答え合わせをしよう
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
彼女との特訓も4日目。早くも成果が出ている。
この前は風の刃を飛ばす技、名付けて『大鎌』が完成したところで、僕は次に彼女に必要な風を使った技のようなものを考えた。
「なまえちゃん。前に君は、高いところが怖いと言っていたね。」
先日話を聞いた時、彼女は「宙に浮けたら」と言っていた。想像できる事は、大抵できるのがスタンドというもの。あとは彼女の恐怖心さえなくなれば、絶対にできるようになるはずだ。
「それは、きっと僕のせいだ。だから、僕がその君の恐怖心を取り除く。…のを、手伝うよ。」
「……、…ありがとう…典くん。」
一度開きかけてそのまま閉じた口はきっと、謝らないで、と言いたかったのだろう。それにその後に浮かべた笑顔はいつもに比べて弱々しく、不安なのだろうと思う。大丈夫。僕が絶対に、君を空に飛ばせてみせる。
「最初は少し怖いかもしれないけど…なまえちゃん、僕を信じて、手を取ってくれるかい?」
スッと差し出した手は彼女の手の届くところで止めて、努めて優しい表情を心がけ、目を合わせる。珍しく自信なさげにさ迷った彼女の視線はやがて僕を見て、差し出された手へと移って。
そしてややあってから「典くんが、言うなら…」と未だ不安げではあったが確かに僕の手に、彼女の小さな手が重なった。
「…よく、勇気を出したね。」
「……本当は、まだ怖いの。でも典くんなら、何とかしてくれると、思って…。」
「うん…もう絶対に、君に怪我なんてさせないから。」
小さな手をぎゅっと握って、ハイエロファントを出し彼女にグルグルと触脚を巻き付ける。まるで獲物を縄で縛るように。
「えっ!…えっと、典くん…?」
「大丈夫。言っただろ。絶対に君に怪我なんてさせないって。怖かったら、手を握ったままでいいよ。」
「おい、花京院さん。まさか…、」
あぁ、そういえば途中から露伴の存在を忘れていた。だけど今は露伴よりも、目の前のなまえちゃんだ。
近くの木に触脚を伸ばして巻き取ると、グン、と触脚が張って体が浮き上がる。その分彼女の手や肩には力が入って、怖がっている事が分かった。
「なまえちゃん。あの時は本当にごめんね。でももう大丈夫。目を開けてごらん。よく晴れていて、空が綺麗だよ。」
いつの間にか固く閉じられた瞳はゆっくりと開かれ、不安な色を覗かせているのと視線がかち合った。
「…本当だ…空、…綺麗…。…っ!」
「は、っ!?」
不安そうな瞳が僕から背中越しの空に向けられ少し笑顔が見えたかと思ったら、急にその視線が下げられ一気に怯えた表情になり、ぎゅっと僕の胸へと顔を埋めた彼女。もちろんその腕はしっかりと落ちないようにと僕の背中へと回されていて……!?
突然の事に驚いて、嬉しさと事前に「下を見ないように」と伝えていなかった事への申し訳なさが自身の中をグルグルと駆け巡って、数秒間、僕の中の時間が止まったような感覚がした。
これは…、これは、彼女の背中に自身の腕を回しても許されるのだろうか…?正直いって今すぐ同じぐらいの力で彼女を抱き締め返したいが、これは果たして下心を抜きにしても許される行為なのか…。いやしかし、僕が自分の煩悩と戦いこうして悩んでいる間にも彼女は怯え続けているわけで。早く慰めてあげなければいけないのではないだろうか?
そう思ったらもう自分の中で『そうだ、これは彼女を安心させるための行為なんだ』と自分に言い訳をしつつも彼女の背中にそっと片腕を回して、もう片方は彼女の頬へとくっつけた。無意識に、彼女の頬の古傷を撫でていた。
「ごめん…怖かったね。何度でも言うけど、僕がいる限り絶対に落とさない。けど、今日はもうやめておこうか?」
「ちが、…ごめんね、典くん…。もう少し、こうしてて…。」
「いいんだよ、なまえちゃん。トラウマを克服するのは、そんな簡単な事じゃあないんだ。早く克服させてあげたいと、僕が急ぎすぎてしまったかもね。克服したいと一歩踏み出せただけで、君は充分、今日は成長したんだよ。」
「ん…、でも…典くんがいれば、大丈夫な気がするの…。今はまだちょっと、怖いけど…。」
「……ふ…、本当君はいつも、かわいい事を言うなぁ…。」
それに健気で、いじらしい。
怖がっている彼女には申し訳ないが、やっぱりなまえちゃんはかわいい。いつもの明るいあたたかな笑顔も魅力的だが、彼女にはこんな弱気な一面があって、その上いま、僕を頼ってくれているなんて。本当にかわいい。そんなの、愛おしく思うに決まっている。
「…典くん、揶揄ってるの…?私いま…、余裕がなくて…。」
「揶揄ってなんかないよ。…だけどそうだね。君からしたらこの状況で突然"かわいい"なんて言われても腹が立つよね。…ふふ、でもごめん。やっぱりかわいい。」
「……典くん…、それは典くんの、心の内にしまっておいて…。」
「はは、この前の僕の気持ちが分かったかい?」
再び開かれた瞳はまっすぐ僕を見て、至近距離で視線が交わった。あまりの近さにそのままキスしてしまおうかと思ったが彼女の遥か下の方に露伴の姿が見えて、グッと堪えたのを誰か褒めてほしい。本当に、愛おしい。できる事ならば僕がずっと、そばで守ってあげたい。
彼女はそれだけ、僕にとって大切な女の子だ。