short
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「絶対に嫌。私は回り道するか花京院くん達を待つから、置いてって。」
敵スタンド使いの襲撃を受け追っていた最中の事。
追いかけていた敵が塀を乗り越えて逃げていってしまい、1人で登る事ができない私は二の足を踏んでいた。
一緒にいるのはポルナレフと承太郎だが、ポルナレフは一足先に塀に飛び乗り、こちらを振り返った。
「ポルナレフ、私の事はいいから。敵を優先し「ポルナレフ、受け止めろ。」
承太郎の声が真後ろから聞こえた直後、体の自由がきかなくなり視界が空と近くなった。
「ちょっ…!!」
突然の浮遊感に思わず体を硬くし目を瞑って、ポルナレフが無事に受け止めてくれる事を祈った。
女の子をぶん投げるなんて、信じられない!!
「なまえさん!」
今この瞬間、私の救世主になりうるであろう花京院くんの声が聞こえて目を開けると、私の体は空中に留まっていて下に目を見開いたポルナレフが見えた。
身体中に巻きついたハイエロファントの触手。それを辿ると離れたところからそれを伸ばしている花京院くんの姿が確認できた。その姿がすぐ目の前に近づいてくるうちにポルナレフと承太郎は敵を追うべく既に走り出しており、花京院くんと私だけ塀の上に取り残された。
「全く、無茶をする。先に言い出したのはどっちだった?」
「…承太郎。」
「本当、信じられないな。承太郎にはキッチリ、女の子の扱い方を教えこまないと…。怖かっただろう?」
花京院くんの腕に抱えられ、触手が音もなく消え去っていく。正直高い所が苦手な私は1人で降りられないどころか立つこともままならない高さではあるので有難いが、早く塀から降りて、地面に降ろしてほしい。
「あ、あの…花京院くん?」
降りないの?という意味も込めて名前を呼ぶと何故か笑顔を浮かべており、ただゆっくりと細い塀の上で立ち上がった。また視界が高くなって恐怖心が蘇り、ぎゅ、と彼の服を掴むと「ふ…ごめんね、降りようか」とまた嬉しそうに笑ってからピョンと地面に飛び降りた。
「ごめんね。君があんまりかわいくて、少し意地悪した。」
「かわ…、それをいうなら、空中で私を受け止めてくれた花京院くんもかっこよかったよ。」
「ふふ、ありがとう。」
ややあって私を地面に降ろしてくれた花京院くんは承太郎達が走っていった方へ視線を向け、追いかけるか否か悩んだ素振りを見せ再度こちらに向き直った。
「2人で行ったなら心配ないだろうが…一応追いかけようか。」
「うん。ジョースターさんとアブドゥルさんは?」
「2人はホテルに戻ったから心配ないよ。」
どこにいるのか分かっているのなら、承太郎達を探しに行ってもいいだろう。
数分後に合流した承太郎達は敵スタンド使いを倒した後で特にする事はなかったが、それならばと花京院くんは承太郎とポルナレフを捕まえて、その場で説教をし始めたのだ。
「承太郎、ポルナレフ。なまえさんが高所恐怖症だっていうのは共通認識だと思っていたんだが、まさか忘れたって言うんじゃあないだろうな?」
「いや、覚えてるぜ。」
「じゃあどうしてなまえさんをぶん投げるなんて事態になるんだ。そもそも、なまえさんは女の子だぞ。乱暴に扱うなんて以ての外だ。」
「いや…俺は投げろなんて一言も…。」
「言い訳するんじゃあない。そう言うのなら、承太郎がそういう事をする前に止めろ。」
「…結果的には無事だったんだから、いいじゃあねぇか。」
「そもそも女の子のなまえさんを普段から丁寧に扱えっていう話をしているんだ僕は!」
ここまで声を張り上げる花京院くんは珍しい。というか初めて見た。自分のために怒ってくれているというのは純粋にすごく嬉しいが、生憎承太郎とポルナレフは納得いかないような顔をしており効果はなかったようだ。
「君達にはなまえさんを任せられない。なまえさん、この旅の間は、もう僕から離れないように。彼等と一緒にいたら、君が怖い思いをする事になる。」
「は、はい…!」
"僕から離れないように"って…!
花京院くんはそういう意味で言ったわけではないのは分かっているが、ドキドキするのは仕方がないだろう。許してほしい。
なんなら私は、この旅が終わってもずっと花京院くんのそばにいたっていいのだが。
というのは、今はまだ言えないが。
早く思いの丈を伝えて、恋人同士になって、この旅も揃って生き残って、日本に帰ったら幸せな日常を過ごしたい。
そんな事を夢みて、まずは今の過酷な日常を生き抜こうと思った。