short
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「なまえちゃんさぁ、露伴のどこが好きなワケ?」
珍しく億泰と康一となまえちゃんとの帰り道。いつものカフェで喋っていたら由花子の奴も合流してきたが、気にせず前々から聞きたかった事を尋ねた。所謂、恋バナというものである。
当の本人は先日「露伴先生に告白したら、OK貰っちゃった…」と嬉しそうに報告してきて、正直めちゃめちゃショックだったのは記憶に新しい。
クソ…俺のアイドル、なまえちゃんが…!
あんなクソみたいな奴のどこが好きなのか、正直理解できねぇ。
「露伴先生の好きなところ…顔?」
「顔!?」
「あ、もちろん顔だけじゃないんだよ!」
うーんとね、と顎に人差し指を当てて考える仕草が可愛すぎて悔しい。悔しくて涙が出そうだぜ…。
考えているのが露伴の事だなんて、嫉妬で頭がおかしくなりそうだ。
「露伴先生はね、私には優しいの。それに気難しそうだけど、道理に反した事は絶対にしないし。」
「…それは当たり前の事じゃあねェか?」
「…?よく考えたらそうかも。あはは!」
なんだよそれ。マイナスがプラスになっただけじゃあねぇか。納得いかねぇなぁ。
「あとね…露伴先生、とっても大事にしてくれるの。告白して付き合ったけど"君はまだ高校生だから、手は出さないからな"って。」
「!……マジ?」
それは意外すぎるほど意外だ。正直、女子高生に告白されて(それも超可愛い)手を出さないでいられるなんて、あの男ができるわけがないと思っていた。いや、というか、手を出してるもんだとばかり思っていた。
これは、俺の完敗かもしれない。
性格の悪いクソみたいな奴だとばかり思っていたが、初めて露伴の事を見直した瞬間であった。
「なまえ。それに康一くん。」
「露伴先生!これからお帰りですか?」
なんてタイミングでの登場なんだ。
ついさっき見直したと思っていた岸辺露伴の姿を見て、やっぱりムカついた。見直したっつーのは、やっぱりナシだ。あの人を見下したような視線は、やっぱり好きにはなれそうにない。
露伴に気がついた時の、なまえちゃんの嬉しそうな顔は可愛かったが。
「あぁ。今日は編集社に行ってきたんだが、予定より早く終わったんだ。君が好きそうないくつかお菓子を貰ってきたんだが、これからウチに来るか?」
「いいんですか!?行きます!」
「仗助くん…。」
やめろ康一。そんな目で見るんじゃあねぇ!!
完全に露伴に負けたのだと改めて身をもって体感して、この後数日間は枕を濡らす事となった。余計な事は、聞くもんじゃあねぇな…。
「君、仗助と仲が良いのか?」
お菓子につられてやってきた、露伴先生のおうち。最近定位置となりつつあるソファに座って有難くシュークリームを頬張っているとふいに露伴先生がそんな事を尋ねてきた。もしかしてヤキモチ…!?と期待したのだが、先生の顔を見る限り、ただの確認なのだろう。
「仗助と、っていうか…みんなと仲良いですよ?」
「ふっ…知ってるよ。仗助の奴、可哀想だなぁ。」
やっぱりただの確認だったようだが、なぜかとても機嫌が良さそうだ。可哀想、なんて言葉とは裏腹に、なんとも嬉しそうな顔である。
「露伴先生、何かいい事でもあったんですか?」
「あぁ、そうだな。食べ終わったらおいで、なまえ。」
「!はいっ。」
先生は前に、手を出さないと言ったが、イチャイチャしないわけでは決してない。必要以上にベタベタするのは好きではないかもしれないが、たまにはくっつきたくなる事もあるらしい。こういう時の先生は、ドロドロに甘やかしてくれるから、大好き。
「先生、好きです。」
「知ってるよ。前に読んだからな。君も変わった奴だな。」
「先生は、幸せ者ですね。私がどれだけ先生の事が好きか、ヘブンズ・ドアで読めるなんて。…羨ましいです。」
羨ましいし、狡い。先生は私の気持ちを読めるけど、私は先生がどれだけ私を好きか、こちらは知る由もない。
「せっかくこうして一緒にいるんだから、拗ねるなよ。僕が好きでもない奴に、こういう事してるとでも思ってるのか?」
こういう事、とは、先生の膝の上で甘えている私を許し、加えて指先で頬を撫でている事を言っているのだろうか?
であれば…うーん…しなさそう、かも。
「それに、好きだから手を出してないんだ。好きでもない奴相手なら、とっくに手を出してる。」
好きだから手を出さなくて、好きじゃなかったら手を出してる。分かるような、分からないような。
「先生…私の事とっても大事にしてるんですね。」
「そうだな。これで分かったか?」
「はい…。もっと好きになりました…。」
「そうか。卒業したら手は出すけどな。」
「そしたら、もっともっと好きになっちゃいます。」
「はは、楽しみだな。」
先生、好き。好きすぎて、胸焼けしそうなくらい。
二人でいるときは柔らかく笑う先生の顔が、大好き。私しか知らない、先生の顔が。
早く、卒業したいなぁ、と思った、高校3年の秋。