答え合わせをしよう
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「典くん。ごめんね、待たせちゃった?何を着ていけばいいのか分からなくて、ギリギリになっちゃった。」
「大丈夫だよ。僕も少し前に着いたばかりなんだ。さ、行こうか。」
いつものラフな格好とは違って、恐らくお洒落をしてきてくれたんだろうなと分かるかわいらしいワンピースに身を包む彼女は、控えめに言ってもとてもかわいらしい。絵に書いたような女の子、というべきか。今日は改めて彼女に謝罪がしたくて呼び出したというのに、顔が緩んでやしないか心配だ。
「典くん、お酒飲む?」
「そうだね…少し飲もうかな。」
「じゃ、私も飲む!」
少し敷居の高い料亭の個室で、彼女と二人きり。静かに話をするにはちょうどいいし知り合いに会う確率も低いだろうと思ったのだが…個室で彼女と二人きりというシチュエーションは逆に落ち着かないものなのだと、今初めて知った。
「典くん、今日は誘ってくれてありがと。典くんとお話できる時間ができて、とっても嬉しい。」
「…うん…。僕も、君と話せて嬉しいよ。」
「……典くん、何か話したい事でもあるの?」
「そう、だね。こういう場所でしか話せない、大事な話。」
ちょうど運ばれてきたグラスを二つ、彼女が受け取り、静かにテーブルに置いた。この空気的に、話すのは食事の前らしい。
「……僕、ずっと君に、謝りたかったんだ。…いや、謝らなくてはならないと思っていたんだ。」
「謝る…って、何を…。」
「分かるだろ?君はそこまで、馬鹿じゃないはずだ。」
これから彼女に謝るというのに、酷い言い方だ。しかしこう言わなければ、彼女はきっと、シラを切るだろうと思ったからだ。
「あれは…、本当に気にしてなくて…。」
ほら、やっぱり分かってる。彼女は優しいから、僕の心の負担を和らげようとすると、最初から分かっていた。
「君が気にしてなくても、僕は気にしてる。僕は君に一生残る傷を付けたんだ。当たり前だろ?」
「…私が気にしてないから、典くんも気にしなくていいのに…。」
「そういう事を言ってるんじゃあないんだよ。」
想定した通り、彼女は僕に謝らせてはくれそうにない。だけどこっちだって、謝らなければ気が済まない。謝らなければ、次に進めないんだ。
「あの時…君、泣いていただろう?痛い痛いと、大きな声で涙を流していた。」
「それは…、そう、だね。」
「それを僕は、離れたところから眺めている事しかできなかった。君に怪我をさせた罪悪感で、君に近寄って謝る事も、慰める事もしなかった。挙句の果てに、それ以降君を突き放して遠ざけて…君はいつも、優しく僕に接してくれていたのに…!僕はそれが、どうしても許せない…!」
話しているうちに思わず、握った両手に力が入った。グ、と食いしばった奥歯からは、ギリ、と音が鳴った。僕はこの十数年の間、ずっと自分で自分が許せなかった。嫌いだった。それを変えるには、今このタイミングしかないのだ。
「スタンドが見えない人とは決して分かり合えないと…そう、思っていたんだ。いや、そう思い込もうとしたんだ。…君に怪我をさせた、あの時から。それなのに君は…!僕の知らない内にスタンド使いになってるじゃあないか!」
「!…えっと…、ごめんね…?」
「謝るんじゃあない!今謝罪をしているのは僕だ!」
理不尽極まりない。一旦頭を冷やそうとため息を吐いて、グラスの中身をグイ、と流し込んだ。
「あの時は、申し訳なかった。…君に許してくれとは言わない。ただ、この謝罪は受け入れてほしい。」
「…うん、分かった…。…ふふっ。」
この空気に相応しくない笑い声は、彼女から発されたもの。笑うところなどあっただろうかと顔を上げるとやっぱりかわいらしく目を細めて口に手を当てていて、なんだか楽しそうだ。
「ごめん。頑固なところも変わらないなぁって思って。典くんは典くんだね。」
彼女のその言葉を聞いて、ポロ、と目から一粒の涙が零れた。そしてそこで、さっき飲んだのはお酒であったと気がついた。おまけに謝罪も当初の予定とは少し違ったが無事やり遂げたという事で気が緩み、一粒だったはずの涙は堰を切ったように溢れてきて、何もかもが台無しだ。
「典くん…!?えっと、ハンカチ…!」
「君も…、ずっと昔から変わらないな…。あたたかくて、眩しくて…かわいいなぁ…。」
「えっ!そ、それは嬉しいけど…!典くん、お水飲もう?」
「…ありがとう、なまえちゃん。」
「!」
あぁ、つい昔のように名前で呼んでしまった。おまけに手まで握ってしまって…だけど不思議と気恥しさはなく、むしろよく馴染んでいる。顔を赤くさせて頬を抑えるなまえちゃんは、やっぱりとてもかわいらしい。
「……君ら、なんかあっただろ。」
次の特訓の日、またしても彼女についてきた露伴がじっと僕らを観察したのちそう口にした。じっと、といっても、ほんの数秒だ。ただ会って、挨拶を交わしただけ。だというのにこの岸辺露伴という男は、少しだけ変わった僕達の雰囲気に気がついたらしい。恐ろしい奴だ。
「別に何も。さ、今日も頑張ろう、なまえちゃん。」
「なまえ、ちゃん…!?なぁ、やっぱり何か「ふふ…内緒だよ、岸辺くん。」
「!…この僕相手に"内緒"だと…!?いいだろう、能力を使わずに突き止めてやる!」
露伴に要らぬ火をつけはしたが…今のなまえちゃん、かわいかったな…。