答え合わせをしよう
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「──という事なんだけど、どうかな?」
「……分かった。やってみる…!」
承太郎との話し合いの中で、僕が彼女を抱えてハイエロファントで空を飛ぶのはどうかという案が出た。もちろん僕は反対したのだが承太郎と仗助、そしてジョースターさんも同席の元「万全の体制で行うならばどうだ」とまるで事前に返答を用意していたかのようなスピードで畳み掛けるので「…彼女の許可を得てからだ。なまえちゃんが躊躇するようなら、やらないからな」と釘を指した。だというのに彼女はやはり真面目な性格のため怖さを押し殺しながら「やってみる」と言ってのけた。きっとまだ怖いだろうにと心配する気持ちはあるが、彼女がやると言ったのならば、僕は協力してあげたい。彼女は今、恐怖を克服しようとしているのだから。電話越しの彼女の声は少し震えてはいたが、その声色は何かを覚悟したかのような気迫が感じられた。
「大丈夫。僕は君ならできるって信じてるよ。僕だけじゃあなく、承太郎もそうだ。じゃなきゃ、こんな荒業をそもそも提案なんてしないからな。」
「そうなの?」
「うん。この前みたいに、もう一度僕を信じてくれないか?」
万が一信じてもらえないのなら、露伴のヘブンズドアを行使して読んでもらっても構わないと思うほどには、僕は心から、彼女が恐怖を克服できると信じている。
「うん…。信じる。」
小さい声ではあったが、彼女は僕を信じると、確かに言ってくれた。声を聞いただけで分かる、眉を少し下げて弱々しく笑ったであろうその声で紡がれた言葉は、僕を舞い上がらせるには充分だった。
余計な事は言わぬようにと日時、待ち合わせ場所など最低限の会話をし、最後にお互い「ありがとう」とお礼を言い合ってからようやく、通話を切った。
「はぁー……、かわいすぎる…。」
「おい。みょうじは受け入れたんだな?」
「あぁ、明後日の9時、いつもの森に集合だ。ちょっと幸せを噛み締めたいから、詳細は後にしてくれないか?」
「…やれやれだぜ…。」
今はなまえちゃんの言った、僕を信じるという言葉を、思う存分噛み締めていたい。
「じゃあなまえちゃん。僕に任せてくれるかい?」
「……はい。」
2日後の午前9時。約束の時間、場所へと全員が集合し、3人が見守る真ん中で僕となまえちゃんは向かい合った。少し緊張した様子の彼女の肩に手を置くと彼女の視線は僕の目を見て、眉を下げて微笑んだ。はぁ…かわいい。
「典くん、よろしくお願いします。…っ、わ…!」
腰を折って彼女を抱き上げると思いのほか軽くて、そして距離が近くて、彼女の腕が首へと回っていて、逆に今は僕の方がドキドキしているのではないかと思えてくる。
「あっ、あの、そういう体勢だと思わなくて…!あの、重くない…?」
「全然。むしろ軽くて驚いてるよ。君、ちゃんと食べてるのか?…いや、その話はあとでしよう。早速だけど、心の準備はできてるかい?」
「……うん。大丈夫。」
「ふ…。僕は絶対にこの手を離さない。だから君も、絶対に離さないでくれ。…さ、行くよ。」
「え…、あ、わっ…!」
ハイエロファントの触脚を伸ばして、巻きとって、この間とは違ってテンポよく同じ動作をして木々の間を駆け抜ける。最初は僕の首に回した腕にはギュッと力が入っていたのだが、身動ぎしたと思ったらその力が僅かに緩くなった。
「典、くん…。」
「うん。なんだい?」
「典くんと一緒なら、怖くない、かも…。」
「!…、それは良かった…。じゃあ、1回とびきり高く飛んでみようか。ちゃんと捕まって。」
もう一度腕の力が強まったのを確認してから、比較的高い木を軸に上へと飛び上がる。視線の先には住宅地の屋根が並んでいるのが見えて、遠くの方には杜王グランドホテルまで見渡せる。
「すごい…鳥になったみたい…!典くん、すごい!」
「ははっ、今から君も、できるようになるよ。…ここから落ちるから、気をつけて。」
上がったあとは、落ちる。少しの浮遊感のあと体は下へと落ちて、また上へと上がる。落ちる時はまだ少し怖いようだが、繰り返していくうちに完全に肩の力は抜け、ほぼ克服したように見える。
スピードを落として、木の間に張り巡らせた触脚にゆっくりと着地して、彼女を見る。
やはり僕の予想通りその顔からは恐怖の色は消え失せ、いつもの明るい笑顔が戻っていた。
「典くん、本当にすごい!それに、かっこよかった!」
「…それは今、関係あるかい?」
「ふふ、ないかも。でも本当に、かっこよかったの。典くん、ありがとう。」
「うん。…よく頑張ったね。」
「?私が頑張るのは、これからだよ。」
「恐怖に立ち向かうなんて事、そうそうできるものじゃあない。できるできない関係なしに、君は勇気を出したんだ。それは、誇れる事だよ。」
「…そっか。…ねぇ典くん、もう1回、してくれない?」
「!…うん、いいよ。」
危ない危ない。危うくキスをしてしまうところだった。
元々あざとくてかわいらしい彼女だが、謝罪を受け入れてもらってからというもの、彼女のあまりのかわいさや純粋さに僕の方のストッパーが緩くなってきている自覚がある。というより、ますますかわいい気がする。本当、愛おしい。
「……承太郎さん。あの2人全然降りて来ねーっスけど、帰っていいっスか?」
「…そうだな。放っておいても良さそうだ。帰るぜ、ジジイ。」
「ん?あぁ…そうするかのォ。」
気づいた頃には3人とも帰ってしまっていて、万が一彼女が怪我をしたらどうするんだと思ったが2人きりの時間の邪魔をされなくて良かったとすぐに思い直した。だって、僕は絶対に、もう彼女に怪我をさせるような事はしないのだから。