藤色のあったかもしれない話
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「わぁ…!ポルナレフ、すごい!」
珍しくポルナレフとの二人部屋。外は雨が降っており出掛ける気にはなれず、かといって花京院くんは承太郎と何やら話す事があるからと手持ち無沙汰になってしまった。ポルナレフもこの雨ではさすがに外に出歩く気にはならなかったようでお喋りをしていたのだが…。
私が何気なく零した「雨って、髪の毛が広がるから嫌だなぁ…」という言葉を聞いて髪の毛を可愛くアレンジしてくれたのだ。妹さんの髪の毛をよく弄っていたというポルナレフはその見た目に反して丁寧に髪の毛に触れ、見事に可愛らしく編み込まれている。人は見かけによらないというのは本当らしい。
「承太郎なら、器用だからもっと色んな髪型ができそうじゃない?」
「まぁ、できるできないで言えばできるんだろうが…承太郎はできてもやらねぇんじゃあねぇか?」
「確かに…。ポルナレフがお兄ちゃんだったら良か、…いや、承太郎の方がいいか…。」
「オメーな。ソコは俺がお兄ちゃんだったら良かった、って言い切るトコだぜ。」
「ふふふ…ポルナレフ、可愛くしてくれてありがと。」
「…おぅ。」
元々可愛いけど、もっと可愛くなった。花京院くんはこの髪型を見てなんと言うだろうか、と思ったら、早く見てほしくなった。ほんの少しだけ、会いに行っても良いだろうか?
コンコン
勢いで来てしまったが、やっぱり迷惑かもしれないと思いノックは控えめにした。迷惑かもと思ったが、いても立ってもいられなかったのだ。
「あぁ、なまえか。…その頭、どうしたんだ?」
「なまえさん?…!すごく可愛い。どうしたんだい?」
この二人の反応の差よ。
別に承太郎に"可愛い"と思われたくてやって来たわけではないが、花京院くんの返しを少しは見習ってほしい。
「これね、ポルナレフがやってくれたの。あんまり可愛いから、花京院くんに見てほしくて来ちゃった。お話の邪魔してごめんね?」
"2人に"と言うつもりが思わず"花京院くんに"と言ってしまった。いや、本心なのだが、少しあからさますぎてちょっと後悔した。
「全然、構わないよ。なまえさんが来てくれて嬉しい。それにとても可愛くて、似合ってる。良かったら入って。」
「えっ、いいの?2人で話してたんじゃ…。」
「別に夜でも話せるから大丈夫だよ。続きは夜でもいいよな、承太郎?」
「ハァ…好きにしな。」
本当なのか気遣いなのかは分からないが、部屋にお招き頂いた。勇気をだして来てみてよかった!
「ポルナレフね、妹さんの髪の毛をよく可愛くしてあげてたんだって。ねぇ、自分でやるのは難しいから、承太郎が代わりにやってほしい。」
「…めんどくせぇ…。それよりも、テメーが自分でできた方がいいんじゃあねぇか?」
「む…、そうだけどさぁ…。花京院くんは?こういうのできたりする?」
承太郎の反応はやはりポルナレフの予想通りで、めんどくさい、の一言で却下されてしまった。まぁ別に、期待はしていなかったが。
隣の花京院くんへと何気なく話を振ると、彼は「うーん…」と唸りじっと私の頭を眺めた。眺めたというよりは…観察したと言った方が正しいだろうか。
「そういう経験はないけど…順序さえ分かればできそうな気がする…。一度、ポルナレフにやり方を教わってみよう。」
「えっ!」
何気なく聞いただけなのにポルナレフに教えてもらおうと真剣な顔で言い出すので、思わずこちらが慌ててしまった。
「か、花京院くん!何もそこまでしてくれなくてもいいんだよ?私も、自分でできるようにならなきゃだし…!」
「ん…いや…ごめん。こんなに可愛い君が毎日見られるのなら、僕もできたらいいなって思っただけなんだ。女の子の髪型には、色々バリエーションもあるだろうしね。」
ズキュゥゥゥウン!!
そんな音が自分の心臓から聞こえた気がした。心臓を撃ち抜かれたような音。いや、間違いなく今、撃ち抜かれた。
承太郎は呆れたような顔をしてからベッドへと横になり、そのまま目を閉じてしまった。
花京院くんは花京院くんでポルナレフのいる部屋に電話を掛けているし、まるで私がおかしいみたいじゃないか。
「なんじゃあなまえ。えらく可愛らしいのぅ。」
「…みんなに、可愛くしてもらいました。」
夕食時、ジョセフさんとアブドゥルさんと合流すると2人ともすぐに私の変化に気がつき褒めてくれた。
あの後、部屋にやってきたポルナレフの指導のもと花京院くんが試行錯誤して私の髪の毛を弄って、その騒がしさに承太郎も起き出して「ここを指で抑えるといいんじゃあねぇか」とか何とかやる気を出してしまって、私の髪の毛は今、これからパーティーにでも行くかのような状態になっている。着ているのは制服なのにだ。
「これからは毎日、誰かしらが君を可愛くできるね。…おっと、元々可愛いから、そこだけは忘れないで。」
「!…あ、ありがとう…!」
コソ、と耳打ちをする花京院くんは、やっぱり王子様だ。今のこの髪型でドレスでも着たら、花京院くんのかっこよさに少しは釣り合うかもしれない。
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