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▽岸辺露伴視点
「やぁなまえさん。君、花京院さんの前で泣いたんだって?」
「…そういう岸辺くんは、家が燃えたんだって?」
今日も今日とて昼食を摂るためれんが亭へ赴くと一人テラス席で食事をするなまえさんを見つけ、向かいの席へと腰掛ける。今日は承太郎さんがいないのを見るに、特訓とやらはお休みらしい。
こちらが承太郎さんから聞いた彼女の情報を面白おかしく問うと、向こうも同じように返してきた。しかし、それは僕のダメージにはならない。なぜなら、僕はそんな事、全く気にしていないからだ。対するなまえさんは──いつも笑顔を欠かさない彼女が、今回ばかりは浮かない顔でボーッと遠くを眺めている。よっぽど、昨日の事が堪えたらしい。
「まぁ、1回僕に読ませてみろよ。」
「ちょっ…!」
「ヘブンズ・ドアー!」といつかと同じように、彼女を本にする。へぇ…、なるほど。そういう事…。
『典くんが好き。だけど、典くんは私を嫌いじゃないと言いながら、恋人にはしてくれない。私じゃ、ダメなんだ。典くんも私の事が好きかもしれないって思ったのに。そんな聞き方したら、優しい典くんは"嫌いじゃない"としか答えられないよね。』
一言で言うと、面倒臭い、だ。
花京院さんとは違う、女特有の面倒くささがあって正直少し引いた。だって僕の知るなまえさんは、こんなにネチネチジメジメしていない。彼女はもっとカラッとしていて、晴れた日の陽だまりのような人のはずだ。
恋というものは、こんなにも人を変えてしまうのか。もしくは、元々彼女は僕の思っていたような性格ではなく、本当はこっちが本来の彼女なのか。そう思うと少し、興味が湧いてきた。
「もう少し遡って読ませてもらうぜ、なまえさん。」
以前自分が読まれる分には構わないと言っていたから、遠慮なく読ませてもらう事にしよう。
「……満足しましたか?岸辺露伴先生?」
数分後。ヘブンズ・ドアーを解除した直後、彼女は呆れたようにそう口にした。珍しく棘のある言い方だ。
それで、遡って読んだ彼女の記憶だが。
正直言って、つまらなかった。
そもそも僕が"本当はみょうじなまえという人間は面倒臭い人間だった方が面白い"と勝手に期待していたからだ。
彼女は本当に、僕のイメージ通りの太陽みたいな奴で、このネガティブな感情は一過性のものだった。ただそれだけ。まぁ、恋というものがこんなにも人を狂わせるというのを知られただけで、収穫はあるにはあったから良しとしよう。その感謝のしるしに、ページを閉じる前にひとつ、書き込ませてもらった。
「あぁ、満足したよ。ありがとう。」
「……岸辺くん。なんか…ヘブンズ・ドアーを使われる前と何となく感覚が違う気がするんだけど…、何か、書き込んだ?」
「気のせいだろ。じゃあ、僕はもう行くからな。」
伝票を持って、席を立つ。しかし彼女は未だ首を傾げて自分の手のひらを見つめていて、僕が伝票を取った事には気がついていないようだ。
僕が彼女に書き込んだのは"花京院さんにもう一度想いを伝える"だ。
花京院さんにも承太郎さんの頼みで書き込んだばかりだし、これで二人は大丈夫だろう。もしダメでも、それは僕のせいじゃあない。全く…なぜ僕が他人の恋愛の手助けなんかしなくちゃならないんだ。礼は弾んでもらうからな、承太郎さん。
─────────────────
露伴のヘブンズ・ドアーで何かを書き込まれてから、1日。何度承太郎に問い質しても決して口を割る事はなく、昨日の夜はお互い手が出る羽目になった。タイミング良く仗助が現れる…なんて事はなく、二人揃って傷だらけだ。僕が承太郎を殴る理由は充分すぎる程にあるが、承太郎が僕を殴る理由は無くないか?そう思ったら、また腹が立ってきた。
プルルルルル──
久しぶりに、僕の携帯が着信を告げる。
まさか承太郎じゃあないだろうな!とポケットから携帯を取り出しディスプレイを見ると驚く事に『なまえちゃん』と書かれていて、一瞬見間違いかと目を疑った。
しかし落ち着いて見てもやっぱり『なまえちゃん』という文字は確かに表示されていて、どうしようかと慌てている内に自身の指は勝手に通話ボタンを押してしまっていた。僕のバカ!!
