第3部 杜王町 その後の物語
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「またね。パパ、ママ。」
夏休みもあと数日という事で、典親は東京へと帰ってしまうため典明と2人で東京駅までお見送りにきた。改札の向こうには、もう聖子さんの姿が見えている。
承太郎とのお別れの時はあんなに泣いていたのに、やっぱり予想通り、今の典親はそんな素振りは全然なく、少し悲しい。
「典親、今度は年末に帰るからね。」と伝えたら「うん。露伴先生も連れてきてよ。」と言うので典明と顔を見合わせた。一体この子の懐く人の基準は、どこにあるのか…不思議でならない。
最後にお互いの頬にキスをすると、典親は改札の向こうへ行ってしまった。しかも振り返ることもなく、すぐに人混みに紛れて見えなくなってしまった。さ、寂しい…!!
「典親には、僕らの愛情がちゃんと伝わってるんだね。だからきっと、寂しくないんだ。」
そう言う典明は、言葉とは裏腹に寂しそうな顔をしているが。
「…帰ろう。初流乃が待ってる。」
いつまでもここでこうしてても典親は戻ってこない。地面に張り付いた足を無理やり剥がして、戻るための新幹線のホームへと向かう。杜王町では初流乃が、露伴と一緒に待っている。今までは間に典親がいたため問題なく過ごしていたが、マイペースな初流乃とわがままな露伴という組み合わせが、少しだけ心配である。なにも、なければいいのだが。
ただいま、と岸辺邸へ帰ると、出迎えたのは露伴ではなく初流乃だった。それもなんだか困ったような顔をしていて、何かあったというのは明白だった。初流乃に露伴の所在を聞くと電話中だというので書斎に行くと、電話の相手…恐らく泉さんと何やら言い合っているようだ。
「だから、何度も言うが、僕となまえさんはそういう関係じゃ…!っ、彼女が帰ってきた。またあとで連絡する。」
ガチャ!と乱暴に受話器を置く露伴は、大きなため息をついて頭を抑えている。…これは、もしかして迷惑をかけているのではないだろうか…?
「露伴…ごめん、なにか迷惑を「いや、そういうんじゃない。気にするな。」
露伴は私の言葉に被せて、すぐに否定の言葉を発する。絶対になにかあるじゃん…と典明を見ると、目を細めて露伴を見つめていた。
「ねぇ、話して。じゃないと、露伴が話すまでハイエロファントで拘束するからね。」
言い終わるよりも早く、ハイエロファントの触手が露伴の体を捕えた。典明は眠らないし、疲れない。話すまで離さないと若干脅しともとれる発言に、露伴は眉間に皺を寄せ、そしてしばしの沈黙のあと「…分かった。話すよ。」とついに折れ、もう一度ため息をついて話し始めた。
「今の電話は、編集社からだ。どうやら、週刊誌に撮られたらしい。」
「……週刊誌?」
週刊誌と編集社に、なんの関係が?撮られた、とは?…誰が?
「まさか、「そうだ。僕と君と、子供達だ。」
露伴は、ジャンプの表紙に載った事があるようで、世間に顔が知られているらしい。知名度がどの程度のものなのかは知らないが、子供達がいたのがよくなかったのだろう。
「隠し子だの未成年淫行だの、好き勝手に書きやがって…!」
幸い、子供達の顔はきちんと隠されていたらしいのでそこは良かったのだが…。
このままだと、露伴のイメージが悪くなってしまう。
「露伴。その出版社の名前教えて。直接会って話そう。」
「なまえ、なに考えてる?」
典明は露伴を見ていた時と同じく目を細めて私を見ている。力ずくでなにかしようとしているのではないかと心配しているみたいだ。典明も何気に、たまに失礼である。
「ふふ。私、SPW財団員だよ?」
私の力ではなく、SPW財団の力で、なんとかしてもらおう。こういうのは、強大な力でねじ伏せるのが1番だ。
ニッと笑顔を見せると典明は「はは…なるほどね。君を怒らせると怖いなぁ。」と眉を下げて表情を崩した。典明はいつも本当に、物わかりがいい。
使えるコネは、全部使わなければ。
「…君、本当にすごいな…。」
あの後無理やり追加の記事を書かせ、号外として無理やり翌日である今日、発行させた。私と露伴のインタビュー記事付きだ。
"お相手の女性は未亡人の26歳"
"子供は知り合いの子だった"
"岸辺露伴とは仕事の良きパートナー"
嘘と真を織り交ぜた、そんなような文言が並んでいる週刊誌は、この号で廃刊になる。何をどうやったのかは分からないが、今日付けでSPW財団の力で倒産させられたのだ。ここまですれば、同業他社ももう手を出しては来ないだろう。
「あはは。なまえさん、怖いですね。」
怖いと言いながら笑う初流乃。昨日は不安な顔をしていたので心配していたが、今はもう平気そうで安心した。
「使えるもんは全部使うのよ、初流乃。」
分かった?と初流乃を見ると素直に「はい、分かりました。」と頷いた。うん、素直でよろしい。そしてかわいいので、ヨシヨシと頭を撫でた。
「僕のなまえ、かわいいだけじゃなくかっこいいだろう?」
典明は、なぜか露伴の隣に立って私の自慢をしているので露伴は困惑しながらも「あ、あぁ。そうだな…。」と歯切れの悪い返答を返した。
私はというと、典明が最近よく言う"僕のなまえ"という単語に頬を染めて静かに喜んでいた。昔、DIOに"俺のモノ"と言われた時は殺してやりたく思っていたが、典明に言われるとなると話が変わってくる。典明の独占欲が垣間見えて、とても嬉しいのだ。私も、今度言ってみようか。私の、典明…と。
「なまえさん。すぐに解決してくれてありがとう。感謝するよ。」
珍しく素直に感謝の言葉を述べたかと思ったら、露伴は僅かに頬を染めて視線を逸らすので照れているようである。かわいいヤツめ!
「かわいいなぁ、露伴〜!このこの〜!」
「うわっ、やめろ!かわいがるな!」
ワシャワシャと頭を撫でるのを振り払おうと足掻くが、やっぱり力では私に敵わないので、露伴は悔しそうだ。最近の生意気な態度の露伴は、申し訳ないが本当にかわいらしく思う。かわいがると嫌がるので、余計にかわいがるのをやめられない!