第4部 杜王町を離れるまで 前編
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昨日、あの後すぐに酔いは醒めて、寝る前にシャワーを浴びてから布団に入った。先に寝ていたはずの露伴が起きたらくっついて眠っていて驚いたが、どうやら本人にも自覚がないらしく自分でも驚いていた。
「おはよう、初流乃。昨日はごめんね。なにもなかった?」
布団を畳む音で目を覚ました初流乃に、昨日の件を謝罪すると横になったまま眠たげな顔で「…おはようございます。はい、大丈夫でしたよ。」とはにかむので天使かと思った。「初流乃お前…。本当に神々しい顔だな。」と露伴までもが眩しがっている。これは、ピンクダークの少年に初流乃をモデルにしたキャラクターが出る日も近いかもしれない。
「聖子さん。2週間、お世話になりました!これ、典親の春休みに2人で来てね。承太郎も、多分来られると思うから。」
「承太郎さんも来るの!?楽しみ!」
「3人で描いた絵があるのよね?楽しみだわ!」
帰り支度を済ませ、聖子さんに個展のチケットを渡すと2人とも喜んでくれた。承太郎は来られるか分からないが、来てくれそうな気がしている。
「聖子さん。結婚式、7月にしようと思ってるんです。…貞夫さん、来られますかね?」
「7月ね。多分大丈夫じゃないかしら?いつ決まっても良いように、先の予定は入れてないって言ってたわよ。」
「えっ!?そんな、もっと早く伝えれば良かった…!」
聖子さんは「気にしないで」と笑顔を浮かべているが、貞夫さんは世界的なミュージシャンなのだ。1年後や2年後の予定だって、入っていてもおかしくはないのに!
「あの、私がめちゃめちゃ謝罪していたと、お伝えください。ごめんなさい。」
「もう…!気にしなくていいのに!ちなみに、予定を入れてないから、もしかしたら個展にも行けるかもしれないわよ?」
「うっ…!き、来てほしいです…!!」
本当に申し訳なくなってきた…!鞄からチケットをもう1枚取り出して、テーブルの上に重ねて置いた。ついでに、フライヤーも数枚。
「じゃあ、聖子さん、典親。次は個展で。いってきます。」
「お世話になりました。また。」
「お邪魔しました。」
各々挨拶を済ませて、いってらっしゃいのキスも忘れずに、イギーにもたくさんヨシヨシをして、空条邸をあとにした。この休暇は随分ゆっくりできた。ような気がするが、まだやらなくてはいけない事が残っている。まずは、アメリカ行きの件だ…!
「あれ?なまえさん達じゃないスか。」
昼過ぎに杜王町の駅に到着しバスを待っているとタイミング良く仗助と億泰が通りがかった。露伴もいるのでいつものように口論が始まってしまい、とてもやかましい。
「…ねぇ、仗助にちょっと相談があるんだけど…私とデートしない?」
「なにィ!?仗助と!?」
仗助に声をかけたはずだが、声を上げたのは露伴。仗助の事になると、露伴は本当にうるさい!
