第2部 杜王町の殺人鬼
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「エコーズ!act.2!」
康一くんがエコーズを呼ぶが、出てこない。なにかまずい事が起きているのかと、私達は体を離した。どうやら、石のように固くなって割れてしまったらしいのだ。だが、康一くんは無傷だ。一体、エコーズに何が起こっているのか。
「まさか…!エコーズact.3!!」
驚いた。スタンドは、進化するのかと。彼のエコーズは、姿が先程までとは異なっており、意思の疎通までできるようである。
小さい彼のスタンドは、守ってくれという命令に素早いパンチを何発も繰り出している。が、パワーはない。何をしようとしているのか静かに見守っていると、静かに吹き飛んだ。パワー負けしたと言っているが、この姿でパワー型のスタンドなわけがない。なにか、特殊な能力が…と思っていると、敵スタンドが急に地面にめり込んだ。何が起こっているのか分からないが、苦しそうに、だが、どんどん沈みこんでいく。
「これは…重くなっている、のか?」
典明の言う通り、敵スタンドがどんどん重くなり、進めなくなっているようだった。act.3の能力は、触れたら触れただけ、重さが増す能力のようだ。
ピシ、とヒビが入っていく敵スタンド。このまま、もう少しヒビが増えれば、私か承太郎が壊せるだろう。早く、早く回復しなければ…!
カン…という音に、一斉に視線を音のした方へ向ける。標識の隣に立つ男は、息を切らしてこちらを見ている。まさか、あの男は…。
息も絶え絶えに、一歩一歩近づいてくる男。左手からは血を流している。この男は…コイツは…!
「ボタンの付いた上着は置いてきたよ。あとで取りに行く。君を始末してからね。」
「康一くん!」
痛む体に鞭を打ち、康一くんと奴の間に体を滑り込ませて顔目掛けて足を振り上げた。首を折る勢いで放ったつもりのそれは、満身創痍で威力不足だったらしく、キラークイーンというスタンドに弾き飛ばされた。こっちが、本物のスタンド…!!
「なまえ!…ッ、エメラルドスプラッシュ!」
ハイエロファントが放つエメラルドスプラッシュも、いとも簡単に打ち返し、避けられてしまう。広い場所で戦うのは、結界を張らないと難しいのだ。
「康一くん!!」
康一くんも吹き飛ばされてしまい、act.3の能力が切れた。体が、動かない。治癒の波紋を流してはいるが、爆発を受けすぎた。治す箇所が多すぎる。DIOのような時を止めるだけの能力とは違い、この男のスタンド能力は、かなり厄介だ。プルプルと震える手をついて立ち上がろうとするが、その間にも奴は、康一くんを殴ったり、蹴ったりと好き放題している。悔しい。久々に感じた、敗北感だ。
「お前の名前は……吉良、吉影だ…。」
「なにっ!?」
康一くん…!彼は奴の、吉良吉影の財布を抜き取って、免許証で名前を確認していた。殴られながら、だ。典明も、隣で驚いている。
「こんな僕にさえ、アンタの名前が分かったんだ。アンタは大した奴じゃあないのさ。」
そう言った康一くんは、体は小さいのにとてもかっこよかった。それは私の中の、10年前の記憶を呼び起こさせた。典明が、最後にDIOのスタンド能力の謎を解いた時の記憶だ。あの時の記憶は、今まで思い出さないようにしてきた。思い出すと、悲しくて、辛くて、死にたくなると思ったからだ。だけどそれは間違いだった。だって康一くんと典明の、次へ繋げるための生き様は、私に今、勇気を与えてくれている。
ゆっくり息を吸い込み、ゆっくり息を吐いて、立ち上がった。DIOと戦った時は、骨を何本も折ったが動けていた。今も、動けるはずだ。
「お前はバカ丸出しだ!あの世でお前が死ぬのを楽しみに待っててやる!」
康一くんの煽るセリフに、吉良吉影も、私も動き出した。
ドドドドド、と拳と拳がぶつかり合う音が響く。承太郎のスタープラチナのような連続のパンチは得意ではないのだが、キラークイーンよりは、私の方が力は強い。その証拠に、徐々にではあるが、吉良吉影の体は後ろへと下がっている。
「クッ…なんだ、このパワーは…!」
吉良吉影は女の私を舐めていたのか、困惑した表情を浮かべている。
「なんだ、って…。愛のパワー?」
「エメラルドスプラッシュ!」
最後の一発、とばかりに力を込めて拳を放つと、典明もエメラルドスプラッシュを合わせて放ち、奴は吹き飛んで壁に激突して、そして落下した。まだ。まだ動ける。
「康一くん。君は精神的には、その男には勝っていたぞ。」
「!何ィッ!?」
スタープラチナと、キラークイーンの拳が交差する。
「承太郎!」
さっき抱き上げた時に、短い時間だったが全身から治癒の波紋を流したのだ。多少は効いていたようでホッとした。承太郎とスタープラチナがいれば、きっと吉良吉影を倒せる!
奴は傷だらけの承太郎を倒そうと、彼の方へ攻撃を仕掛けるが、そんな事させるか!と拳を振りかぶって飛び出す。スタープラチナも渾身の一撃を奴の顔面に放った。同時に攻撃したものだから、私の顔スレスレをスタープラチナの拳が通っていって冷や汗が出た。
「危ねぇな。急に飛び出して来るんじゃあねえぜ。なまえ。下がって休んでな。」
「えっ。私、まだ戦え…あれ…?」
承太郎の復活に安心したのか、急に立っているのがままならなくなってきて、後ろに来ていた典明の胸にポス、と倒れ込んだ。
「やれやれ…。僕のお姫様は、本当に無茶をする…。」
スッと当たり前のように典明は私を抱き上げるので、キュンとしたと同時に瞼が重くなってくる。あぁ…血を流しすぎたのか…。そういえば、指の先が少し痺れている。これじゃ、波紋の呼吸が使えないな…。
「…ごめんね。ありがとう、なまえ。」
意識を失う直前、そう言う典明の優しい声と、おでこに柔らかい感触がして、記憶はそこで途絶えた。ごめんね、なんて、謝らなくていいのに…と伝える事は、できなかった。