「もしもし…典くん?」
こちらの様子を伺うように、電話の向こうの彼女は小さい声で僕を呼ぶ。あぁ、かわいいなぁ…なんて、今の状況から逃避するような事ばかりが頭に浮かぶ。
「もしもし…。」
出たからには返事をしなければなるまいと、とりあえずそれだけは返した。が、つい数日前に泣かせてしまって以降言葉を交わしていない上に突然かかってきた電話に、続けるべき言葉が分からない。本当は、彼女の声が聞けただけで嬉しいのに。そうこうしているうちに数秒の沈黙が流れ、やがて先に口を開いたのはなまえちゃんの方であった。
「えぇと…。典くんに会って話がしたいんだけど、いいかな…?」
「僕に、話…?」
「あ…忙しかったらごめんね。一応承太郎さんには、典くんが忙しくないか聞いたんだけど…。」
声に元気がない。いつもの彼女らしくない。そうさせてしまった原因は僕なのだが…ギュッと胸が締め付けられる。
「どういう…話かな…?」
「…それは…、今は言えない。お願い、典くん。」
縋るように、まるで最初で最後のお願いとでも言うように、絞り出した彼女のかわいらしい声に、僕の心はいとも簡単にぐらりと揺らいだ。本当、なまえちゃんには敵わない。
「分かった。いいよ。」
「!…ありがとう、典くん。」
彼女の声色が、少し柔らかくなったのが自身の耳を通して感じられた。これが、最後。これでこの話は、終わりにしよう。それで万が一彼女の話が僕に都合のいい話だったならその時は──
『僕の事はもう忘れてくれ』と、最初で最後のお願いをしよう。
「やぁなまえさん。君、花京院さんの前で泣いたんだって?」
「…そういう岸辺くんは、家が燃えたんだって?」
今日も今日とて昼食を摂るためれんが亭へ赴くと一人テラス席で食事をするなまえさんを見つけ、向かいの席へと腰掛ける。今日は承太郎さんがいないのを見るに、特訓とやらはお休みらしい。
こちらが承太郎さんから聞いた彼女の情報を面白おかしく問うと、向こうも同じように返してきた。しかし、それは僕のダメージにはならない。なぜなら、僕はそんな事、全く気にしていないからだ。対するなまえさんは──いつも笑顔を欠かさない彼女が、今回ばかりは浮かない顔でボーッと遠くを眺めている。よっぽど、昨日の事が堪えたらしい。
「まぁ、1回僕に読ませてみろよ。」
「ちょっ…!」
「ヘブンズ・ドアー!」といつかと同じように、彼女を本にする。へぇ…、なるほど。そういう事…。
『典くんが好き。だけど、典くんは私を嫌いじゃないと言いながら、恋人にはしてくれない。私じゃ、ダメなんだ。典くんも私の事が好きかもしれないって思ったのに。そんな聞き方したら、優しい典くんは"嫌いじゃない"としか答えられないよね。』
一言で言うと、面倒臭い、だ。
花京院さんとは違う、女特有の面倒くささがあって正直少し引いた。だって僕の知るなまえさんは、こんなにネチネチジメジメしていない。彼女はもっとカラッとしていて、晴れた日の陽だまりのような人のはずだ。
恋というものは、こんなにも人を変えてしまうのか。もしくは、元々彼女は僕の思っていたような性格ではなく、本当はこっちが本来の彼女なのか。そう思うと少し、興味が湧いてきた。
「もう少し遡って読ませてもらうぜ、なまえさん。」
以前自分が読まれる分には構わないと言っていたから、遠慮なく読ませてもらう事にしよう。
「……満足しましたか?岸辺露伴先生?」
数分後。ヘブンズ・ドアーを解除した直後、彼女は呆れたようにそう口にした。珍しく棘のある言い方だ。
それで、遡って読んだ彼女の記憶だが。
正直言って、つまらなかった。
