1年目
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「なまえ…!」
「ポルナレフ〜!」
承太郎に連れられて家までやってきたポルナレフ。会うのは半年振りだが、もっとそれ以上に離れていた気もする。
その彼は以前と特段変わりなく、元気なように見える。が、私を上から下まで見やったあと、クシャ、と顔を歪ませて涙を流し始めるのでこちらももらい泣きしそうになってしまった。
「なまえ…オメー…元気そうで安心したぜ…!」
「元気、に見えるなら、良かった…。ポルナレフも、元気そうで…。」
もしかしたら本当は、元気なんかじゃないかもしれない。けど、生きていて嬉しい。良かった。そう思ったら今度こそ涙が出てきて、承太郎にソファまで促された。
「承太郎、オメー…、なまえにそんな過保護だったか?」
「やかましい。過保護になっても仕方ねぇだろう。」
「ン…まぁそうか。コイツすぐ無茶するからな。…花京院は?」
「いるよ。…典明、出てきて。」
私の呼び掛けに応えるように、やや間を置いて典明が姿を現した。その典明を見るポルナレフはまた目に涙を溜めて、だけど優しい顔で典明を見つめた。
「よォ花京院…。元気そうだな。」
「……これが元気に見えるのか?君は。」
「はは…声が出せるようになったんだ。前よりかは元気だろ。」
厳密に言えば、典明はずっと声を上げていたのだが。ポルナレフや承太郎からしたら、突然聞こえるようになったのだから仕方のない事だが、私には実感がない。
「僕なんかよりも、なまえの心配をしてくれ。」
「…そうだな。腹ん中にガキがいるっつーのに、痩せたんじゃあねぇか?それに、髪の毛も切っちまったんだな。」
「痩せた、かな…?お医者さんには何も、言われてないけど…。」
私は、だが。もしかしたら承太郎は何か言われているかもしれないが、聞いてもきっと教えてはくれないだろう。
「髪の毛は…気分転換に…。何かが変わるかなって思ったんだけど、全然、効果なかったよ…。」
「……色んな君が見られて、僕は嬉しいよ。」
「…ごめん。ありがとう、典明。」
湿っぽい空気を出してごめん。そして、褒めてくれてありがとう。典明に悲しい顔をさせてしまってごめん、は何となく言えなかった。
「なまえ。オメーが喜ぶかと思って、日持ちする焼き菓子を買ってきたんだ。食える時に食え。」
空気を変えようと、ポルナレフが明るく話題を変えたのが分かった。たった2ヶ月あまりの旅だったが、それくらいは理解していた。ポルナレフもなんだかんだ、承太郎ぐらい優しいのだ。
「わぁ…ありがとう…!承太郎、紅茶が飲みたい!」
「紅茶はカフェインが入ってるからダメだ。」
「む…焼き菓子には紅茶がいいのに。」
「…ハァ…ルイボスティーで我慢しな。」
「…はぁい。」
当たり前のように私のお茶を淹れるためにキッチンに向かう承太郎を見送りながら「人ってこんなすぐに変わるんだな…」とポルナレフが零すので、首を縦に振って激しく同意した。エジプトに行く前と今とでは、大違いである。
「外を歩いてても、疲れたなって思うとすぐに抱っこしてくるの。これじゃ私、歩けなくなっちゃうよ。」
「ふふ、承太郎は目敏いからな。」
「煙草も辞めたんだって?もう承太郎がなまえの旦那さんって言われても驚かねーぜ。」
「あはは、それは無理。私、典明じゃないとときめかないし、承太郎とは意見が合わないから。」
「……そーかよ。」
チラ、とポルナレフの視線が典明へと向けられたのでそちらを見ると、嬉しそうに微笑んでいて見ているこちらまで幸せな気持ちになった。…かわいい…。
「ん?というか、承太郎って煙草辞めたの!?知らないんだけど!」
そういえば、しばらく承太郎の加え煙草を見ていない。まさか、あの承太郎がそこまでするなんて…そう思うと少し感動して、涙が出そうになった。
「やれやれ…わざわざ言うもんじゃあねぇぜ、ポルナレフ。」
「承太郎…!!ありがとう…好き…!典明の次の聖子さんの次に!!」
お茶を持って戻ってきた承太郎を抱きしめて感謝を述べると、なるほど確かに、承太郎からはもうほとんど煙草の匂いはしなかった。承太郎のこういうとこ、大好き。
「おっと、そろそろ行かねーとな。」
「えっ…もうそんな時間…?」
時計を見て急いでお茶を飲み干すポルナレフから視線を窓へ移すと、もう外は暗くなり始めていた。思い出話をしていたらあっという間に帰る時間になっていたようで、まだまだ話し足りない。だけど、元々日帰りだと聞いていたので、仕方のない事であった。
「今度いつ会える?この子が産まれたら、来てくれる…?」
「はは…当たり前だろ?全く、変わったのは承太郎だけじゃあねぇみてーだな。」
ワシワシと私の頭を撫でる大きな手は力強くて、でも優しくてまた、涙が出そうになった。でも、彼はまた会いに来ると言ってくれた。それを信じて、今日は見送るしかない。
「あ。お腹、動いてる。」
別れの抱擁をするとちょうどお腹の中で赤ちゃんが動いて、ポルナレフの方を蹴った。「お。元気だな」と言ったのでポルナレフにも振動は伝わったようで承太郎が拗ねたように「俺の時はいつも動かねぇのに」と珍しく唇を尖らせるのでみんなで笑ってしまった。
「みんな、ありがとう…。私、頑張って産むから。」
久しぶりに、生きる気力が湧いてきた。きっとポルナレフに会えたからだろう。彼の気遣いや優しさに触れて、また頑張ろうという気になれた。
「おぅ。じゃあ、また会いに来るからよ。それまで元気でな。花京院も。」
「うん。ありがとう。」
「空港まで送ってくるから、鍵を閉めて安静にしてるんだぜ。」
別れの挨拶の締めは、承太郎の過保護発言であった。
本当、ポルナレフがいようと関係ないんだから。
「ポルナレフに会えて良かったね。顔色も少し良くなって…良かったよ。」
「本当?今日の私、最近の私よりもかわいい?」
ガチャ、と鍵を閉めて典明を振り向くと、ふわっと柔らかい笑みを浮かべて「最近もなにも、君は出会った時から今まで、ずっと最高にかわいいよ」と当たり前のように言うので頬が熱くなった。もう、典明ってば…!好き…!!!
24/24ページ