1年目
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「本当に全部食いやがった…!」
「だから食べるってば。」
結局ホル・ホースは私が食べ終わるまでその様子をじっと眺めていた。本当に食べられるのか確かめたかったのだろうが、食べづらいのなんのって…!
「ま、まさか昼飯も同じだけ食うんじゃ…!」
「食べるってば!!しつこいなぁ!」
とうとう今まで出会った女は…!と一人でブツブツ呟き始めるので、よっぽどのショックだったみたいだ。目の前にいる女性に失礼なのだが。
「承太郎、点滴終わりそうだけど、どうするの?」
「あぁ、スタープラチナで外すぜ。」
「えっ、大丈夫なんだよね…?」
点滴のパックの終わりが見えてきて何気なく聞いたのだが…承太郎がきちんと医師に聞いたとはいえ、こういった経験がないため少しばかり不安である。
「テメーが動かなきゃ大丈夫だ。」
「なまえ。僕の肉の芽を抜いたのは承太郎だろう?」
「典明!」「花京院。」
昨日の夜振りの典明の姿。最後に見た時は泣いていたのに、今は私を見て柔らかく笑顔を浮かべていて、まるで天使が迎えにきたのかと見間違えるほどにはその美しさと神々しさに見とれてしまった。本当に、何度見ても見慣れないほどに、綺麗な人だ。
「大丈夫だよ、なまえ。きっとすぐ終わる。…ほら、もう終わったよ。」
「えっ!?あ、本当だ…。」
私が典明に見とれている間に、スタープラチナが針を引っこ抜いてくれたらしい。姿を現すだけで私の目を釘付けにさせる典明がすごいのか、その隙に一瞬で針を抜きとった承太郎とスタープラチナがすごいのか、私には分からない。最後に承太郎がぎゅ、と絆創膏を抑えて、処置が終了したようだ。本当に一瞬の事で、怖くもなんともなかった。
「典明、承太郎、ありがとう!」
素直に感謝の言葉を述べると、承太郎が珍しく優しく表情を崩して頭を撫でるので、一瞬ドキッとした。
「…悪い。今一瞬だけかわいいと…。妹としてだぜ、花京院。」
承太郎がしどろもどろになりながら典明に向かって言い訳するので典明を見ると、眉間に皺を寄せて疑いの眼差しを向けていて、嬉しくて少し笑ってしまった。
「典明、もしも私と承太郎がお互いの事好きになったら、どうする?」
今まで典明に聞いてこなかった純粋な疑問。私と承太郎は血の繋がりはないし養子でもないただの男女で、それがひとつ屋根の下、一緒に生活している。それに私達は距離感が近いと思っている。主に私の、ではあるが。それを典明は、どう思っているのだろうかと気になっていたのだ。
「…普通、本人を目の前に聞くか?」
困惑したようにそう言ったのはホル・ホース。普通は聞きづらい質問かもしれないが、私と典明ならば聞いても大丈夫だと思ったから聞いたのだ。予想通り典明は驚いてはいるが答えずらそうにしている様子はなくむしろ微笑みを浮かべている。
「そうだなぁ…。君が承太郎と一緒になるのを強く望むのなら、認めようとはするだろうね。…だけど、君と承太郎に限ってはそんな事にはならないだろうな。断言できる。」
ふふ、と楽しそうに言い切る典明を見て、やっぱり彼は私の事をよく分かっているな、と思った。
「正解!典明すごい。」
「?花京院はなんて?」
ホル・ホースに典明の言っていた事をそのまま伝えると彼は理解できないというような、納得できないというような表情を浮かべて「先の事なんて分からねぇだろ?」と。
「あのねホル・ホース。私は、典明よりも先に承太郎と出会ってるの。確かに承太郎の事は好きだけど、男性として見た事は一度もないし、もう典明と出会って承太郎への好きとは違う種類の好きっていう気持ちを典明に抱いてる。承太郎とそういう仲になるとしたら、典明と出会う前しかありえない。それに、」
長々と語って、一度言葉を切り典明を見る。典明は私の言葉を聞き嬉しそうに柔らかい笑顔を浮かべているので、こっちも幸せな気持ちになる。
「私、もしも典明と出会わない世界線を生きてても、承太郎を好きになる事は絶対なかった。私、理想が高いのよ。承太郎の顔も性格もタイプじゃないしね。」
「そういうこった。俺もテメーみてぇな奴はごめんだぜ。」
手をヒラヒラと振ってアピールする承太郎に少しムッとしたが、まぁそのぐらいでいてくれた方が助かるし、承太郎のそういうところがあるからずっと一緒にいられるのだ。
「んな事言ったってよォ…。ちなみに、アンタのタイプって?」
「おい。余計な事は聞くな。めんどくせぇぞ。」
ホル・ホースの言葉に私は嬉々として立ち上がり、聞いてくれる?とホル・ホースの前に立ちはだかった。これで、もう逃げられまい。
「一言で言うと、典明みたいな人なんだけど。私ずっと王子様みたいな人を探しててね。とにかく私に優しくて、物腰も柔らかくて所作も丁寧で紳士的な人がタイプだったんだけどそんな人なかなかいないじゃない?でも典明と出会って"王子様いた!"って思ったの。それどころか身長は高いし顔も良いし声もいい。そんなの好きになるしかないよね?あとね、典明っていい匂いがするの。それに目の色も綺麗だし、あと指も細くて長くて綺麗だし。典明はね、私の高い理想を超えてきたの!かっこいいし綺麗だしかわいいし全てを兼ね備えてるの!ねぇ聞いてる!?」
「き、聞いてる聞いてる!!」
あからさまにつまらなそうな顔をしているホル・ホースの肩を掴んでガクガクと揺らして聞いているのかと詰め寄る。聞いてると言ったが、本当にちゃんと聞いていたのだろうか?
「…やっぱり、君に触れられないのは辛いな…今すぐ君を抱きしめたい。」
「!!ねぇ!今の聞いた!?典明が!!」
「聞いてねぇよ!そもそも聞こえてねぇって!」
「やかましい!」
典明の甘い言葉を聞いて、再びホル・ホースを揺らしたが私にしか聞こえないのだった。今のは是非とも全人類に聞かせたかった。私の恋人が最高すぎると!