そもそも僕が"本当はみょうじなまえという人間は面倒臭い人間だった方が面白い"と勝手に期待していたからだ。
彼女は本当に、僕のイメージ通りの太陽みたいな奴で、このネガティブな感情は一過性のものだった。ただそれだけ。まぁ、恋というものがこんなにも人を狂わせるというのを知られただけで、収穫はあるにはあったから良しとしよう。その感謝のしるしに、ページを閉じる前にひとつ、書き込ませてもらった。
「あぁ、満足したよ。ありがとう。」
「……岸辺くん。なんか…ヘブンズ・ドアーを使われる前と何となく感覚が違う気がするんだけど…、何か、書き込んだ?」
「気のせいだろ。じゃあ、僕はもう行くからな。」
伝票を持って、席を立つ。しかし彼女は未だ首を傾げて自分の手のひらを見つめていて、僕が伝票を取った事には気がついていないようだ。
僕が彼女に書き込んだのは"花京院さんにもう一度想いを伝える"だ。
花京院さんにも承太郎さんの頼みで書き込んだばかりだし、これで二人は大丈夫だろう。もしダメでも、それは僕のせいじゃあない。全く…なぜ僕が他人の恋愛の手助けなんかしなくちゃならないんだ。礼は弾んでもらうからな、承太郎さん。
─────────────────
露伴のヘブンズ・ドアーで何かを書き込まれてから、1日。何度承太郎に問い質しても決して口を割る事はなく、昨日の夜はお互い手が出る羽目になった。タイミング良く仗助が現れる…なんて事はなく、二人揃って傷だらけだ。僕が承太郎を殴る理由は充分すぎる程にあるが、承太郎が僕を殴る理由は無くないか?そう思ったら、また腹が立ってきた。
プルルルルル──
久しぶりに、僕の携帯が着信を告げる。
まさか承太郎じゃあないだろうな!とポケットから携帯を取り出しディスプレイを見ると驚く事に『なまえちゃん』と書かれていて、一瞬見間違いかと目を疑った。
しかし落ち着いて見てもやっぱり『なまえちゃん』という文字は確かに表示されていて、どうしようかと慌てている内に自身の指は勝手に通話ボタンを押してしまっていた。僕のバカ!!
「もしもし…典くん?」
こちらの様子を伺うように、電話の向こうの彼女は小さい声で僕を呼ぶ。あぁ、かわいいなぁ…なんて、今の状況から逃避するような事ばかりが頭に浮かぶ。
「もしもし…。」
出たからには返事をしなければなるまいと、とりあえずそれだけは返した。が、つい数日前に泣かせてしまって以降言葉を交わしていない上に突然かかってきた電話に、続けるべき言葉が分からない。本当は、彼女の声が聞けただけで嬉しいのに。そうこうしているうちに数秒の沈黙が流れ、やがて先に口を開いたのはなまえちゃんの方であった。
「えぇと…。典くんに会って話がしたいんだけど、いいかな…?」
「僕に、話…?」
「あ…忙しかったらごめんね。一応承太郎さんには、典くんが忙しくないか聞いたんだけど…。」
声に元気がない。いつもの彼女らしくない。そうさせてしまった原因は僕なのだが…ギュッと胸が締め付けられる。
「どういう…話かな…?」
「…それは…、今は言えない。お願い、典くん。」
縋るように、まるで最初で最後のお願いとでも言うように、絞り出した彼女のかわいらしい声に、僕の心はいとも簡単にぐらりと揺らいだ。本当、なまえちゃんには敵わない。
「分かった。いいよ。」
「!…ありがとう、典くん。」
彼女の声色が、少し柔らかくなったのが自身の耳を通して感じられた。これが、最後。これでこの話は、終わりにしよう。それで万が一彼女の話が僕に都合のいい話だったならその時は──
『僕の事はもう忘れてくれ』と、最初で最後のお願いをしよう。