入用の物があったら隣の母屋に……」
「はい、そうさせていただきます」


一通りのやり取りを終えて二人が母屋に帰ったのを確認し、キラは大きく息を吐いた。
そんな兄にマヤは無邪気に声をかける。


「兄さん、小屋の中に藁があるよ。あれを敷いて寝たら暖かいんじゃないかな?」
「おい、マヤ」


早々小屋に入って告げる弟に、何一人で勝手に入っているんだと、キラは呆れた調子でその名を呼ぶ。
呼びながらも内心、老夫婦には悪いがそうさせてもらおうかとも思った。


(なにしろ最近、寒くなってきたからな……)


おまけにこのところ実りも少なく、いくら永遠の命を持つ天使とはいえ、野宿するにはかなり堪える時期に入ろうとしていた。


「野宿にならなくてよかったね。何だか雪が降り出しそうだもん」
「そうだな、さっさと食べて寝るか。夜明けにはここを発つぞ」
「え~~」
「え~~じゃない」


不満も露わなマヤにそう答えて、キラは表に出て薪に使えそうな枝を集めに向かう。
その態度にマヤは唇を尖らせた。


「兄さんはせっかちだよ。久しぶりの宿なのに」
「……じゃあ、オレ一人でさっき貰った燻製を食べる」
「え」
「今日の夕飯はいつもよりも豪華だなぁ」
「ず、ずるいよそんなのっ!! 大体それ、ボクが言ったから貰えたようなものなのにっ!!」


兄さん一人には食べさせないと、そう言ってマヤはキラにならって枝を集める。
そんな躍起になって頑張る弟の姿に、キラは苦笑をこぼした。
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