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12月13日
DIOを倒すために日本を出発してから、今日で15日が経った。
同時に、みょうじなまえという少女に出会ってから15日が経過したという事でもある。
彼女は女性でありながらも風を操るスタンド能力を持っており、当初僕は女性が着いてくる事をとても心配していたのだが戦いのセンスもあるという事で無駄な心配だったと思い始めている。
怪我をするのは良くない事ではあるので気をつけて見るようにしているが、そのおかげで彼女のかわいいところにいくつも気がついてしまって内心少し困っている。
まず、小柄である事。
男性メンバーの中では1番小柄な僕と比べても頭ひとつ分低い位置にある彼女の頭。そして細い体。
スタンド能力がなければただの可憐な少女である。
そして、純粋な笑顔。
僕みたいに取り繕ったような笑顔ではなく、心からの笑顔が、僕には眩しかった。同時に、見ていると自身の心が浄化されていくような気分になる。
それに、仕草がかわいらしい事。
遠くから大きな声で僕を呼ぶ時も、隣で小さな声で呼ぶ時も、どちらもかわいすぎて胸がきゅ、と一瞬小さくなるのが自分でも分かった。
こんな事になったのは初めてで、今まで気づかないフリをしていたがもう認めよう。
僕は、彼女の事が好きなのだ。きっと。
恋にうつつを抜かしている場合ではないのに、自然と目が彼女の姿を追っていて、もう手遅れなのだと悟った。
花京院くんが、今日もかっこいい。
まだ出会ってから2週間ほどしか経っていないのだが、彼の立ち振る舞い、喋り方、声、そして笑顔。その全てが神の手によって造られたものなのではないかと思うほどに完成されていて、あっという間に恋に落ちてしまった。
ここ数日、よく目が合うなぁと思っていたが、きっと私が花京院くんの事を見すぎなのだ。とはいえ、パーツが品良く配置された花京院くんの顔は、見ていて幸せな気持ちになれるのでやっぱり見てしまうのだ。
それに目が合うと必ず柔らかい笑みを見せてくれるので、それが見たくてついつい見てしまうのもある。
はぁ…花京院くん、完璧…。
12月28日
エジプトまで目前。とうとうここまでやってきたと、一同気を引き締め直して潜水艦内はピリついた空気が流れていたのだが、彼女はそんな中でも1人呑気に眠っておりその気持ちよさそうな寝顔を盗み見てひとり癒された。
日本を発ってから30日。1ヶ月だ。
この30日の間で、かなりの数の傷を負った。彼女だって、少なからず怪我を負った事もある。
この小さい身体で、よくここまで頑張れたものだ。
誰にも気づかれぬよう、そっとその白くてすべすべした頬を指でひと撫でした。
潜水艦内でひとり眠っていたら、急に辺りが騒がしくなり目を覚ました。
敵と戦いながら潜水艦を捨て、泳いで陸まで上がるというのはなかなか現実的ではないが従わないと死んでしまうと、急いで脱出ハッチへ移動して酸素やシュノーケルを装備していると花京院くんが手伝ってくれて、チョン、と触れ合った手が温かくて無意識に緊張していた体から無駄な力が抜けたのが分かった。
「シュノーケリングの経験は?」という問いに首を振ると「僕も。お互い流されないよう、ハイエロファントの触手を巻いておこうか」と目を細めて言うので今度は首を縦に振って彼の提案を受け入れた。
これで、万が一流されてしまっても花京院くんと離れる事はない。なんてね。
1月12日
両目に傷を負って入院してから、既に9日が経った。
この傷を受けた日…なまえさんは涙を流し僕を心配してくれた。今頃彼女は、怪我をしていないだろうか。
泣きながら僕を抱きしめてくれた彼女の体があまりに細くて、強いけれどやっぱり女の子なんだと再確認させられた。
彼女が怪我をしてくれれば、今すぐ日本に帰す理由になるのにな…と一瞬でも頭を過ぎってしまい、自己嫌悪に陥った。
あぁ、彼女に会いたい。
花京院くんは、元気にしているだろうか。
たった数日会えないだけで、私は目に見えて元気がなくなってしまった。
花京院くんが私の名前を呼んでくれないと、花京院くんの笑顔が見られないと、花京院くんの楽しそうな笑い声を聞かないと、元気が戻る気がしない。
私の中で花京院くんという存在が、それ程までに大きくなっていたのだ。
「おいなまえ。テメー…大丈夫か…?」
承太郎が心配する程に、今の私は酷い状態なのだろうか?いや、きっとそうなのだろう。
花京院くん…早く会いたいよ。
1月16日
きっと、僕はもう、死んでしまうんだな。
ぼやける視界でも、彼女の姿だけは認識できた。
あぁ、泣かないでくれ。君の、かわいい笑顔が見たいんだ。
「なまえ、さん…。」
スタンド越しの僕の声は届いただろうか。
半ば叫ぶように僕の名前を呼んでいる彼女は初めて見る程に取り乱していて、こんな時に申し訳ないが、嬉しく思った。
彼女が、僕のために大きな声を出し、涙を流している。
「来世は、君と恋人同士になりたいな…。」
最後の声は、届いていないかもしれない。
その直後には意識が途切れ、全てが真っ暗になった。
「花京院くん!!…っ、花京院、くん…!!」
いやだ。置いていかないで。私、まだ花京院くんに好きだって言ってない。
風で体を優しく包んで給水塔からその体を降ろしたが、手当をしたところで助からないのは明白。
花京院くんの綺麗な瞳は虚ろで既に視点が合わなくて、別れを悟った。
「やだ…行かないでよ花京院くん…!私っ、まだ花京院くんと話したい事、いっぱいあるのに…!!」
一緒に行きたいところだって、たくさんある。だから、一緒に行こう?
「なまえ、さん…。」
こちらの声も、もはや聞こえていないみたいだ。
ぎゅ、と握った手には力がなく、温かかったはずの彼の温もりも段々と失われていっている。
「来世は、君と恋人同士になりたいな…。」
「っ…!…わたしも…私も、好きだよ、花京院くん…!」
その言葉を最後に、意識が途切れた。
私の精神の、限界が来てしまったのだ。
結局DIOを倒すのに何の力にもなれなくて、一体何のためにエジプトまでやってきたのだ。
3月22日
あれからもう何年経っただろうか。
私の心の拠り所であった花京院典明が亡くなってから、私は笑う事ができなくなった。
承太郎だって同じだ。元々少なかった口数がより少なくなり、滅多に笑わなくなった。
そんな承太郎も、もう41歳。という事は、そうか、もう23年も経ったのか。
随分、生きた。いや、生きてしまった。
だけどそれも、今日で終わりらしい。
時の加速は止められない。承太郎も私も、致命傷を受けた。
あぁでも、これで、やっと彼に会えるのだと、心は穏やかなものだった。
「なまえさん。」
「花京院くん…会いたかった。」