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「私、先生が好きだよ。」
その言葉に空気が一瞬で固まった気がした。
自分があんまり表情の変化がない方でよかったと久しぶりに感じた。対敵時以外で思ったのは何年ぶりだろうか。
「何言ってんだ、お前。」
「愛の告白ってやつだよ。伝わらなかったなら残念だな。」
とても静かにクスクス笑いながら準備室に運ばさせた一クラス分のノートを片付ける花巻はとてもさっきの言葉を伝えてきたようには見えず、こちらの方が驚いてしまう。
緑谷や爆豪と同じA組の一人だが妙に高校生らしくない生徒の花巻。訓練時等と授業中では年相応に戸惑ったり喜ぶ姿が見られるが通常時では異様に落ち着いていて、クラスメイト達を優しく微笑みながら見守っている印象だ。
また気が利くようで授業の準備物がある時は「先生、一緒に運ぶよ」と手を回されることもしばしば。
最近の女子高生はすげぇな。こんな奴がクラスメイトだったら毎日楽しいだろうな。そんな風に自分の高校生時代を思い出しながら考えたこともある。実際、A組の男子生徒数人は淡い思いを花巻に寄せているようだ。
それなのに、そんなお前がこんな悪ふざけをするだなんて思いもよらなかった。
「花巻お前もつまんねぇ冗談なんか言うんだな。驚いたよ。」
「ひどいな先生。今の私にとって人生で初めての告白だったのにさ。」
「ひどい」なんて思ってもないであろうにこやかな表情でこちらを見つめてくる。
1.2.3.4.5.6.7…
おいおいそんな色を含んだ眼で7秒も見つめてくんじゃねぇぞ。
ミッドナイトさんかマイクだったか忘れたが恋に落ちる魔法の秒数は7秒かららしいな。そんなしょうもないことを思い出しながらも冷静な自分に、30歳相応な男であることに安心する。
もし自分が16歳の時だったら惚れることもあるかもしれないが、職業柄や自分の立場を気にもせず生徒に手を出そうとはこれっぽちも思わない。そもそも未成年なんてはなから対象外だ。
「お前の本心がどうかわからないが、きっとお前には俺がこれからもお前を生徒の一人としか扱わないのはわかっているだろう。」
目の前にいる相手の目も見ないで作業をしながら淡々と話すと、花巻が持っていたノートを机においた音がした。
「かっこいいね、先生。そんなところも好きだ。私別に先生と付き合いたいとか思ってるわけじゃないよ。
でも折角の花の高校生の恋がこんなんじゃつまらないから、これからはどんどん困らせていこうと思う。そんな方向性でもいいかな?」
今まで見た中で最もいい笑顔の花巻に、固まることしかできなくて。
あぁ、これは俺の教師人生で一番面倒くさい物語だ。
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