終わらない
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カシャ、カシャ、と、気の向くままに手の中に収まったカメラのシャッターを切る。
僕らは今、1年前に新婚旅行で訪れたイタリアへとやって来た。今度は僕だけじゃなく、2人揃ってカメラを携えて。
彼女が出立前に「露伴の写真をたくさん撮りたい」と言うので、亀友に寄って新しくカメラを1台購入してから空港へ行きこうしてここまでやってきた。僕だってテレビや雑誌で見るみょうじなまえではなく、岸辺なまえとしての写真を撮りたかったのだ。
「カメラ、重いだろ?撮らない時は僕が持つよ。」
「ありがと。でも、いいの。撮りたい瞬間に撮りたいから。」
「そうか。じゃあ、荷物を持つよ。ほら。」
「…ありがとう、露伴。」
カシャ
「あっ!」
「はは、いい写真が撮れたな。」
今しがた撮った写真を見ると、こちらを見てふにゃ、と柔らかく笑う彼女の写真。本当、いつどの角度から見ても絵になる。かわいい。この写真を世界に発信したらきっと話題になるだろうと考えるほどには、かわいい。
カシャ
「…撮ったな?」
「だって今の露伴の顔、とってもかわいかった。あ、ほら見て。私の事好き〜!って顔してる。」
「消せ。」
「ふふ、やだ。いいじゃない。私達しか見ないんだから。」
「君、また引き伸ばして額縁に入れるつもりだろ。アレ、結構こっちは居た堪れないんだが。」
「あははっ、本当は額縁どころかポスターにしたいくらいよ。」
ふと、この1年で随分と関係が変わったなと思った。以前来た時はまだ籍を入れたばかりで、彼女は僕に対してたまに敬語を使っていたはず。それがまぁ、よくたった1年でここまで近づいたものだと感心すらする。彼女の努力と、僕の変わりようにだ。
もしかしてこれが、『運命の人』ってヤツなのか…?なんて、思わなくもない。
「ほら、僕ばっか撮ってないで周りも撮れよ。」
「ん。露伴もね。」
「…なまえ。」
イタリアの美しい路地裏で、人が途切れたのを良い事に振り向いたなまえにキスをひとつ。自分でも驚きの行動だったが、どうしても今したくなって、勝手に体が動いてしまった。なまえがあまりにも幸せそうにしているせいだ。
「なまえ…。…今日は長く時間をかけて、ゆっくり触れ合ってみないか?」
「…あ…あの、……うん。」
「じゃあ、まずはこの辺りで食事を済ませてから、ドルチェを買ってホテルで食べよう。」
「露伴…、ありがとう…。」
顔を真っ赤にさせて俯いた彼女の、なんとかわいい事か。今すぐ抱きしめてまたキスをしたくなってしまって、グッとそれを何とか押えつけた。本当、かわいすぎて困るとはこの事だ。
──────────────
露伴が、かっこよすぎて困る。
私なんかよりもずっと綺麗で、それでいて男らしい露伴がかっこいいのは元々なのだが、私に向けられる瞳が一々愛おしさのようなものを含んでいて赤面するのを抑えるのも困難を極めていた。
イタリアに旅行に行くと決まってから、ずっとだ。
それまでは不安そうな表情をずっと浮かべていたのに、いざイタリアへ来るとそんなのは幻覚だったんじゃないかと思えるくらいに見る影もなくて、私の心も解れていくような、そんな感覚がする。
なんて素敵な旦那さんなんだろうと、うっとりした目で見つめてしまう。
きっと私は今、女優・みょうじなまえではなく、岸辺露伴の妻・岸辺なまえの顔をしているのだろう。
「ふ…、そんなに緊張するな。別に初めてってわけじゃあないだろ?」
「ん…、…そう、だけど…。ここ最近の露伴、ますますかっこよくて…ドキドキする…。」
これではせっかく買ってきたドルチェも、喉を通らない。
「……なぁ、…キスしてもいいか?」
突然真剣な表情で、まっすぐこちらを見て言うものだから、思わず心臓がドキッと一際大きく跳ねた。わざわざ聞いたのは、私がまだ買ってきたドルチェを食べているからだろう。
「無言は肯定…でいいよな…?」
お互い視線を逸らす事なく顔が近づいて、そして唇が重なった。生クリームを食べた直後の唇は滑りが良くて少しぬるっとしてなんだかいやらしくて、頭が溶けそうだ。
「は…、…甘いな、君の唇は。」
ダメだ…かっこよすぎる…!
この前の悲しそうな顔をしてた時から何が変わったのか気になるが、今はそれを気にしていられる余裕は、私にはなかった。
「なまえ…、僕は君を、絶対に傷つけない。これからずっと、君を守りたい。いや…守らせてくれ。…あの岸辺露伴が、こんな事を言うなんてな。……なぁ、なまえ。君は変わってしまった僕でも、愛せるのか?」
「…当たり前でしょう?」
「そうか…。…はは、そうじゃなきゃ困る。僕をこうしたのは、君だからな。」
「ろ、……ん…。」
甘い。甘すぎる。その上お酒を飲んだみたいに頭がクラクラして、胸焼けをしそうだ。
「言っただろ?今日は時間をかけて、ゆっくり触れ合うって。」
「…うん…。」
せっかくのドルチェは、あとででいいや。
今は買ってきたドルチェと同じくらい、甘い誘惑が目の前にあるのだから。