第3部 杜王町 その後の物語
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「典親。明日、お見送りしたらどこかお出かけしよう。」
「ほんと?やったぁ!」
1度、SPW財団へ寄ってからにはなるが、普段は3人で出かけることが少ないので、典親は目を輝かせて喜んでいる。今から楽しみで仕方ないとばかりにパタパタと動き回っていてかわいくて仕方がない。
「典親、お行儀が悪いですよ。ちゃんと座って。」
典明のその一言にちゃんと座り直すが、やっぱりソワソワと落ち着かない。それほど楽しみなのだろうと思うと笑みが零れる。
「ママ、僕の事大好きなんだね。」
私のニヤケている顔を見て典親が嬉しそうに言うので、思わず心臓を抑えた。かわいい…天使すぎる…!
「大好きすぎるくらい大好き!」と言うとまた嬉しそうにはにかんで頬にちゅ、とかわいらしいキスをくれるので、危うく天に召されるところだった。典明に対する好きとはまた少し違う気持ちが胸いっぱいに溢れていて幸せだ。
「花京院…典親(ノリチカ)、本当にお前にそっくりだな。」
「はは、そうかい?僕、ここまでかわいいかな?」
典明は典明でふにゃふにゃとした笑顔を浮かべていてかわいいし、本当、かわいいの暴力!
正気を保つために承太郎の顔を見ていたら訝しげに睨まれたので「承太郎はかわいくないね。」と言ったら「テメーもな。」と即答されたのでおかしくて笑ってしまった。別に承太郎にかわいいと思われなくても、典明にかわいいと言ってもらえるだけで幸せだからいいのだ。
「じゃあね〜承太郎。しばらく会えないかと思うと寂しいよ。ジョセフさんも、体に気をつけてね。」
「とても寂しがってるようには見えねーが。」
承太郎との別れを寂しがる典親を抱いて、承太郎は私を軽く睨んでいる。そう言われてみれば、寂しいなんて承太郎相手にはあまり思わなくなった。杜王町でたくさんの人達と関わった事が良かったのだろうか?
いや、典明との魂の繋がりのお陰かもしれない。
「承太郎さん…今度は、いつ帰ってくる…?」
目に涙を溜めて承太郎へ問う典親は本当に悲しそうで、見ているこちらの方が胸を締め付けられる。ハンカチでそっと涙を拭ってやるとついにポロポロと涙が溢れてきて、抱っこする承太郎の肩へと顔を埋めてしまった。なんて…なんてかわいいの、典親…!!
「そうだな…半年後、かな。」
「半年…絶対、僕に会いにきてね。いい子にして、待ってるから…。」
あまりにかわいらしい典親の姿に、さすがの承太郎も表情が柔らかくなっていて、ヨシヨシと背中を撫でる手つきも優しい。本当に、こうしているといいパパじゃないか。
「じゃあな、典親(ノリチカ)。元気でな。」
泣き止んだ典親は私が抱き上げて、ついに承太郎はジョセフさんを引き連れて飛行機の搭乗口へと姿を消した。承太郎とのお別れは、いつも大変だ。私や典明とのお別れは、案外すんなりバイバイするので少し羨ましく思った。
「SPW財団…。」
「の、日本支部ね。」
空港で聖子さんとは別れ、典親にはしばらく一緒に暮らす子を迎えにいくと説明し一緒に初流乃を迎えにやってきた。事前にもらった電話で検査の結果を聞いたが、やはりDIOと血縁関係にあるらしい。私達はDIOとは最悪の関係ではあったが、初流乃はそれを感じさせないくらいいい子なので、私達もそれを出さないように接しなければならない。例えば、典明が初流乃の父親に殺されただとか、その後承太郎が初流乃の父親を殺しただとか、色々だ。
「なまえさん。来てくれたんですね。」
目を細めて現れた初流乃は、やっぱり驚く程に美少年だ。母親も見た目は綺麗だったので、母親似だろうか。
「約束したでしょ?さ、もう話は終わってるから、少し、この子の見学に付き合ってくれる?」
初流乃は私の言葉を聞き、私と手を繋ぐ典親を見て首を傾げた。そこで、ちゃんと話していなかったと思い出した。
「あぁ、この子、私の子なの。名前は花京院典親(ノリチカ)。今9歳で…。私は今、26歳で、典明は…17歳か、27歳。」
「にじゅう、ろくさい…。」
初流乃の発言で気づいたが、ちょうど初流乃の倍生きているらしい。そう考えると、私はもう少し、初流乃くらいは落ち着いた方がいいのかもしれない。
「典親(ノリチカ)くん。僕は汐華初流乃。よろしくね。」
初流乃は典親に視線を合わせて挨拶をしてくれる。なんだかその仕草が典明の姿とダブって見えて、典明、未起隆に次ぐ王子様が現れたようである。
「初流乃さん、よろしくお願いします。」
典親もお行儀よくペコ、と頭を下げて挨拶をしている。聖子さん…こんなにいい子に育ててくれてありがとうございます…!
