第5部 杜王町を離れるまで 後編
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「じゃあね〜仗助。朋子さんによろしくね。」
思う存分典明とゲームをやり尽くした仗助は、夕食にはまだ早い、夕方頃には帰っていった。帰って宿題をやらなくてはいけないらしく「持ってきたら教えたのに」と言ったら気まずそうに目を逸らされた。私だって勉強は自信があるのだが、そばに典明がいることによって、私は頭が悪そうに見える。と、露伴が言っていた。むかつく!「君、偏差値いくつだ?」と舐め腐った態度で聞いてくるので「70」と答えたら鼻で笑われて信じてもらえなかった。一体なぜなのか。本当なのに。
明日からは日常に戻るため早めの夕食、入浴を済ませてリビングで寛いでいると、不意に初流乃が「えっ」と短く声を上げた。その声は大きなものではなかったが焦ったような声色で、全員初流乃に視線を集めると、今まで隣で露伴とチェスをしていた初流乃の手にはなぜか花が納まっており、初流乃もそれを見つめていた。不思議に思って見回すと、チェスの駒がひとつ足りない。一体どこに…と考え、もしや、とひとつの可能性が思い浮かぶ。
「初流乃…チェスの駒、は…どこに…。」
「あの…えぇと…花、になりました…。」
なるほど、チェスの駒が花に。チラリと典明を見ると視線が交わって、どちらともなく一度頷いた。これは、スタンド能力だ。
「初流乃、大丈夫だ。一旦落ち着こう。これは恐らく、初流乃のスタンド能力。初流乃に危害はない。」
「!僕の、スタンド、ですか…?」
「大丈夫。私も典明も、露伴だっている。ほら、私の目を見て。」
ヨシヨシと頭を撫でて初流乃と視線を交えて、落ち着くようにと促した。突然の事で冷静さを失うのは無理もない。手を握っても大丈夫だろうかと恐る恐る触れると初流乃はビクッとその手を引いたが、なにも問題はないのでぎゅ、と少し強めにその手を握った。
「落ち着いたかい?」
「…はい…。」
初流乃の手からポロ、と落ちたのはチェスの駒。どうやら能力は解除されたらしく、内心ホッと胸を撫で下ろした。
「初流乃、スタンドを出してみて。能力が開花したのなら、きっとスタンドも具現化してるはず。」
「スタンドを出すって…一体どうやって…。」
「出ろと念じれば出るんじゃあないか?僕はそうだが。」
「……出ませんね。」
「はは、露伴もなまえも感覚派だからな。目を閉じて、自分のスタンドを想像するんだ。まだ見た事がないから、シルエットだけでもいい。それが、自分の体から現れるところをイメージすれば…お、出たな。」
さすが典明だ。具体的な指示を受けた初流乃はいとも簡単にスタンドを出す事ができた。典明がいてくれて、本当に良かった。
「これが、僕のスタンド…。」
「金色だね…。キラキラして眩し…。」
蛍光灯の明かりが反射して、全身がキラキラと輝いている初流乃のスタンド。特に暴走したりはしないようで、ようやく初流乃から手を離し、立ち上がった。
初流乃はゆっくりではあるが段階を踏み、着実に成長している。能力が発現した今、使いこなせるように練習をしなければいけないが…典明がいれば大丈夫だろう。
「…承太郎に会った事がきっかけかなぁ…?」
「スタンド能力の発現がか?たまたまじゃあないのか?」
「いや…。スタンド使いはスタンド使いと惹かれ合う。目に見えないものだけどそれは確かなもの、というのは自分の身で体験してると思うけど。…つまり、スタンドはスタンド同士に影響を及ぼすって事。初流乃が髪の色が変わったのも、典明や他のスタンドを見えるようになったのだって、ここでこうして暮らしていたから、かもね。」
私達が常にそばにいたから、きっと影響を受けたのだろう。それも3人もいたのだ。元々能力に目覚める可能性はあったかもしれないが、私達がそれを早めた可能性があるのだ。まだ13歳の初流乃には申し訳ないが、能力の開花は早い方がいい。未来に何が起こるのかなんて、分からないのだから。
「その力が制御できるようになるまで、学校はお休みかなぁ…。典明、初流乃の事、お願いね?」
「あぁ。大丈夫、きっとすぐにできるようになる。」
典明は優しい笑顔で、ハイエロファントで初流乃の頭を撫でた。スタンドを出すのだって、典明の指示を受けてすぐにできたのだ。制御くらいなら、本当にすぐにできてしまうだろう。
「はい…。よろしくお願いします、花京院先生?」
「!……初流乃…羨ましい…っ!!」
典明の生徒だなんて…私も典明の授業を受けたい!ぜひとも眼鏡をかけて頂いて、私も典明を"先生"と呼びたい。好き!絶対かっこいい!
「おいおい、僕じゃあ不満か?なまえさん。」
「上から目線で人を見下してくる先生より、かっこよくて優しくていい匂いがする先生の方がいいに決まってるでしょ!!典明〜、私にもなにか教えて〜。」
「ははっ、僕が君に教えられるものなんて、ほとんどないだろう?」
「私も典明を先生って呼びたい!うーんと…ゲームは前に教えてもらったから…、人の心の読み方とか?」
私の心をすぐに読む事ができる彼なら、他の人の心も読めているのではないだろうか。もしできるのなら、もう少し人付き合いが上手になる気がする。
「君は花京院さんに落ち着き方を教えてもらった方がいいんじゃあないか?」
「む…。露伴は典明に、女の子の扱い方を教えてもらった方がいいよ。あと、気遣いとか気配りとか。」
なんなら初流乃が先生でもいい。「この僕に気遣いや気配りなんか、不要だね!」と声高らかに言っているが、そもそもその上から目線なところを直した方がいい。