第4部 杜王町を離れるまで 前編
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「初流乃…なんか日に日に、癖が出てきてない?」
夕食前にはギリギリ空条邸へ帰宅でき、夕食後は子供達をお風呂へ入れて、上げるのを任されたので典親と初流乃の髪の毛を乾かしたのだが…。初流乃はサラサラつやつやの羨ましい程のストレートヘアだったはずなのに、出会ってからたった4、5ヶ月の間に少しずつ少しずつ、癖が出はじめてきている気がする。住んでいた地域と水質が違うからだろうか?もしくはシャンプーが変わったから?それとも…。
「そうですね。花京院さんと典親と同じで嬉しいです。」
いや、本人が気にしていない、むしろ喜んでいるのなら、別に私があれこれ気にしなくとも大丈夫だろう。
「それを言ったら、私とお揃いだったのに。残念。」と言ったら自分の髪の毛を見て「それもそうですね…。なまえさん、縮毛矯正っていくらくらいかかりますか?」と真面目に答えるので慌てて前言撤回した。そんな事したら、初流乃のつやつやヘアが傷んでしまう!それに、典明や典親のようなふわふわな髪の毛だって好きだ。初流乃は顔がいいから、なんだって似合うだろうし。
「初流乃はそのままでいいよ。どんな初流乃も好き。」
「なまえさん…ありがとうございます。」
「初流乃くん、僕とお揃いになるの?これも?」
これ、と典親が指差すのは、しっぽの事だ。それを見て全員口を閉じて想像してみたが、どうしても私か典明の姿が重なってしまって上手く想像できなかった。
「うーん、初流乃が伸ばしたいっていうならね。」
「…それは、僕には似合わないんじゃあないかな。」
「ちぇ、残念。」
つまらなそうに唇を尖らせる典親と初流乃の頭を撫でて、この話は終了した。初流乃の髪…DIOと関係がなければいいけど…少し気になる。近いうちにSPW財団で再度検査を受けた方が良いだろう。
今日も今日とてお節作り。もう今日は12月31日だ。日持ちするものは昨日作り終えたようなので、今日は海老を焼いたり、酢の物を作ったりするみたいだ。その後は年越しそばを作るので、聖子さんは大忙しである。といっても、今日も何名かお手伝いを申し出たのだが、時間のかかるものは作り終えて今日は簡単にできるものをテンポよく作らなくてはならないのでかえって邪魔になりそうという事でみんなで外に出かける事にした。私、典明、露伴、子供2人となるとなかなかの大所帯で、しかもみんな見目がいいので目立ってしまう。特に露伴の体に入った典明が問題だった。今の彼は見た目は19歳の姿まで成長している。高校生ではなくなった彼はさらに魅力が増して、道行く人の目を引いてしまっている。
「お兄さん、とってもかっこいいですね!連絡先交換しませんか?」
まただ。さっきから、同じような言葉をかけてくる女の子達。彼の答えも毎回同じで、
「僕の連絡先、彼女の連絡先なんだけどそれでもいいかい?携帯電話、持っていなくてね。」
と、満面の笑みで私を手で指し示すのだ。そこでやっと私の姿を見、子供達を見、みんな一様に諦めて去っていく。こんな美少女と、彼にそっくりな子供。さらに謎の美少年。極めつけに連絡先は私だなんて、諦めるしかないだろう。私なら、絶対に諦めないが。
「典明、かっこいい…。本当にかっこいい…!好き好き〜!!」
「なまえ、子供の前でそんなかわいい顔するんじゃあない。キスしたくなるだろう。」
典明のかっこよさに、街中だというのに我慢できずに抱きついて胸に顔を埋めたら、そんなイケメンな事を小声で囁くので危うく腰を抜かすところだったし、なんなら意識が飛ぶところだった。やっぱり、かっこよすぎる…!
「お兄さん、背高いね!身長いくつ?モデルとか興味ない?」
「!も、モデル…!だっ、ダメです!彼は私の専属モデルです!私以外が彼の魅力を広めるのは許可できません!」
ついにモデルのスカウトまで来てしまった。正直これは想定していなかった。かっこよすぎるほどにかっこいいから、よくよく考えたら当たり前だっだ。
専属モデル…?と首を傾げる男性にSPW財団の名刺を渡し「ちゃんとした名刺はないですが、画家をしております。」と告げると名刺の名前を見て「あっ!もしかしてTenmei…!?」と声を上げるので「内緒です。他言無用、ですよ。」とSPW財団の社員証もチラつかせて無理やり黙らせた。SPW財団には、出版社を一社潰した前例がある。それもごく最近。ここまですれば、余程のバカでなければ情報を流したりはしないだろう。
「典親…君のパパとママは、すごい人達みたいだね。」
「初流乃くんのパパとママでもあるでしょ?」
「…はは。そうだね、そうだった!」
笑い合う子供達2人をみて私と典明もほっこりした気持ちでそれを眺めていたら「君達!よく見たら君達もかっこいいね!モデルに興味ないかな!?」と今度は初流乃と典親も勧誘し始めてしまったので大慌てで止めた。初流乃も確かに綺麗だが"一応"人様の子な上にDIOとの繋がりがあるのだ。それを世界に発信するのはどう考えても得策ではない。それに典親も典明と血の繋がりがあるのは一目瞭然。というか、他所のモデルになるくらいならうちの子供服のモデルにさせたい。なんだかマネージャーにでもなった気分だ。
「君達、すごい集団だね…。本当に勿体ない…!僕は部署が違うんだけど、女性誌担当だったら君も勧誘したいくらいだ。」
「私?や、顔出しNGなんで。」
「ふはッ…!…あぁいや、すみません。僕ら全員、そういうのに興味なくて。じゃあ、家族水入らずなのでこれで。」
突然笑いだした典明は、用は済んだと別れの挨拶を告げて私達の背を押しスマートに去っていく。最初からこれでよかったじゃないか、と思ったが典明の笑顔に免じて許してあげよう。スカウトマンは「え?家族?」と混乱した様子だが、無理に追いかけて来たりはしないようでホッとした。その後もたくさんの人に声をかけられ続けたが、露伴の姿に戻ったところで騒ぎになるのは間違いないので典明の姿のまま過ごし、気は進まなかったが適当なお店でサングラスを購入して煌びやかな集団は一瞬にして怪しい集団へと変わった。違う意味で注目を浴びてしまって少し恥ずかしい気もするが、そうそう声をかけようとする人もいないのでまぁ良いだろう。
「典明は…サングラスをかけてもスター感が出ちゃうのね…。」
「君だって、美人が隠しきれてないぞ。」
瞳が隠れてても分かる典明の優しい笑みが、なんだか目の怪我で入院した時の記憶を思い出させて胸がきゅんと高鳴った。結局、私は典明ならなんでもいい。なんでも好きなのだ。