第3部 杜王町 その後の物語
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「君達がキスしている所を見て、僕はドキドキしたんだ。言葉を選ばずに言うと、興奮した、って所かな。いつもなまえは、僕とキスしている時、こんな顔をしているのかもしれないって思ったら、かわいくて仕方なくて。」
「ブッ!…ゲホッ!」
露伴が飲んでいたビールを吹き出しているのを、私は黙って眺めた。「!なまえ、零れてるよ。」と言う典明の言葉に手元を見たら飲もうとしていたお酒が全部流れ落ちていて「あぁ…ごめん…。」と謝罪をした。
今、典明はなんと言っただろうか。私と露伴のキスシーンを見て、興奮したと、そう言ったような気がするのだが。
「!!!」
典明の発言を飲み込んで理解すると、顔が、体が一気に熱くなって、お酒が回るのが分かった。頬を触ると、やはり熱くなっている。
「はは…かわいい…。」
私を見てそう言う典明の顔は、飲んでもいないのにお酒が入っているかのように蕩けている。
「か、花京院さん…変わった性癖を持ってるんだな…。」
「…失礼だな。誰でもいいわけじゃない。」
典明はハイエロファントでテーブルを拭きながら、頬を僅かに赤くしている。私の顔は、もっと赤いはずだ。
「…もう一度、見せてくれないか。さっきは突然の事で混乱して、邪魔してしまったから…。」
言いづらそうにそう言う典明を見て露伴を見ると、彼も同じ動きをしていたようで、視線がかち合った。見せて、と改めて言われると、恥ずかしくてできそうにない。
「… なまえさん。僕は、君とまたキスができたらいいと思っている。君はどうなんだ?さっきので、嫌になってはいないか?」
嫌になんて、なっていない。なっていないから、典明にたくさん謝ったのだ。しかし、その典明が許している。そればかりか、キスしているところを見たいだなんて…!…頭が、クラクラする。
「嫌じゃない、よ。」
「っ!」
全員、おかしい。熱に浮かされているような顔をしている。おかしい、のに。
「なまえ…こっちにおいで。」
典明に手を引かれて露伴の前までやってくると、緊張して顔が強ばるのが分かる。誰かに見られながらキスなんて、した事がない。
「なまえさん、キス、してもいいか?」
改めてそう聞いてきた露伴はさっきとは違って、お風呂上がりという事でヘアバンドを外して髪を下ろしていて、尚且つ頬を染めているのでドキドキする。
「…いいよ…。」
回らない頭で何とかそう返すと、露伴は優しく笑って、私の頬に手を添えて顔を近づける。そして、ちゅ、と触れ合った唇はとても熱い。ちょっとだけ、ビールの味がする。
「やっぱり…かわいい…かわいいね、なまえ…。」
「っん…、は…。」
吐息混じりの典明の声に、思わず声が漏れてしまった。その声に反応するかのように露伴は唇をぬる、と舌でなぞるので、頭が痺れたように麻痺してくる。
「ん、んっ…は、…待っ。」
初めてのキスの感覚に、典明の視線に、頭が混乱して、怖い。なにか掴みたくて手をさ迷わせると露伴の手とぶつかったので指を絡ませた。私の待って、という言葉を聞いて露伴が1度口を離したので、彼の胸に頭を凭れて息を整えた。たった数秒なのに、息が上がって苦しい。
「なまえ…やっぱり君は、世界一かわいいね…。」
「クソ…本当に、かわいいな。」
後ろからは典明に抱きしめられ、前からは露伴に抱きしめられて、ドキドキが止まらない。頭は、どうしていいのか分からなくて混乱しているし、ポロ、と涙が溢れた。
「もうむり…恥ずかしくて死にそう…。」
「もう?はは、残念だな。」
残念だと言う割には嬉しそうに笑う典明は、いつかのようにいじわるな典明の顔をしているのでキッと睨みつけた。今ばかりは、露伴の方が優しいだろう。
露伴は息を落ち着かせようと、自身の胸に頭を預けて凭れかかっている私に体を預けて、ぎゅ、と腕の力を強めた。露伴の心臓の音が聞こえてきて、それを黙って聞いていたら私の方が先に落ち着いてきた。
今日はとんでもない1日だったな…と思い返していたら、お酒の力も相まって頭がぼーっとしてきて、だんだんと、瞼が重くなってきた。そのまま抵抗せずに瞼を閉じると、だんだんと意識が薄れ、やがて途切れた。
次日の朝、夢を見ているのか現実なのかは分からなかったが、典明にキスをされていて幸せで私もそれに応えていたら「なまえ…朝から積極的だね。」と言われたので現実だと気づいて目が覚めた。
「典明と、キスしてる夢かと思って…。」と布団で口元を隠したら「はぁ…朝からかわいすぎて困る…。」と目を覆ったので朝からドキドキさせる典明に、私も困った。
ベッドサイドの時計を見るとまだ早い時間だが布団を抜け出して初流乃の部屋へ行くと、彼はもう起きていて、目を丸くさせて「なまえさん…もう大丈夫なんですか?」と駆け寄って来たのでそのまま抱きしめた。「心配かけてごめん。」と背中を撫でると「なまえさんが元気になってよかった。」と初流乃も私の背に腕を回すので頭をヨシヨシと撫でた。
「ピアス、戻ったんですね。やっぱりそれは、なまえさんが1番似合います。」
とびきりの笑顔で言う初流乃の言葉に、私はそういえば、と耳に触れた。いつもの、チェリーのピアスが返ってきている。寝る前はまだ、露伴のピアスを着けていたはずだが。
「返すのを忘れていてね。承太郎と話す時に、彼に着けていたんだ、ごめんね。」
それからずっと持っていたんだと聞いて納得した。恐らくリビングで交換したのだろう。
「露伴は似合ってなかった?」と初流乃に聞くと、彼は首を傾げて考えたあと「はい、あんまり。」と正直に答えたので私も典明も笑ってしまった。
やっぱり、これは典明が1番似合う。