「露伴と初流乃は、帰ってお布団を干してほしいの。大丈夫。デートっていっても、典明も一緒だから。」
花京院さんをつれていくなら…と不満げではあったが一応納得してくれたので家の事は任せた。そして、億泰だが。
「億泰ごめんね。私の荷物、露伴の家に運んでほしいの。お礼に、これでアイスでも買って、初流乃と食べて待ってて。」
「おぅ。別にいいぜェ。…露伴がいなきゃ、もっと良かったんだけどなァ。」
億泰…!本当にいい子…!かわいい!頭をヨシヨシしたい衝動に駆られ、手を上げかけたところで、深呼吸して思いとどまった。なんだか、2週間の間大人とばかり過ごしていたせいか、子供達がかわいくて仕方がない。
「どーしたんスか、急に。相談って?」
露伴達と別れて、仗助は単刀直入に尋ねてくる。言うべきか言わないべきか、今更だが少し躊躇してしまう。
「その前に…。仗助、前に欲しい靴があるって言ってたよね?典明とテトリスした時。」
「!まさか、買ってくれるんスか!?」
「うん。近くに売ってるかな?買いに行こう。」
もう随分前の話だが、仗助はしっかり覚えていたらしい。「ッシャァア!」とガッツポーズまでして、本当に嬉しそうだ。
「たぶん亀友に行けばあるっスよ。あそこなんでもあるんで。」
「ふふ、なまえは太っ腹だし、仗助は甘え上手だな。」
「典明は、私の扱いが上手だしね。」
典明が「あれが欲しい」と言えば、私はすぐに買い与えるだろうと想像がつく。ゲーム以外で、言われたことはないが。
「あった!サイズもある!試着して…ピッタリっス!!」
「よし、レジに行こう。」
亀友に着いて僅か5分。光の速さで買い物が終了した。一応こっちはついでだったのだが、思っていたよりも早い。早すぎる。
「なんか飲もうか。」とフードコートでお茶を頼んだが、これも大した時間稼ぎにはならないだろう。もう、心を決めて話すか。
「仗助。高校生の君に、こんな事を頼むのはとても気が引けるんだけど…。」と前置きを話すと、仗助は飲み物を置いて聞く姿勢に入った。礼儀正しい、いい子だ。
「初流乃を数日間、仗助のうちで預かってくれないかな?」
「え?初流乃を…?どっか行くんスか?てか…露伴は?」
…ご尤もな質問だ。仗助の問いには典明が丁寧に説明を返しているが、私は頭を抱えた。初流乃は私が預かった子だ。それをさらに、人に預けるなんて。
「承太郎さんに、子供がいるんスか…!?」
「待って、そこからなの!?」
承太郎は康一くんだけでなく、仗助達の事もかわいがっていると思っていた。それに、雑談とかしないの…!?本当に、承太郎の事が分からない!
「とにかく、そういう状況なの。他に、頼める人がいなくて…。」
どのくらいアメリカに滞在するかも分からないので頼むのは気が引けるが…。
「別に、全然いいっスけど。お袋も、きっと反対はしねーっスよ。」
「本当に…!?何日かも、分からないんだよ?」
「ほんとほんと。初流乃いい奴だし、お袋とも仲良くできるっしょ。」
あっさりとOKをもらえて、安堵のため息とともに体の力が抜けた。本当に、良かった…!
「そうと決まれば、朋子さんに連絡しなきゃ…!あぁその前に、SPW財団と承太郎に連絡を…!」
「なまえ、落ち着いて。お茶を飲む時間くらいはある。」
パタパタと慌てる私を見る典明の瞳は優しくて、その瞳を見て私の心は落ち着いてまたため息が出た。
「ありがとう、仗助…。仗助が一緒にいてくれるなら、とても心強いよ…。」
「お易い御用っスよ。…なまえさんって、意外とちゃんとお母さんスね。」
「そう、かな…?そうだといいけど…。あ、ごめん。露伴からだ。」
プルルルル、と鳴り出した携帯電話。ディスプレイを見ると「岸辺露伴」と書かれていたので、2人に一言告げて電話に出ると、「なまえさん!初流乃が、いや、今すぐ帰ってきてくれ!」となにやら慌てた様子の露伴の声が耳に響いた。飲んでいたお茶をテーブルに置き「露伴、落ち着いて。初流乃に何かあったの?」と聞くと、数度深呼吸をした露伴が「初流乃が、急に金髪になった。」と。
ガタッ
「なまえ?初流乃がどうかしたのか?」
私が立ち上がったのを見て、典明も立ち上がり険しい顔をする。きっと私も、同じ顔をしている。
「仗助、今の話は一旦保留で。とにかく帰るから、早く出よう。」
少ない荷物を持って、すぐに歩き出す。典明への説明は、歩きながらだ。今は、すぐに初流乃の元へ行かなければ。
「帰るって…まさか飛んで帰るとか言わないっスよね?」
「何言ってんの?これが一番速いんだから。行くよ。」