第4部 杜王町を離れるまで 前編
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「する事がないなら、いくつか質問をしてもいいか?」
和やかな空気で会話が途切れた頃、露伴は改まってそう口にした。特に何も考えずに「いいよ」と許可したが、これが意外と面倒くさかった。露伴の探究心が、私の想像を超えてきたのだ。
「まず、なまえさんの事だが。君のタイプって、確か王子様みたいな人、だったか?それは具体的にどんな奴だ。花京院さんみたいな人、って答えはなしだぜ。」
「えぇと…紳士的で優しくて、姿勢も良くて仕草が優雅で…なんか、いい匂いがする人。」
「…それ、花京院さんに寄せてないか?花京院さん以外で、誰か王子様みたいな、君のタイプの奴はいないのか?」
別に寄せてはいないのだが。それはそれとして、続いた質問への返答として、すぐさま頭に浮かんだ人がいる。
「未起隆かな。」
「ミキタカって…。おい、まさか仗助の連れのアイツの事か?相手は高校生だぞ?」
「タイプを聞かれたから答えただけじゃん!未起隆がタイプなのと付き合うのは別だし、そもそも高校生じゃなく宇宙人だよ。」
「宇宙人…?君、本気で言ってる、んだろうなぁ…。いやでも、ありえなくはないのか?今度家に呼んでヘブンズ・ドアで「ダメです!私が許しません!」
全く、油断も隙もない。誰彼構わずヘブンズ・ドアで覗くのが減ってきたと思ったらこれだ。その相手が敵であればなんら問題ないが、相手は未起隆。私と、仗助、億泰の友達である。それに彼は普通の顔をして「いいですよ」と言いかねないので心配である。ダメと言われて唇を尖らせているが、絶対に許しません!
「…じゃあ次。君は小学生の頃、いじめられていて友達がいなかったな。そいつらの事、恨んでないんだろう?なぜだ。」
次にやってきた質問は、先ほどとはだいぶ毛色の違う質問で、若干思考を切り替えるのに時間を要した。
「…多分、露伴も同じなんじゃないかなって思うんだけど…、私に敵意を向ける人に対して、時間や労力を使いたくないっていうのが一番かな。恨むってきっとものすごい労力を使うし…そういうの、顔に出るって言うじゃない?それでこのかわいい顔が醜くなったら、嫌だなぁって。」
「…最後のはともかく、前半部分は同意だな。君、そういうとこ意外と大人だよな。」
「ねぇ、余計な言葉だらけじゃない?」
最後のはともかく、とか、意外と、とか。これでも26年生きてきてるんだから!
「次。なまえさんは、なぜ承太郎さんを好きにならなかった?記憶を読んだとしても、好きになった場合は書かれるが好きにならなかった場合は特に記載はないからな。」
「えぇ…承太郎?好きになる要素がない。」
「はぁ?強くて、顔が良いだろう。それに身長も高くて声もいい。」
「ガワだけ良くてもねぇ…?承太郎は優しいけど、私を甘やかしてくれる優しさじゃないし…。なにより、意思の疎通ができない。」
「ふはっ…!!」
それまでそばで黙って聞いていた典明が、耐えきれずにとうとう吹き出した。なにか面白い事を言った覚えはないが。
「昔の"怖いものなんかねーぜ!"って感じの承太郎は好きだったけど、今は大人しくなっちゃったし、つまんない。」
「酷い言いようだな。君…本当は承太郎さんの事嫌いなのか?」
「まさか!承太郎の言葉足らずなところが、歳を取ってシャレにならなくなってきてるなと思って。"口数が少なくてカッコイイ!"って、昔の承太郎だから許されてたとこあるからね。」
「いや、その言い方は、やっぱり嫌いだろ。」
「あっはは!どーだろ。」
私と承太郎は根本的な考え方が違う。昔はそれでも、考え方が違うという事は自分では思いつかないような意見が聞けるかもしれない、と思っていたが、いつしかそれも必要としなくなった。もしかしたら、これが自立したという事なのかもしれない。
「じゃあ…そうだな…。次は花京院さんにも質問してもいいか?」
「僕?答えたくない質問には答えないが、それでも良ければ。」
答えたくない質問には答えない。そう言い切る典明、好き!!
「花京院さんのタイプの人はどんな人なんだ?もちろん"なまえさんみたいな人"ってのはナシだ。」
「!」
典明のタイプ。私も知りたい。別にそれに合わせるというわけではないが、純粋にどんな子が好きなのか知りたい。思わずドキドキして典明の答えを待っていると優しい微笑みの典明と目が合って、それだけで心臓がぎゅー、と締め付けられる。
「僕は…いつも笑顔で周りの人を和ませるような、そばにいるとホッとするような、守ってあげたくなるような、そんな子が好きかな。」
うん?今、守ってあげたくなるような子って言った?典明はニコ、とこちらを見て微笑んでいるが、どういう顔をしていいか分からない。思わず視線をさ迷わせると気の毒そうな顔の露伴と目が合った。おいやめろ、そんな目でこっちを見るな!
「なまえ?どうかした?」
「…なんでもない。」
「……ふ。僕はなまえの事も、守ってあげたいと思ってるよ。」
「!」
ちょっと露伴!今の聞いた!?と目で訴えるとなぜか微妙な顔で視線を逸らされた。なんだその顔は。こっち、私の目を見なさい!
「もう…典明……好きッ!!」
「はは、おいで、なまえ。」
私がいつものように抱きくのを我慢するのを読んで腕を広げる典明に、一瞬の間を置いてから遠慮なく抱きついた。もう本当に…私の典明が最高すぎる!
「キャー!!露伴!私の典明が!最高の男すぎる!!」
「おい、ここホテルだぞ。あまり大声を出すな。あと普通にうるさい。」
「あぁダメだ…なまえがかわいすぎる…。このまま僕に溺れてくれればいいのに。」
「もう充分溺れてるだろう。待て。二人の世界に入るんじゃあない!帰ってからやれ!質問はまだ終わってないぞ!」