第2部 杜王町の殺人鬼
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ガシャァァアン!!
「康一!」
病院に着いたが、駐車場へ停めてゆっくり歩いている暇はなく、正面からガラスを突き破って病院内へ飛び込んだ。受付には康一くんがおり、敵の名前と病室を口にした。名前は噴上裕也。病室は525号室。
「典明!」
ハイエロファントのエメラルドスプラッシュでエレベーターのボタンを押すと、ちょうど1階にあったらしく扉が開いたのでバイクをドリフト停車して乗り込んで"閉"ボタンを押した。しかし閉まるのが遅く、このままでは追いつかれてしまう。クレイジー・ダイヤモンドが無理やりドアを閉めるが、外側からドアをこじ開けようとするので私もドアを閉じるのを手伝った。やがて上に上がっていくエレベーターに、手を離して一息つくが、典明が「換気口を通って登ってきてる。」と言うので今度はため息がでた。
「525号室はエレベーターを降りて右だ。だが、5メートルほど先に換気口がある。降りたらまず、エメラルドスプラッシュで牽制しよう。」
典明の作戦に、私達は静かに頷いた。エレベーター上のモニターが5階を示し、そしてドアが開かれた。
「エメラルドスプラッシュ!」
ハイエロファントのエメラルドスプラッシュが発動したのを確認して、3人揃ってドアから飛び出す。仗助くんを先に行かせたが、敵スタンドは未だ仗助くんだけを追っている。
「数が多いなぁ!もう!」
ダメージがほぼないのか、殴った先からまた向かってくる足達。ラッシュが得意ではない私にとって、この戦いは少々不利である。典明もエメラルドスプラッシュを放っているが、やはり大したダメージは無いようだ。
「ッ、仗助!」
1匹取りこぼした。もうバイクではないので、すぐに追いつかれてしまい、仗助がスタンド攻撃を食らってしまった。目を離した隙に更に2匹、仗助に向かっていってしまった。
「うッ…!」
「なまえ!!」
仗助に迫っていこうとする敵スタンドの前に体を滑り込ませると、私もスタンド攻撃を食らってしまったらしい。
だが、くい込んだ際に衝撃があっただけで、少々いつもより体が重いくらいだ。2匹、3匹とくっついてくるが、やはり少し疲れるくらい。なるほど、これは…。
「典明、私、元気だよ。だから、私が行く。」
恐らく、私の自然治癒力と波紋の呼吸のおかげだ。敵スタンドが養分を吸うよりも早く、回復しようとしているのだ。仗助に向かう足を全て受け止め続けていると、段々と体が重くなってきてはいるが…まだ、全然歩ける。
「仗助。立てる?」
肩を貸してあげて立たせてあげると、仗助はギョッとした顔で私を見た。若干引いているような気がしなくもない。しかし…仗助は動けそうにない。一旦彼を典明に任せて、私は勢いよくドアを開けた。
中にいたのは、男1人と女3人。この男が、敵スタンド使いだ。
「女!?俺のハイウェイ・スターをそんなにくっつけて立ってられるなんて…!」
目的の男、噴上裕也は信じられないものを見るように私を見ている。周りの女達が何やら喚いているが、壁を少し破壊して黙らせた。仗助に直してもらう前提でやったのだ。
噴上裕也の胸倉を掴んでベッドへと座らせる。殴りやすい位置に顔を移動したのだ。
「露伴と仗助から奪った養分、ちゃんと返してもらうからね。」
グ、と握りしめた拳を噴上裕也の頬に思いきり叩き込むが、いつもよりパワー不足な気がしないでもない。奴はそのまま吹っ飛び、窓を突き破って下へと落ちていった。窓から下を確認すると、噴水へと落ちたらしく死んではいないようだ。トドメを刺そうかと思ったが、引っ付いているスタンドが消えたのでやっぱりやめた。
「はは、今日のなまえ、一段とかっこいいな。」
私の真後ろから典明の声が聞こえたかと思うと、私を挟んで窓枠に手をついて彼も下を見下ろしていたようで、顔がすぐ横にある。
「典明、ありがとう。典明の方がかっこいいよ、世界一。」
