藤色のあったかもしれない話
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今日の野営地である砂漠にテントを張り、早めの夕食も済ませてジョセフさんと2人で水辺までやってきた。
眠るにはまだ少し早いので、波紋の呼吸の修行のためだ。
「なまえは既に、くっつく波紋とはじく波紋の使い分けの基礎は出来とる。それをより精密にできるようになれば水面を歩けるようになる。それができれば、色々な攻撃に応用ができるじゃろう。」
「わ!すごい!」
なんて事ないように水面に立つジョセフさんを見て、思わず感嘆の声を上げ手を合わせた。
なんだか、忍者みたいでかっこいい!私にも、あれができるだろうか?
「まずは手でやってみよう。水面に手を当てて、体重をかけても沈まなければ今日のところはOKじゃ。」
「…今日のところはって、最初にしてはなかなかハードですね。」
「そうかのう?なまえならきっと、できるじゃろう。」
「そうですか?」
「信じられないのなら、花京院から言ってもらってもいいんじゃぞ?」
「ふふ、大丈夫です。そこまで言うなら、ジョセフさんの言葉を信じましょう。」
チャプ、と水面に触れると、手のひらが濡れて波紋が立つ。一見とても地味で、傍から見ると触れているだけに見えるが、そこから少しずつ波紋を流していくと動かさなくても波紋が大きくなるのが見て取れた。
「うーん…右手と左手、それぞれから別々の波紋を流す事はできそうなんですけどね…。」
「ほぅ…。1度、やってみてくれんか?」
私の呟きを聞きニヤ、と口角を上げてそう口にするジョセフさん。そのニヤリ顔の意味は分からないが、「分かりました」と素直に従い両手を水面につけて波紋を流した。
するとボコッ、ボコボコ、と音を立てて水面が波打ち、1度大きく水面が下がり、
ドウッ…!!という轟音と共に目の前に水柱が立った。
「なまえさん…!?大丈夫かい…!?」
真っ先に駆けつけたのは花京院くんで、一体何があったのかと戸惑っているようであった。突然の轟音、びしょ濡れでありながらも無傷の2人、そして声を出して笑い転げているジョセフさん。何かあったのかと駆けつけるのも頷ける。
「ジョセフさんっ!分かっててやらせましたね!?」
「いやぁ、まさかこれ程とはなぁ!ちょっとからかってやろうと思っただけなんじゃが、こんなになるとはな!」
「ハッハッハ!」と笑うジョセフさんは楽しそうでもあり嬉しそうでもあった。なるほど。ここまで大きな水柱が立つとは思わなかったと。
「なまえの波紋のセンスを舐めとったわい!これはきっと、ワシ以上になるじゃろうな!」
そう褒めてもらえるのは有難いが、せっかくあとは寝るだけの状態にしていたのに、これでは着替えなくてはならないじゃないか!
「なまえを見ていると、シーザーを思い出すのう…。」
「シーザーさん…?お友達ですか?」
びしょ濡れになったため今日の特訓は中止!とジョセフさんが言ったことで、焚き火で体を暖めていると、ジョセフさんがポツリと零した。アブドゥルさんのマジシャンズレッドがおこした炎なので消える事はなく、未だ煌々と燃えている。みんなは先にテントに入ってしまったが、もう眠っているだろうか?
「友達…まぁ、戦友というもの、かのぅ。」
「戦友…。」
今の、私達みたいなものだろうか。
ジョセフさんの言い方を考えるに、きっとその時に、亡くなってしまったのだろう。
「どんな人でしたか?シーザーさんって方は。」
「シーザーは…、そうじゃのぅ…。なまえに似ていると言ったが、お前さんよりも花京院に似ていたかもしれんな。」
「花京院くんに?それは、素敵な人だったんでしょうね。」
花京院くんに似ていると聞いたら、俄然気になってきた。一体どんなところが似ていると言うのだろう。
「プライドが高く、短気な奴じゃったな。」
「…ジョセフさんの花京院くんのイメージってそんな感じなんですか?」
「ハハッ!ポルナレフと口論になっている花京院なんて、シーザーにソックリなんじゃ。」
ポルナレフと話している花京院くんを思い返すと、なるほど確かに。なぜだかポルナレフと喋っている時の花京院くんはいつもツンツンしていてかわいいのだ。そんなところもかわいくて好きなのだが、そういうところが似ているというのなら、シーザーさんは結構かわいい人だったのかもしれない。
「真面目で正義感が強い奴じゃった。…懐かしいのう。」
「会ってみたかったです。シーザーさんに。」
「シーザーもなかなか顔が整っておったからな。お前さんがシーザーに会ったら、さすがの花京院もヤキモチを妬くんじゃあないか?」
「そんなにですか?でも私、花京院くんの顔が1番好きだからなぁ。」
花京院くんの全部が好きな私にしてみたら、たとえどれだけ顔が良くても誰も、入り込む隙はない。
「2人とも、そろそろ寝た方がいいんじゃあないですか?」
「か、花京院くん…!」
突然、後ろから現れたのは花京院くんだった。今の会話、聞かれてないだろうか、と内心慌てているとそっと手を握られて、今度は違う意味で心臓がドキドキと音を立て始めた。
「思っていたよりも温かくて良かった。もう寒くはないかい?」
「う、うん。大丈夫だよ。」
むしろ、花京院くんの登場により暑いくらいなのだが。
「女の子だから、体を冷やすのは良くない。さ、体が温かい内に、早くシュラフに入ろう。」
「あ、ありがとう花京院くん。」
肩にスカーフを掛けられて、花京院くんにエスコートされて。なんだか自分がお姫様になった気分である。というか、花京院くんがあまりに王子様。
「ジョセフさん、おやすみなさい。」「おぉ。また明日の。」
おやすみの挨拶を交わしてテントへ入ると、あとの3人は既に眠っているようだった。もしかしたら、戻ってこないのを心配して起きていてくれたのかもしれない。
「ジョースターさんと、なんの話しをしていたんだい?」
シュラフに入って横になり、小さい声でそう尋ねてくる花京院くんの笑顔が薄らと見える。小声での問いかけなので、距離が近くてドキドキする。
「うーん、内緒!」
「内緒…?…うん、かわいいから許そう。」
「かわいく言えば、許してくれるの?」
「なんでもじゃあないけどね。…例えば、僕以外の人を好きになる、とか。」
「ふふ…それはないから、大丈夫だね。」
それなら花京院くんはなんでも許してくれるって事だ。随分と私に甘いが、私も花京院くんが私以外の人を好きになる事以外ならば全て受け入れてしまうので、私も大概、花京院くんに甘い。
「さ、もう寝よう。おやすみ、なまえさん。」
「うん。おやすみ、花京院くん。」
今日も好きだし、明日も好きだよ。と心の中で付け足して、目を閉じた。