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「ポルナレフ、一人で行動するんじゃあない。君はいつもそれで怪我をして帰ってくるだろう。忘れたのか?」
これは、花京院くんの声だ。
いつの記憶だっただろうか…ポルナレフは最後まで一人行動をやめなかったので、シチュエーション的にもいつの事だか思い出せない。
……懐かしい夢だ。
ポルナレフが相手だと言葉が辛辣になる、彼のそういうところが、私は好きだった。
いつも周りのみんなの事を気にして滅多に感情的にならない彼の、珍しい瞬間。
「なまえさん。」
いつの間にか場面は移り変わり、ホテルの一室。外ではいつも隙がなく、完璧な花京院くんが私にだけ唯一見せる可愛い一面。
「君はいつも、優しい匂いがする。」
入り口の扉が閉まるや否やスリ、とくっついてきて、私の首元に頭を擦り寄せる。
花京院くんは案外、甘えたい人なんだと知った時はあまりに可愛くて、普段は誰かに甘える事はないだろうからと心ゆくまで甘えさせてあげようと心に誓った。
2人きりの時だけに私に向けられる、笑顔が好きだった。
2人きりの時だけに彼から発される、甘えた声が好きだった。
2人きりの時だけに私に触れる、彼の仕草が好きだった。
ぎゅ、と優しく抱きしめる、彼の匂いが大好きだった。
今はもう覚えていないが、もう一度嗅いだらきっと、思い出す事だろう。
「なまえさん。」
パチ、と目を開くと、私の顔を覗き込む露伴の顔が見えた。
これは、夢じゃない。
いつの間に眠っていたのだろうかと、軽く目元を擦ると涙で濡れていた。
原因は分かっている。
懐かしくて、幸せな夢を見ていたからだ。
「悲しい……いや、切ない夢を見ていたんだな。」
「…切ない…、そうかもね…。」
彼のいない生活にはもう、慣れたと思っていた。
だけどやっぱり、忘れる事なんてできないみたい。
いつも花京院くんがやっていたように、露伴の首元に頭を擦り付けると彼の匂いと温もりを感じて安心した。
花京院くんも、こんな気持ちだったのかもしれない。
お返しに露伴も私の頭に頬を擦り付けてくるので、猫みたいで可愛くて思わず頭を撫でた。
「…不本意ではあるが…君といると甘えたくなるな。」
「ふふ、そう?私、甘えられる方が好きだから、たくさん甘えてほしいな。」
「…花京院さんも、そうだったんだろう?」
「……うん、そうだよ。」
私の涙が何を意味するか、露伴は分かっている。
私がどれだけ、彼の面影を露伴に重ねているかも、全部。
「人前ではそんな素振りは一切見せないのに、私にだけは甘えてくれる。そんな人が、大好きなんだ。」
「需要と供給のバランスが取れてて、いいじゃあないか。」
「ふ…、本当だ。そうだね。」
寄りかかっていた露伴を撫でていたら、気持ちはすっかり落ち着き、凪いでいた。
もうあんな思いはしたくない。辛い過去は忘れてしまいたかったが、彼を忘れる事はできなくて、それに、絶対に忘れたくなかった。
「君は、安心するような、優しくていい匂いがする。」
「じゃあ…もっとこっちに来て、くっついててよ。」
抱きしめて頭を撫でて、頬を擦り寄せて。その確かな温もりを感じて、生きている事を確かめて安心する。
私が甘えられる方が好きになったのは、彼がいなくなってしまってからだ。