典親はSPW財団を見学できた事に満足し「帰って初流乃くんと遊びたい。」というのでそのままご飯だけ食べて空条邸へ帰ってきた。
空条邸へ帰るとまずは聖子さんが「あらあら…。」と驚いていたのでしっかりと丁寧に謝罪し、わけを説明した。といっても、DIOの子なんて言えないのでその昔に縁を切ったはずの親戚から預かった子だと説明した。承太郎達には内緒にしてほしいと頼むと不思議そうにしていたが、最終的には頷いてくれたので喋ったりはしないだろう。
「汐華初流乃です。よろしくお願いします。」
初流乃が深々と頭を下げて挨拶するのを見て聖子さんも「よろしくね。私の事は聖子さんって呼んで。」とかわいらしく挨拶をして、なんとか無事に、空条邸へ迎え入れることができた。
「なんだか、複雑ですね。」
初流乃の使う部屋へ案内していたら、彼は一言そう零した。真意を聞こうとすると、すみません、と謝罪した後、
「あなたはみょうじさんなのに、ここは空条さんの家だし、あなたの子供は花京院さんだし…それに、先程の女性は明らかに日本人の血が入っていないのに聖子さんだし。…ちょっと混乱します。」
そう言われてみれば確かに。初流乃は昨日今日でたくさんの人と挨拶を交わしている。ここにジョセフさんも加わっていたらまた大変な事になっていただろう。
「ふふ、聖子さんは本当は空条ホリィっていうのよ。聖子さんって呼ばれたいっていうから、私はそう呼んでるの。私の親代わりになってくれててね。典親(ノリチカ)は、彼のご両親に頼んで、彼から苗字をもらったの。」
簡単にだが説明をすると、ありがとうございます、と感謝を述べたが少し考え込むような仕草を見せた。チラリと私を見るのでどうしたのかと聞くとなんでもないです、といつもの顔へと戻った。一体どうしたのか。なんとなくだが、言っても話してはくれなさそうだ。
「初流乃、荷物それだけ?杜王町に行ったら買い物しないとね。」
全くあの女…。2年も預けるというのに小さなバッグ1つとはどうなってる!ちゃんと2年後に引き取りにくるんだろうな?と少し心配である。
「初流乃くーん!一緒に遊ぼー!」
廊下から典親のかわいらしい声が聞こえてきて、初流乃と共に顔を出すと典親と典明が揃って歩いてきたところだった。正面から見ると本当にそっくりで、典明はかっこよくて輝いて見えるし典親もかわいすぎて輝いている。眩しい。
「行こう、初流乃。」と手を伸ばすとおずおずと乗せられる手。予想はしていたが母親は母親らしい事をしてこなかったらしい。ぎこちなく握った手をぎゅ、と繋いで2人の元へ連れていくと「僕も!」と典親が初流乃の反対の手を取ったので絵面がキラキラすぎて眩しすぎる。「今日は何して遊ぼうか?」という典明の優しい笑顔も眩しすぎて、私はもう失明寸前なのだが。