第2部 杜王町の殺人鬼
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「…ねぇ。もう我慢しなくていいよね?」
「は?なにが?」
ジャンケン騒動の帰宅後、岸辺邸へ入って玄関のドアを閉めたところで、私は口を開いた。
朝起きてから今まで、ずっと気になっていて、恐らくだがチラチラと見てしまっていたと思う。
「露伴……なんて服着てるの!?というか、漫画家なのに鍛えてるの!?もう最高!あ、最高なのは典明の体だった!」
ずっと気になっていたのは、露伴のお腹。朝、おはようと顔を合わせた時、思わず二度見してしまったのだ。丈の短すぎる服から覗く、意外にも引き締まった筋肉。お臍から縦に伸びる線がとても美しい。
「なまえ。露伴みたいになってる。」
典明はそう言って笑っているが、露伴のようになってしまっても仕方がないだろう。先に用事を済ませないと!と、朝から今まで我慢してたのだ。
「ジムに行くのが趣味なんだ。花京院さんだって鍛えてただろう?」
「いや、僕はたまに筋トレしてたくらいだ。鍛えようと思って鍛えたわけじゃない。」
「待って、典明鍛えてたんじゃないの!?それであの体!!?」
初めて知った事実に、思わず典明の胸倉を掴んで揺らしてしまって、彼は驚いた顔で私を見ていた。
「ねぇ露伴!典明の体見て!私が描いたのよりすごいんだから!あと露伴の体も見せて!お願い!!」
発言だけ聞けばものすごく変態だが、そう思われてもいい。目の前に最高の体が2人分あるのだ。テンションが上がってしまうのは仕方がないし、ものすごく見たい!
「い、いや、断る⋯!花京院さんと比べられたらたまったもんじゃない!」
「⋯僕は、別にいいけど。」
典明は私の描く"Tenmeiで、何度も体を描かれているため、既に見られているも同然なので特に気にならないようだが、露伴はあんな服を着ているくせに猛烈に拒否している。
「安心して、露伴。私、承太郎みたいにムキムキの体には興味ないから!」
典明の学ランのボタンを外しながら安心させようとそう言ったのだが、「いや、花京院さんも充分ムキムキだが?」と、露伴から返されて10年前の光景を思い出した。ジョセフさん、アブドゥルさん、ポルナレフ、そして承太郎。典明以外のメンバーは、みんながみんなゴリゴリに筋肉があって、体が大きかった。典明は、それを見て自分の体型を気にしていたのだ。自分も、相当な筋肉がついていたのに。
「あはは、確かに!充分ムキムキだ!でも好き!典明の体が1番好き!」
脱がしかけの典明の胸にぎゅ、と抱きついたら「ふ⋯、⋯変態。」と、彼は優しく指で頬を撫でられて心臓が一際大きく跳ねた。⋯あ、危ない、変な扉を開きそうだ。
「露伴。典明の体、露伴にも描いてほしい⋯。いい⋯?」
そして、あわよくば、ぜひ頂きたい。線画でもいい。お金は出す。
「描くのは別に構わんが、お代はいらない。なまえさん曰く、国宝級の肉体なんだろう?そんな大層なものを見せてくれるお礼に描こう。」
「⋯分かった。あと、お腹だけなら見てもいい⋯?」
懇願するように最後にお願いをしたら、少しの間を置いて彼はため息をついた。折れてくれた、了承の合図である。
「はぁ⋯⋯。ありがとう2人とも。私いま、とっても幸せだよ⋯。」
結局、私も鉛筆を手にして2人の体を思う存分描いている。2人のお腹を並べて描くと、形は全然違うのにどちらもいいお腹でとても不思議である。
「私、手当ての時に典明の体を見て、初めて筋肉の魅力に気付いたの。この美しい顔にこの鍛えられた体がくっついてるの、奇跡じゃない?って。」
「あぁ、分かるよ。承太郎さんじゃなく、花京院さんの顔だから尚さら良い。一見アンバランスなのが美しい。」
「!!露伴⋯!そう!そうなの⋯!!」
典明の美しさを本当に理解してもらえた事に思わず涙が出てきて、2人を驚かせてしまった。だって、今まで"Tenmei"を何十枚も描いてきて、顔が綺麗だとか、筋肉がすごいだとか、表面的な事しか言われた事がないのだ。私の表現力が足りないのもあるのかもしれないのだが、伝わってくれてとても嬉しいのだ。
「オ、オイオイ泣くなよ⋯ほら、できたぞ。」
「ありがとう、露伴⋯⋯宝物にする⋯。」
シャツを着た典明に涙を拭われながらだったが、露伴からもらった典明の絵を抱きしめた。やっぱり、私の見ている典明そのままだ。
「それで君の描いた絵だが⋯ふむ。僕達の体はこんなに違うのか。参考のために、貰ってもいいか?」
参考、とは、描き方の参考にするのか、鍛え方の参考にするのか。どちらなのかは分からないが、別に構わない。ここにいる間はまたいつでも描けるだろう。
「うん。参考になるか、分かんないけど。」
そもそも、露伴だって絵描きなのだ。私の描いた絵をわざわざ参考にして描いたりはしないだろう。そう思って気軽にあげたのだが、翌週のジャンプに私のあげたものと同じタッチで描かれている箇所があって、吸収力の速さにとても驚いたのだった。