本編終了後
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※4部 仗助視点
「なまえ。」
「典くん!」
花京院さんに「承太郎に内緒で会わせたい人がいる」と言われ着いてきたのは杜王駅。別についていく必要はねぇけど、正直、花京院さんと承太郎さんの知り合いってどんな人なんだ?と気になって着いてきたんだが…。駅から出てきて花京院さんが声をかけたのは随分小柄な女の人でちょっと意外っつーか…。もしかして、花京院さんの彼女、とか?うわ、有り得る。花京院さん年下の小さい女の子とか好きそうだし、何やらめちゃくちゃ親しげだし…!とか考えてたら花京院さんがいきなり振り返って「仗助。彼女は空条なまえ。承太郎の奥さんだよ」と。
「え…?承太郎さんの、奥さん…?」
奥さん、って、結婚してるって事、だよな?目の前の女性は小動物のような雰囲気で、あ、でも、おっぱいはデカいな。童顔なのが逆にエロい。いやいや、違くてだな。
「承太郎さんって、結婚してるんスね…!」
そもそもそれだ。なまえさんと呼ばれた女性は確かによく見ると左手の薬指に指輪を着けてるが、承太郎さん、指輪なんて着けてたか?
「なんか、花京院さんの奥さんって言った方がしっくりくるっつーか…。あ、いや、承太郎さんには言わないでくださいよ!」
花京院さんが「さ、行こうか」と差し出した腕におずおずと自分の腕を絡めるなまえさんはどう見たって恥じらいの表情で、恋する乙女の顔に見える。知らんけど。花京院さんは花京院さんでいつになくキラキラした嬉しそーな顔をしていて、なんつーか、愛おしそう?普通、友達の奥さんにそんな顔するか?
「そう見えるのなら、僕はとても嬉しいけど。」
「もう…典くんてばやめてよ。」
「はは、10年の間、ずっと告白してるんだけど、断られてるんだ。」
「じ、10年…!?」
「む、無理だよ…!これが精一杯…!」
これ、って…腕を絡めるのでいっぱいいっぱいって事か?二人の話を聞いても関係性は全くといっていいほど分かんねぇ。なんだこの人達。
車に乗り込む時も花京院さんは助手席のドアを開けて「頭、気をつけてね」といつにも増して優しくて、なんかすげー居心地が悪い。向かうのは杜王グランドホテルの承太郎さんの部屋で「仗助も来るといい。承太郎の珍しい姿が見られるぞ」と花京院さんが俺の興味を引く言葉を吐くので誘惑に負け、着いていく事に決めた。花京院さん、なんか楽しそうだし。
「仗助くん、承太郎の叔父さんなんだって?ふふ、じゃあ私は仗助くんの義姪?」
「あーそうなるっスね。やっぱ変な感じっスわ。」
ホテルのスイートルームに着いて承太郎さんの帰宅を待つ間、なまえさんと話してみたらものすごく人懐っこくて、かわいらしい人だと思った。笑うと花が咲いたみたいになって、周囲の空気を和ませる人。たまに花京院さんのアタックに顔を赤くしているのなんてめちゃくちゃかわいい。俺のお袋とは真逆のタイプで、思わず男心を擽られるのが分かる。
ガチャ
突如ノックもなしにドアが開けられる音が聞こえて、全員の視線がドアの方へと向く。
「花京院、いるのか?」と言いながら歩いてくる足音を聞きながら、今か今かと息をするのも忘れて曲がり角に注目して、ようやく承太郎さんの姿が見えた時。
「………なまえ。」
承太郎さんは体を固くして目を見開いて、歩みを止めるもんだから見てるこっちが驚いた。いるはずのない俺もいるのに、俺の事なんてまるで見えてねーかのようになまえさんを見つめて「承太郎…会いたくて、ここまで来ちゃった」と言うなまえさんにヨロヨロと近づいていく様は本当に、承太郎さんの初めて見る一面だった。
「あぁ、なまえ…しばらく帰れていなくて、すまない。」
承太郎さんがなまえさんを抱きしめると、なまえさんの姿は足しか見えなくなった。想像はしてたが傍から見ると想像以上に身長差があって、大人と子供みてーだ。だけど大人なのはなまえさんの方で「ふふ、いつもお疲れさま。よしよし」と背中へと伸ばした手で撫でて、承太郎さんの方が子供みてーに「なまえ…」と名前を呼びながら彼女を抱きしめるだけだ。
なるほど。花京院さんの言ってた"承太郎さんの珍しい姿"ってこれの事か、と花京院さんの方を見るとニコニコと二人を眺めてて、やっぱりこの人達の関係は意味がわかんねーと思った。
「仗助、いたのか。」
しばらくすると承太郎さんが俺の姿に気がついていつものすました顔に戻ったが、これは花京院さんの言ってた通り、珍しいモンを見た。
「承太郎さん、奥さんには甘えるんスね!」
少しからかってやろうとそう口にしたら舌打ちをされたが、全然怖くねー。さっき愛する奥さんに甘え倒してた姿を見ちまったからな。
「大人をからかうんじゃあねーぜ、仗助。」という顔すらいつもの鋭さなんてなく、すっかりなまえさんの醸し出す空気によって丸められている。
「なまえ、いつまでここにいる?もう帰るのか?」
「えーと、3日くらいはいようかなって思ってるんだけど、承太郎、時間取れる?無理なら、典くんと過ごす「いや、取るぜ。今から3連休だ。」
「ブフッ…!!」
あまりに必死すぎる承太郎さんの姿にさすがに吹き出しちまって承太郎さんに睨まれたが、その視線は声を上げて笑っている花京院さんの方へ移っていった。あんなに口を大きく開けて笑う花京院さんも、初めて見る。
「はぁ……やだなぁ承太郎。僕を除け者にしないでくれよ。僕だってなまえと過ごしたいんだ。」
「いい加減諦めろ花京院。テメーがいると邪魔だ。夫婦水入らずで過ごす。」
「ねぇ承太郎、私…典くんに会うのも久しぶりだから、典くんのお顔も眺めたいな。定期的に見て慣れておかないと、そのうち典くんの大人の色気にやられちゃうかも。」
「……チッ。」
「あのー…、なまえさんと承太郎さんが夫婦っつーのは分かったんスけど、なまえさんと花京院さんって…その…。」
どんな関係なんスか?とは何となく聞けなかった。"関係"という言葉を使うと何か生々しい気がした。
「ふふ、気になるかい?」
何となく含みを持たせた言い方で怪しい笑みを浮かべる花京院さんに、思わずゴクリ、と唾を飲み込んだ。こ、これはまさか、大人の関係ってやつ…!?
