第3部 杜王町 その後の物語
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あれから数日。露伴との協議を重ねた結果、典明も描く事が決定し、3人の"Tenmei"をバランスよく配置する事にした。
典明は「僕、自分で自分を描くのか…?」と戸惑ってはいたが、私が"Tenmei"しか描かないコンセプトで10年やってきているので付き合ってもらうしかない。
「典明が嫌だっていうなら無理強いはしないよ。」と伝えたが「嫌なわけじゃない。むしろ嬉しいよ。」と笑顔を浮かべるので内心ホッとした。とてもいい案だったから実現させたかったし、断られたらまた振り出しに戻ってしまうところだった。これでやっと、次に進める。
あーでもないこーでもないと3人で議論を交わしていると典親が「お腹すいた…。」と小さく呟くので時計を見ると、もうお昼の12時をとっくに回っていたのに気がついた。テーブルを見ると典親と初流乃は大人しくお絵描きをしていたらしく、申し訳ない気持ちになった。
「ごめん、典親。初流乃も、お腹すいたでしょう?」
典親を抱っこして初流乃に問うと「…少し。」と苦笑いを零すので余計に申し訳ない気持ちが増した。
久しぶりに、カフェ・ドゥ・マゴへやってくると、お昼時を少し過ぎたからかいくつか空いている席があったので2つのテーブルをくっつけて席に着いた。ここにくるのも、もう何度目だろうか。いつも露伴が一緒にいた気がするが気のせいだろうか。
「カレーライスが食べたいけど、オムライスもいいなぁ。」
「じゃあ、僕と半分こしよう。」
「初流乃、食べたいもの食べな。残ったら、私が全部食べるから。」
典親と仲睦まじくメニューを眺める初流乃。なんだか兄弟みたいで微笑ましいが、初流乃の食べたいものを食べさせてあげたい。なにより、初流乃の食の好みを知りたくて言ったのだが…初流乃はそれを聞いて、表情を曇らせた。
「初流乃、どうしたの?私にだけ教えて。」
耳元で小さい声で初流乃に囁くと、彼は少し考えたあと私と同じように顔を寄せて耳元で「僕、好きな食べ物とか、分からなくて。」と小さい声で伝えてきた。そうか、今までは、出されたものを食べるだけだったから。
「そういう事なら、一口ずつ色々食べてみよ。残ったらぜーんぶ、私が食べるから!」
心配するなと頭を撫でてやると、典明のように優しく笑うので、少しドキリとした。なまじ顔が綺麗だからか、たまに典明と姿が重なるのだ。
注文した数分後にはテーブルいっぱいに料理が並べられ、露伴なんて軽く引いているほどで「本当に食べられるんだろうな?」と確認を取ってきた。露伴はまだ、私の本気を知らないのだ。
「大丈夫。なまえが残してるところ、見た事ないし、心配しなくていい。」
となぜか典明が得意気に言うのでかわいくて笑ってしまった。初流乃は遠慮しながらも色々なお皿の料理を口にして、あまり好きじゃないものは私が片っ端から食べていった。どうやらタコの入ったサラダを気に入ったらしいのだがメインの料理ではないのでパスタも食べるように促すと「おいしいです。」と口にソースを付けて言うので紙ナプキンで拭ってあげた。典明がその様子を眺めて、優しい顔で微笑んでいる。なんて平和で、幸せなひと時だろうか。つい先日まで死闘を繰り広げていたとは思えないほど平穏で、体が戦い方を忘れてしまうのではないかと少し心配だ。私があそこまでやられてしまうような事など、なければないでいいのだが。
「君の胃袋は、本当にどうなっているんだ…。」とあからさまに引いた表情で言う露伴に「そんなに引かなくてもいいじゃない。典明を見習ってよ。」と言うと「僕がおかしいんじゃない!花京院さんがおかしいんだ!」と怒りだした。典明がおかしいなんて、失礼な奴だな。言われた典明は典明で、「?たくさん食べるなまえ、かわいいだろう?」と不思議そうな顔で言うのでやっぱりこの場でおかしいのは露伴なのだ。