第3部 杜王町 その後の物語
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「…なまえさん、君…、子供は1人じゃなかったのか…?」
駅前で久しぶりの再会を果たした露伴は、目が合うと驚きから体を固め、私達全員に視線を巡らせて上のセリフを零した。やはり予想通り、とても驚いてくれたようで思わず笑みが零れた。
「笑ってるんじゃあない!ちゃんと説明しろ!」
「あはは、落ち着いてよ露伴。典親が怖がっちゃう。」
典親、と聞いてピンときたであろう露伴は視線を下に落として典親を見つめた。典明とよく似た名前に、典明とよく似た顔立ち。典親が典明の子だと、誰が見ても分かるだろう。
「この子、露伴のファンなんだって。優しくしてね。」
典親は怖がるどころかキラキラとした目で露伴を見つめている。子供の扱いが苦手な露伴は「うっ…。」と一歩後ずさった。私と典明の子供ということで、ぞんざいには扱えないだろう。
「そ、それは分かった。じゃあ、こっちの子供はどうなんだ。彼はどう見ても、花京院さんの子じゃないだろう。」
典親の事は一旦置いといて、露伴は初流乃を指さした。人を指さすなって、小学校で教わらなかったのか。一旦置いとかれた典親を片腕で抱き上げて、呆れた顔で露伴を見る。
「汐華初流乃です。よろしくお願いします。」
露伴の態度に臆することなく、初流乃はいつも通り挨拶をするので思わず頭を撫でた。こんなに失礼な態度を取られているのに、この子はすごい子だ。
「この子は、…知り合いの子なの。2年くらい預かる事になって。」
知り合いの子。あながち間違いではない。私とDIOは、お互いを知っているのだから。初流乃の前でDIOの名前を出すのは憚られたので、知り合いと言ったが、それすらも本当は口にしたくなかった。
「初流乃、綺麗な顔してるでしょ〜?初流乃さえよかったら、モデルにしてもいいと思うけど?」
「モデル?いいですよ、別に。」
初流乃はまたしても即答する。露伴の事をよく知りもしないのに即答したので、少し心配になった。この辺の事は、これから少しずつ教えていかなければ。
「ふむ、確かに…花京院さんといい勝負だな。」
露伴が顎に手を当てて至近距離で初流乃の顔をジロジロと舐め回すように見るので頭をぐい、と押しやって距離を取ると「痛いじゃないか!」と露伴が大声を出すが、当たり前だ。初流乃が驚いて居心地悪そうにしているのが可哀想だったのだ。
「初流乃は綺麗な顔だけど、1番は典明でしょう?」
「君はまたそうやって…!」
なんだ、異論でもあるのかと視線を送ると露伴は黙った。初流乃は確かに稀に見る美少年ではあるが、さすがに典明には敵わないだろう。
「ママと露伴先生、仲良しだね。」
「仲良し…?」
典親の声に初流乃は首を傾げている。その姿がどちらもかわいくて、思わず胸がきゅ、となって胸を抑えた。子供というものはなんて、なんて尊い存在なのだ…!
「露伴、この子は花京院典親(ノリチカ)。典親(ノリチカ)って呼んであげて。」
「典親(ノリチカ)…。よ、よろしく。おっ、重っ!!」
典親を私の腕から露伴の腕へ移動すると、露伴が重がるので危なっかしくて私の腕に戻した。9歳の子供だと、前に伝えていたはずだが、9歳の重さを舐めていたらしい。
「ママ、やっぱり力持ちなんだね。」
そう言う典親はやはりなんだか誇らしげで、私は力持ちで良かったと心から実感した。
「おいで、初流乃。」
約束通り抱っこしてあげようと初流乃を呼ぶと、緊張の面持ちで近づいてきたのでかわいく思えた。
ぐい、と引き寄せて抱き上げると「わっ!」と声を上げて、私を見下ろした。隠しきれない嬉しさが、その口元から読み取れる。
「ふ…なまえはやっぱりかっこいいな。」
「うん。ママ、かっこいい。」
典明の声に、典親が同意の声を上げる。初流乃は「もしかして、花京院さんがなにか喋ったんですか?」とキョロキョロしているので「うん、私の事かっこいいって。典明が世界で1番、かっこいいのに。」と答えたら「確かに、なまえさんかっこいいです。」と笑顔を見せた。やっぱり何度見ても、綺麗な笑顔だ。
「ハァ…とりあえず、帰ろうぜ。」
露伴の呆れたようなため息を聞いて、私は2人を降ろして「その前に露伴、亀友デパート連れてって。」と言うと「そういうのは先に言ってくれるか!?」とまた大声で怒られた。この1週間あまりの寂しさで怒りっぽくなったのかと、本気で心配になった。
「露伴、1週間1人で寂しかった?」
前を歩く典明と子供達とは離れて、露伴へと聞いてみた。寂しくなかったはずはないのだが。
「全然、寂しくなかった。と言っても、君は信じないだろう?」
そう言う露伴はじと、と私を見ている。その目を見たら、やっぱり寂しかったんだな、と分かったので露伴の手を取るとピク、と僅かに固くなったのが感じられた。
「露伴、1人にしてごめんね。あと、今日からまた、お世話になります。」
声のトーンを少し落として言うと、露伴は「…別にいい。」とぶっきらぼうに答えた。でも繋いだ手を振りほどくことはしなかったので、少しだけかわいく思った。
「なまえ、お会計を。」
典明の私を呼ぶ声に顔を上げると、露伴はパッと手を離した。別に典明に見られるのは構わないが、子供に見られると良くないかと気を遣ってくれたのだろう。こういう気遣いができるのだから、私にももう少し、優しくしてくれてもいいのに。