7.降り積もる灰は雪のよう

――私は雪が嫌いだ。

その白さは、あの男の髪と纏っていた衣を思い出させる。
その冷たさは、変わってしまったあの男に似ている。

ただ――





降臨した地上は、厚い灰色の雲に覆われていた。
そんな空から、白いモノがいくつも舞い降りてくる。


「……雪か」


やけに寒いと思ったと、そう思いながら天を見上げて呟き、早々に用事を済ませて帰ろうと、ルシファーは目的地である村へと続く道を歩いた。
辿り着いた家の扉を叩けば、数瞬後に「どなた?」と女の声が問いかけてくる。
その声に「私だ」と返せば、勢いよく扉が開かれた。


「おかえりなさい」


やって来たその目的が天使と人間との間に生まれた子供の発育経過を見るためだけとは知らず、女は笑顔で出迎える。そんな女にルシファーは笑顔で「ただいま」と告げた。
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