「典くん…仗助くんだけじゃなく私もからかってるでしょう!ただの友達!絶対にあらぬ疑いをかけられてるってば!」
「ふ…、僕はそれでも構わないけどね。」
「そうじゃなくて、ちゃんと事実を…!」
結局よく分かんねーが、大人な関係ではないみてーで正直ガッカリした。けど、さっき花京院さんが言ってた"一方的になまえさんに想いを寄せてる"ってのは本当らしい。花京院さんのなまえさんを見つめる目は特別優しくて愛おしそうだし、何より承太郎さんが、なまえさんを後ろから抱きしめながら花京院さんを威嚇してるのが証拠。
「まぁ、別になんだっていいんスけどね。」
「も〜!典くんはね、私の神というかアイドルというか…。10年間から花京院推しなの。」
「おし…?好きとは違うんスか?」
「好きだよ。だけど恋愛の好きとは違って…、って、承太郎…!あの、当たってるんだけど。」
「当ててるんだ。…花京院、仗助。そろそろ帰れ。夫婦水入らずの邪魔だぜ。」
"当たってる"と言って顔を赤らめるなまえさん。
"当ててる"と言って俺らを睨みつける承太郎さん。
これらの意味を理解できないほど純粋な子供じゃない。思わずこの後に行われるであろう行為を一瞬想像しちまって顔が熱くなったのを咄嗟に隠したが、大人達にはバレちまっただろうな…。
「か、花京院さん、そろそろ帰りましょーか。」
「…そうだな。これ以上邪魔したらスタープラチナのオラオララッシュが飛んできそうだしな。」
それは御免蒙りたい。
俺らが帰る素振りを見せても承太郎さんは動かずにずっとなまえさんを抱きしめて、なまえさんは動けずに「またね」と手を振るだけだった。
なんだかんだ、お似合いの二人なのかもしんねぇな。
「はぁ…相変わらずかわいいな、なまえは。」
「まぁ、かわいい人でしたね。ちなみにおいくつなんスか?」
「あぁ、なまえは承太郎と同じ、28歳だよ。」
「にっ、にっ、にじゅうはち!!?花京院さんよりも上っスか!?」
「はは、ひとつだけね。」
身長のせいか童顔のせいか、28歳には見えない。そもそも結婚しているようにも見えないのに。彼女は童顔ではあるが、年齢を聞いてみたら確かに、年相応の落ち着きがあるように見えなくもない。俺に対して話す時に年下に向かって話すように話したり、花京院さんや承太郎さんを窘めたり。だがしかし、やっぱりなまえさんには年下感を感じるのはなぜなのか。
「なまえは魅力的だろう?もっと知りたくなったか?」
「あー、誤解がないように言っときますけど、好きとかそういうんじゃあないっスからね?」
「そうかな。仗助も、守ってあげたくなる子がタイプなんじゃあないのか?」
守ってあげたくなる子。それを聞いて「それだー!!」と叫び出すところだった。億泰相手に話してんなら間違いなく口から出てただろう。しかし、引っかかっていたトコロが分かってスッキリしたぜ。
なまえさんの年下感の正体。それは彼女の醸し出す、守ってあげたくなる、か弱い女の子の雰囲気だ。
俺の知っている女性なんて高々、お袋か由花子くらいなモンで、アイツらはか弱いだとか守ってあげたいなんてモンとは無縁だからか、なまえさんみたいな女性らしい女性は初めてで物珍しいのは確か。
「確かに…そういう子は好きっスね。だからって、人のモンに手を出したりはしないっスよ?」
「ふ、はは、良かった。本人に自覚はないけどなまえは面食いだから。仗助の顔が好きとか言いかねないんだ。その時はちゃんと断ってくれよ。」
「…花京院さん、自分の事言ってます?そんで自分の事は棚に上げてません?」
「僕は良いんだ。線引きをして接しているから、承太郎もなんだかんだ許してくれるからな。」
なんかよく分かんねーけど、三人の信頼関係?があってこそ成り立ってる気がする。結局誰に聞いても三人の関係性はよく分かんなかったが、ひとつだけ分かった事がある。この三人の関係には、割り込まないのが一番だって事だ。
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