第4部 杜王町を離れるまで 前編
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夕食を外でとってシャワーを浴びて、今は再び椅子に座り資料作りへと戻っている。ルームサービスで甘いものを大量に頼んだおかげか頭が回り、もうすぐ23時だが問題なく終わりへと近づいている。一緒に典明が見てくれているのも大きい。彼は頭が良いから、あれやこれやと大事な事に気がついたり、私とは違う意見を出してくれたりと、たまにデスクワークをする際にとても助かっている。
「はぁー……。終わった〜〜〜!」
眼鏡を外して、椅子に座ったまま体を伸ばして、終了の合図だ。先ほどからちょうどいいタイミングで私の口におやつを入れていた典明がニコ、と微笑んで最後のスイーツを差し出すのを口に入れて、今度こそ本当に終わり!
「ふえぇぇ……、つかれた……。」
「おつかれ、なまえさん。」
ボフ、とベッドにダイブすると、そのまま体が溶けていくような感覚に見舞われた。労いの言葉をかける露伴を見ると相も変わらずスケッチブックを手にしていて、よく飽きないものだな、と感心した。
「なまえさん、花京院さんのピアスはどうしたんだ?なくしたわけじゃあないだろう?そんな事になったら、普段通りではいられないだろうし。」
「あぁ…徐倫に預けてきたの。明日も行くからね、って約束のために。」
「へぇ…それいいな。子供相手にも男前だな、なまえさんは。」
露伴はどんなものを描いただろうかと、腕だけベッドを跨いでスケッチブックを覗き込むとやっぱり私と典明が描かれていた。しかし先ほどとは違って私にも動きがあり、典明と顔を見合わせて笑っていたり、典明の手からおやつをもらっていたりと微笑ましい絵だった。
「君、本当に無防備だし、危機感がないよな。」
「えっ。」
スケッチブックを見ていたら突然スル、と頬を撫でられて、思わず露伴の方を見て固まってしまった。だって、露伴がこういう風に触れるなんて…。今のように優しく頬を撫でるのは、いつだって典明だったから。もしかして、典明と長く過ごして影響を受けたのだろうか?なんにしても、今のは嬉しかった。もう一回してほしくて露伴の手を取って自分の頬に当てると、なぜだか露伴は微妙な表情を浮かべていて。
「今の…もう一回してよ。」
「…いま僕が言った事、理解してないだろ。」
言葉にして伝えると、むにむにと頬を揉まれて地味に痛い。
「典明と露伴相手に、危機感とかいる?」
「いや…君にそれを期待するのはもう諦めるよ。むしろ諦めていたんだった。忘れてたぜ。」
「それで、もう一回してくれる?」
なおも食い下がる私を見て諦めたようにため息をつき、指で頬を何往復か撫でて。その手が温かくて、露伴の表情も次第に優しくなっていって、なんだか気持ちいいというよりも、心地いい。
「猫だ。」「猫だな。」
2人が声を揃えて言うのを聞きながら、閉じていた目を開けるといつの間にか典明も露伴の隣に移動していて、一緒になって撫でてくれていたので嬉しくて心臓がきゅ、となった。
「ふふ…、幸せ。2人で甘やかして〜〜。」
眠いのと暖かいのも合わさって、このまま溶けてしまいそうだ。ベッドから降りて並んだ2人の足に身を預けると、露伴の息を呑む音が聞こえた気がした。
下から見上げる2人はかわいいしかっこいいし、私は理想が高いだけじゃなく欲張りだなぁと思った。
「ん〜〜好き。2人とも好き。」
「なまえ。かわいい…甘えん坊で、本当にかわいいね、なまえ…。」
「えへ、典明がそう言うなら、もっと甘えちゃう!そうだ!2人とも、立って。」
思いついた事を実行しようと、2人を立たせてベッドを移動させて、くっつけた。それなりの重さがあったが、私にかかれば朝飯前だ。
「典明〜!甘やかして!かわいがって!」
「うわっ、なまえ!」
典明に抱きついた勢いそのままにベッドへ倒れ込むと、典明の上にのしかかってしまって少しばかり申し訳ないが、これはチャンスだ。
「典明の胸筋…。」
「しまった…。」
典明の体で一番好きな部位が目の前に。それもベッドの上に転がっているなんて…!
「露伴、逃がさないからな。」
「は…、っ!?花京院さ…!」
「いたっ…!」
ドサッ、と音を立てて私の上に落ちてきたのは露伴の体。視界の端にハイエロファントの緑色が見えたので、触手で引っ張ったらしい。典明は私と露伴を乗せて、重くはないだろうか?
「典明、重くない?」
「あぁ、さすがに重い。2人とも、避けてくれ。」
「自分が巻き込んでおいて、それはないんじゃあないのか、花京院さん。」
露伴は私と典明の上から避ける気はないらしく、それどころか露伴の手は典明の体に触れていた。まさか…!と思い露伴を見ると腕の一部が本になっており、ヘブンズ・ドアを使って触れられるようにしたらしかった。
「待て、露伴。今はなまえをかわいがる時間だろう?何しようとしてる。」
「花京院さんが乱れたら、なまえさんが喜ぶんじゃあないかと思ってね。あぁでも、やめておくよ。コレに締められるのはヤバそうだ。」
コレ、とはハイエロファントの触手の事だろうか?露伴は私の後ろにいるので、何が起こっているのか全く分からない。結局露伴は横へ避けて、肘をついて体を横たえた。その隣で私は典明に未だ馬乗りで、なんだか昨日の行為を思い出させて恥ずかしくなった。
「はぁ…。… なまえ、おいで。よしよし。」
典明が優しく頭を撫でてくれるが、心臓の鼓動はなぜだか早まっていく一方だ。
「典明…キス、してもいい…?」
「…うん。なまえがしてくれる?」
典明からの優しいお願い。だけどその瞳には圧があって、それに従いゆっくりと顔を近づけるとやがて瞳が長い睫毛に隠された。触れ合った唇からじんわりと熱が伝わってきて、それには好きだとかかわいいだとかそういう想いが込められているんだろうなと思ったら愛おしくて、なかなか唇を離せそうにない。
サラ、と典明の顔の横に置いた手に典明のしっぽが流れてきて、それすらも愛おしくて咄嗟にその束ごと頭を掴んでしまった。あぁ、髪型が崩れちゃうかもと思ったがキスが気持ちよくて、体がいうことをきかない。