頬にキスをすると、彼はフッと笑って「ここじゃない。こっち。」と顔を近づけて、唇が重なった。典明。1日離れ離れだっただけなのに、1日どころか1ヶ月は離れていたような気分だ。体の向きを変えてぎゅ、と彼の腰に腕を回すと、典明の手も背中へと回された。
ちゅ、ちゅ、と何度もキスをしていたら、人の動く気配がしてハッとした。仗助だ。
「ごめん、仗助。あ、仗助くん。」
高校生には少しばかり刺激的だったのか、顔を真っ赤にさせて「別に良いっすよ…。」と視線を逸らしたので、ありがたく呼び捨てで呼ばせてもらう事にした。
「露伴を迎えに行かなきゃ…。その前にここの惨状も直してもらって…あぁ、港に置いてきた露伴のバイクも。仗助、動けそう?」
治癒の波紋を流すが、仗助のようにすぐに治るわけではないのだ。仗助のクレイジー・ダイヤモンドの能力が羨ましい。
「大丈夫ッス。行きましょう。」
部屋の中を直してもらっている時に気がついたが、取り巻きの女の子達は噴上裕也が窓から吹っ飛んで行った直後に病室を出ていったらしい。全然気が付かなかった。
バイクも直して、外に出てガラスを直す仗助が私とバイクを見てなにか言いたげにしているのに気がついた。
「なーに?私がバイク乗るのは意外?」
私でも分かっている。見た目が20歳そこそこの小娘がバイクを乗り回しているのなんて、違和感しかない。だけど、ちゃんと免許も持っているのだ。
「いや…それは勿論そうなんスけど…!それよりも、ドリフトのテクニックがすごすぎて…!今度教えてください!!」
目を輝かせてそう言う仗助は、かつての弟の姿を思い出させてとてもかわいく思えた。
「うん、いいよ。」
仗助はきっと乗りこなすだろう。それに、とても似合う。今回はイレギュラーだったが、免許を取ったら色々と教えてあげる事を約束した。
「露伴〜!」
港へ寄って露伴のバイクを回収して二ツ杜トンネルへ戻ると、露伴の傍らに承太郎がいるのが見えた。彼の耳に赤いピアスがついているのを見て、私も承太郎のピアスをつけている事を思い出した。
承太郎と目が合うと無言でピアスを外し始めたので、私も外して、お互い交換しあった。
「なまえが承太郎のピアスをつけてるの…妬けちゃうなぁ。」
そのセリフを楽しそうな笑顔で言うので、冗談なのか本気なのか分からなくて「ご、ごめん…。」と情けない声しか返せなかった。オロオロとしていたらやがて典明はフッと笑って私のおでこにキスをひとつ落とすので、からかわれたのだと気づいた。
「ハァ…露伴も起きたし、帰るぞ。」
承太郎の一声に辺りを見回すと、全員、私と典明を見て呆れた顔をしていたが、仗助の頬はほんのり赤くなっていてやっぱりかわいく思えた。
「じゃあね、仗助!さっきの約束、お願いね!」
バイクを無事に返して、私と典明も承太郎の車に乗って岸辺邸へと送ってもらい、承太郎と仗助と別れた。
去っていく車に手を振っていると、露伴が眉間に皺を寄せて「"仗助"だと?随分仲良くなったんだな。」と機嫌が悪くなってしまった。この2人、というか露伴はなぜ、そこまで仗助を嫌っているのか意味が分からない。
「というか、なんだ約束って。」
バイクを停めて玄関の鍵を回す露伴はますます不機嫌になっていく。彼の、機嫌の取り方が分からない。
「典明と、ゲームするって約束。仗助もゲーム好きなんだって!」
今まで知らなかったが、仗助はゲーム好きらしい。典明も下手な人とやるよりも、上手な人とやる方が楽しいだろうと思ってお願いしたのだ。明日学校が終わる頃に校門前で待ち合わせているので、典明は今からソワソワと嬉しそうだ。
「…花京院さんがそこまで喜ぶとは…何も言えないじゃあないか。」
「ふふ。典明、子供みたい。楽しみだね。」
子供扱いに怒るかと思ったのだが、珍しく優しい笑みを浮かべていて、なんだか胸が温かくなった。
「じゃあ、僕達は部屋にいるから。くれぐれも邪魔しないでくれよ。」
「えっ?」
家の中に入るなり典明は露伴にそれだけ告げて、私の背を押して歩き出した。後ろにいる露伴がため息をついたのが分かった。