本編終了後
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オギャア、オギャア、
薄い意識の中、遠くから赤ちゃんの鳴き声が聞こえてきて、あぁ、やっと終わった…と酷く安心した。赤ちゃんって、本当にオギャア、って、泣くんだな…なんて思っていたら、またお腹が痛み出して、意識をまた現実に引き戻された。
「なまえ…!もう少しだからねッ…!がんばれ…っ!」
隣で、典くんが泣いている。相変わらず綺麗な顔だなぁ、泣いても綺麗、なんて関係ない事を考えているうちに、ズル、と胎盤が出ていく感覚がして、急激に痛みが引いていった。
これで本当に、終わり。
「元気な女の子ですよ。おめでとうございます。」
「ふふ…、…かわいい…。」
「よくがんばったね、なまえ…!」
私よりも典くんの方がたくさん泣いている気がする。私だって感動して涙が出そうだったのに、疲れて泣く気力すらない。それに、典くんが私の代わりに泣いてくれたから、いいや。
「お疲れ様、なまえ…。本当に…がんばったね…。」
「…ありがとう、典くん…。」
「うん、ゆっくり休むんだよ。」
汗でびっしょりの頭を撫でてくれる典くんは、もしかしたら天使かもしれない。それがとても心地よくて目を瞑ったら、そのまま意識は落ちていった。
出産って、こんなに大変なんだな…。
「……う、…!」
「なまえ…!起きたのか…?」
次に目を開けたのは、多分病室で、お腹が痛んで目を覚ました。そうしたら、典くんの姿はなく代わりに承太郎が心配そうに上から覗き込んでいて回らない頭には「?」が浮かんだ。
「…あれ…承太郎…。…典くん、は…?」
「花京院なら帰らせたぜ。なまえ、体調はどうだ?」
「…全身が、痛い…う…動けない…。」
お腹どころか、全身が痛い。腕も足も筋肉痛だし、頭も痛い。それにお腹がすいて、少し気持ち悪い。
「承太郎…水、飲ませて…。」
プルプルと震える腕をゆっくり伸ばしたけど、これでは何もできやしない。大人しく承太郎にお願いしたら、なんだか悲しそうな顔になって「あぁ、待ってろ」と視線を逸らした。今の私の状況って、そんなに辛そうに見えるのだろうか。
「ほら、飲め。」
承太郎が差し出してくれたお水にはご丁寧にストローが刺してあって、あの承太郎がストローを刺してくれるなんてと、少しだけ笑ってしまいそうになった。
「なまえ…ありがとう。大変だっただろう。」
「…うん。」
「それと…、間に合わなくてすまなかった。」
「…いいよ。典くんがいてくれたから、何となく承太郎もいるような感じがしてがんばれたの。」
「そうか…。」
「それに典くん、私と承太郎の分まで泣いてくれたの。…ふふ、もしかしたら、目が腫れたりしてるかもね。」
「ふ…、そんなにか。それは見たかったな。」
小さな声で会話をしていると、少しずつ空気が柔らかくなってきた気がする。承太郎も、やっと笑顔が戻ってきたみたいで良かった。
ナースコールを押して目覚めた事を知らせて承太郎に支えてもらいながらお手洗いに行って、病室に戻ったらテーブルの上にはご飯が置かれていて思わずお腹がぐぅ、と控えめに鳴ってしまった。
そして、ベッドの脇にはカートがひとつ。
「空条さん、お疲れ様でした。もう一緒に過ごして頂いて問題ないですよ。」
「わぁ…!赤ちゃん…!」
カートに乗せられていたのは、つい数時間前に産まれたばかりの私の…私と承太郎の赤ちゃんだった。あぁ、やっぱりかわいい。ふにゃふにゃしてて抱っこするのが少し怖いけど、早く、たくさん抱っこしたいな。
「承太郎、抱っこして。」
「…いや…、俺は後ででいい。なまえが先に…。」
「もう…。私は今、筋肉痛で動けないんだよ?それにこの子は、私と承太郎の子なんだから。今日から承太郎は、この子のパパなんだからね。」
「……。」
無言のまま私から視線を逸らし、しばし数時間前に産まれたばかりの我が子を見つめ、やがて恐る恐るといった様子で風に腕を伸ばした。
看護師さんから赤ちゃんを受け取った承太郎は普段の落ち着いていて堂々としている承太郎とは違いまさに借りてきた猫のようで、あまりに珍しいその様子を思わずじっと観察してしまう。
「…ちいせぇな…。」
ただでさえ体の大きい承太郎の腕にすっぽりと収まった我が子は一段と小さく見えて、ふふ…と笑みが漏れる。
「……。」
「…承太郎?…!」
何も言わなくなってしまった承太郎を見ると静かに涙を流していて、初めて見る彼の大号泣を前になんと言っていいか分からなくなる。あぁ…こんな時、典くんがいてくれたら…!
「なまえ……ありがとう、なまえ。…俺は今、今までにないくらい、幸せだ…。俺を父親にしてくれて、ありがとう、なまえ…。」
「……うん…。」
およそ承太郎らしくない台詞、そして普段では考えられないほどに饒舌だが、今は何も言うまい。
だって幸せだと言って涙を流しているのだ。水を差すわけにはいかないだろう。それに…私だって幸せで、嬉しい。
「私達のところに来てくれて、ありがとう。よろしくね、徐倫。」