第2部 杜王町の殺人鬼
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記憶を共有して1週間。あれから私達は変わらず過ごしている。絵を描いたり、町に3人でスケッチに出掛けたりと、良好な関係を築けていると思う。
空いた時間があれば鈴美ちゃんのところに顔を出して雑談するのが日課になっていたので今日も向かったのだが…。いつも笑顔で姿を現す彼女の顔が、今日は暗い事に気がついた。なにか、あったのか。
「今日…空の上を、魂が…!」
「!」
彼女は以前、杜王町の殺人鬼に殺された魂はいつもここの上空を通っていくと言っていた。と言う事は、彼女の言葉が真実なのであれば、例の殺人鬼が、誰かを殺したという事になる。
すぐさま承太郎へ連絡すると、杜王町のスタンド使いを全員集合させるという事だったので、私の知っているスタンド使いは私が連れてくる事にして電話を切った。
「岸辺くん。私は仗助くん達を探して連れてくるから、鈴美ちゃんのそばにいてあげて。」
言い終わる前に空へと飛び、ぶどうヶ丘高校方面へと足を動かした。きっと、この時間はもう下校時間のはずだ。彼らの通学路であろう道を、空から虱潰しに探すしかない。
「なまえ。あっちに3人ともいるぞ。」
典明の指さす方向を見ると、仗助くん、億泰くん、康一くんが何やら神妙な面持ちで固まっているのが確認できた。
ストッ、と3人の目の前に着地すると、全員驚いていたが構わずに説明を始めた。
「仗助くん達。今すぐ私に一緒にきて。…殺人鬼が動いた。」
最低限の言葉で伝えると、仗助くんと億泰くんは顔を見合わせて眉間に皺を寄せている。が、待っている時間はない。
「典明は、ハイエロファントで康一くんをお願いね。」
言い終わる前には2人を片手で子供のように抱き上げて、来た時と同じく空へ飛び上がった。
「ちょっ、待っ、なまえさん!ッうぉぉおおお!!!」
あまりの高さ、速さに頭上で2人が叫んでいるのが聞こえた。チラリと後ろを確認すると典明が私にくっついているし、ハイエロファントと康一くんも少し遅れてはいたが着いてこれているようだ。目的地のオーソンが見えてきた。既に、承太郎は到着している。あの後すぐに来たのだろう。
「承太郎、お待たせ。3人とも連れてきたよ。」
「……なまえ。もう少し優しく連れてこれなかったのか?」
そういえば、さっきまで騒いでいた声が聞こえないなと2人を見ると、目を回していたり酔っていたり。急いでいたので気づかなかった。慌てて2人を下ろして謝罪すると「いや…大丈夫ッス…。貴重な体験、させてもらいました……。」と仗助くんは深呼吸しながら答えてくれた。やっぱり、仗助くん、めちゃめちゃいい子だ…!
「ああ、これで全員集まったな。」
数分後には承太郎が知っている限りのスタンド使いが集合した。典明とジョセフさんの抱いている赤ちゃん、億泰くんのお父さんも含めると、総勢14名。圧巻である。
仗助くんと億泰くんが、重ちーというお友達の写真を鈴美ちゃんへ手渡すと「間違いないわ。」と、聞きたくなかったであろう言葉が返ってきて、億泰くんが顔を背けてしまった。重ちーは2人の友達だったというので、胸が痛んだ。声をかけようか迷ったが、こんな時、なんと声をかけたらいいのか分からなかった。
億泰くんが輪から抜けると、みんな一言二言言葉を交わし、やがて解散した。
「岸辺くん。私も、今日はこのまま、承太郎と帰るよ。…次の予定は、また電話するね。」
しばらくは、描く時間はあまり取れないだろう。なんせ殺人鬼がとうとう、人を殺したのだ。それも恐らく、スタンド能力で。SPW財団の財団員として、この件は見過ごせない。今まで充分休ませてもらった。ここからは、きちんと仕事をしなくては。岸辺くんもそれを察して「あぁ。じゃあまた。」と背を向けて歩き出していった。私も典明も、背を向けて承太郎とジョセフさんの元へと合流した。
「なまえ。休暇は終わりだ。ここからは、働いてもらうぞ。」
「…もちろん。ありがと、承太郎。」
今まで自由にできていたのは、承太郎の好意だったのは分かっている。今日からは気を引き締めて、頭を切り替えて、動かなければ。この杜王町に来て久しぶりに、仕事モードへとスイッチを切り替えた。
「岸辺くん。昨日ぶり。早速で悪いんだけど、PC繋いでもいい?」
しばらく会わないかと思われたが、ホテルでは仕事をするスペースが確保できないため、またしても岸辺くん宅にやってきたのだ。もちろん、事前に許可は得ている。
「あぁ。向こうの部屋を使うといい。」
承太郎が仗助くんから預かったボタン。それは恐らく、重ちーが仗助くんに残した、唯一の手掛かり。杜王町周辺の服屋さんを調べ、それをPCで纏めようと、亀友デパートで今、買ってきたのだ。
承太郎と手分けして効率よく探すには、まずリストアップしなければいけないのだ。承太郎とPCを組み立てて接続し終えると「また後で。」と承太郎は帰っていく。先に駅前周辺の服屋さんを調査するようだ。
PCのセットアップは終わらせた。私は地図を片手に、杜王町の洋服屋さんのピックアップを開始した。