受け継いだ、彼女
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「待って、徐倫…!っ、徐倫!」
「うっ…!!」
転がる骨を追いかけて走り出した徐倫。その手を掴もうと一歩踏み出したところで、徐倫の体から枝が伸び、芽が出て、蕾が膨らんできた。一瞬の事であった。
「ダイバーダウン!」
ドッ…!
アナスイのスタンド、ダイバーダウンが徐倫の体内に潜行する。が、アナスイは何かを理解したかのように、戸惑いの表情を浮かべ「早く引っこ抜け!」というFFの声に「引っこ抜くだとか…生えているという表現は、正しくない」と言い、スタンドを引っ込めた。
「肉体がこれに変化させられているのだ…。これをちぎりとっても良いものか…。徐倫、痛みは?」
「無いわ。…あたしはどうやら、あの骨に触れてしまったのね。…!」
「本当ね…。今ある植物を取っても、意味がないみたい…。」
徐倫の頬には、ピンク色の蕾。朝顔やネジバナのように捻れているが、サイズが私の知っているものに比べるとかなり大きい。それに近くで見てみると、合弁花類ではなく離弁花類ではないだろうか?なら、朝顔ではなさそうだが…そもそもこれは草本ではなく木本だし…。不思議な能力によってついた花だからと言われてしまえば元も子もないのだが、この花は何なのかと少し気になってしまった。露伴ならこの花の種類が分かるだろうかと考えたところで、徐倫の顔が近すぎる事に気がついた。私が近づいたのだが。これではまるで露伴みたいではないか…と思ったら典明が何か言いたげな笑みを浮かべているのが見えた。…絶対、典明もそう思ったに違いない。
「…こうなった以上、あたしから離れた方が良い。なまえも…アンタも、感染するかも。」
「徐倫…。…そうね。何か解決策が浮かぶまでは…。」
徐倫の判断は尤も。スッと徐倫から距離を取る私に対し、アナスイはむしろ徐倫に顔を近づけ……あろう事かパク、と顔に生えた蕾を口に含んでみせた。
ガッ、
「アナスイ…何をしているの?距離が近すぎるわ。今すぐ離れなさい。」
さすがに見過ごすことはできないと、額を掴みこれ以上の接近を阻止する。アナスイが徐倫を好きなのは別に構わないが、好きだからといって本人の許可なく近づいたり触れたりは許せない。そうされて嫌な思いをした記憶が、私にもあった。徐倫の気持ちが分からない以上、こういうのを許す事はできない。
「…これは植物だ…。それ以外の何物でもない。移管の中を血液ではなく葉緑素が流れている。だが、どっちみち何とかするさ。必ず…。」
「……アナスイ、知ってる?徐倫の初恋の相手は、典明なのよ?」
「なんだと…!?」
「なまえ…!?こんな時に、一体何を言っているの?」
「だから典明の事、少しは見習った方が良いんじゃない?自分の気持ちを押し付けるだけの男なんて、迷惑なだけよ。」
そう言うと、やがてアナスイは徐倫から距離を取った。これで少しは大人しくなってくれると有難いのだが。
メキ、メキ…、
「!徐倫。」
「…光合成…しているようだな。なまえ、君は何ともないのか?」
「ん、大丈夫みたい。」
日光に照らされた徐倫の体が突如として成長をし始め、アナスイによって日陰に入れられた事によりその成長は止まり、少しだけ萎んだ。どうやら陽の光に当たるとマズイらしい。
「万が一君が感染すると、マズイ気がするんだ。君は波紋の呼吸を使っているから、おそらくは他の人よりも成長が早いはず。仮説ではあるが、その可能性を視野に入れて動くんだぞ、なまえ。」
「うん、分かった。」
確かに典明の指摘は、一理ある。私の体は人とは違うゆえに、どう作用するか予測ができない。結果的に先ほど骨を拾わなかったのも、いい判断だった。
「とにかくあの骨は…絶対に手に入れなくては…。」
「だが、どうやって…!」
「あたしが拾う。もうなっているから。」
「……待って徐倫。陽の光に当たるのはマズイという結論に至ったでしょう?私が探すから、拾うにしたって、先に骨を見つけてからよ。」
典明に周囲の警戒をお願いして、一歩ずつ前へと進み出る。西陽が強いのも相まって、影の色も濃くなっている。先ほど骨の転がって行った方に歩を進めて…一度、足を止めた。
「…星…?」
木の幹のところ、何か透明なカプセルのようなものが見える。その中に、星の形がくっきりと浮かんでいる。私達の中で星の形の指すものとは、ジョースター一族。そして、痣。まさかね…と少し顔を近づけると、それはジョースター一族の首の痣のように見えてきて、中にある─いや、いるのは子供のようだと、嫌な予感が頭を過ぎる。
「ジョースター…一族……。」
「なまえ?どうかしたのか?」
なぜ。何がどうなっている?DIOの骨を追っていたのに、急に星型の痣を携えた子供が現れた。それも、何故か緑色の。これが意味するものは……考えたところで、分からない。分かるはずもない。私は承太郎から何も、聞かされてはいないのだから。承太郎ならばあるいは、分かったのかもしれないが。
「まさか…骨は、この中に…!?」
「なまえ!一度、それから離れるんだ。」
ハイエロファントに体を引かれる瞬間、中の赤ちゃんが少し動いた気がする。あの中には、ジョースター一族の血を引いた生き物がいる。それだけは、現状分かっている事だ。
「骨は…もう無い。おそらくあの骨を元に、新しい命が生まれている。…のだと、思う。あの木の幹に、赤ちゃんがいる。星型の痣のある、緑色の赤ちゃんが。」
「なんだって…!?まさか…敵の目的は、その赤ん坊?」
「!待つのよ、徐倫!」
ブチィ、と音を立て、徐倫が木の幹から卵のようなカプセルを引っこ抜く。確かに敵の目的があの赤ちゃんな以上、渡すわけにはいかないが…それにしたってなんの躊躇もなく触れるなんて…!!徐倫は承太郎の似なくていいところが似てしまった。
ドォンッ!ガラガラ…、
入口のある西側からは太陽の光が迫っている。ゆえに、東側から何としても出るしかない。壁を伝って通気孔から出ようとするみなを他所に、私がする事はひとつ。この壁を破壊して、外に出る事だけだ。しかしここは刑務所の、それもウルトラセキュリティ懲罰房。そう簡単には壁は壊せないらしい。1回拳を叩き込んだだけでは、外の景色は拝めなかった。ならどうするか。壊せるまで、殴り続ければいい。
承太郎は過去、連続のパンチでトラックを潰していた。なら、私にもできるはずだ。
「楽しそうだな、なまえ。」
「うん。だって、そのうち穴が開きそうだから。」
「さすがはなまえ…。かわいいなぁ。」
「あ、ほら!開いたよ!」
ドゴッ、という鈍い音のあと、ボコ、と最後の破片が下へと落ちた。中々に頑丈な壁ではあったが、無事に外の景色を見る事が叶った。あとはここから出て、あわよくばこの緑色の赤ちゃんをSPW財団へ持ち帰られれば良いのだが…。いやまずは、生き延びるのが最優先だ。何をすればいいのか全く分からないが、とりあえず死ななければ、あとでなんとでもなるのだから。