答え合わせをしよう
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どれだけ車を走らせただろうか。数分の間車のエンジン音やウィンカーの音しか聞こえなかったのが、気がつくと少し様子のおかしいなまえちゃんの息遣いが聞こえてきてチラリと彼女の方を見ると、静かに前を向き涙を流していたので急ぎハザードランプを焚いて車を路肩に停車させた。もうあと僅かでなまえちゃんの自宅だが、気づいたからには停められずにはいられなかった。静かに肩を震わせ、眉間に皺を寄せ僕に気づかれないようにしていたその行動が、僕の胸を締め付ける。それでも、僕の口からは気の利いたセリフは出そうにない。
「ごめんね…、違うの。気にしないで…。」
未だ僕に気を遣って「気にするな」と主張する彼女はとても謙虚で、しかし謙虚すぎて、僕の中の罪悪感はどんどん大きくなっていく。
「…私…、ここから歩いて帰る。送ってくれてありがとう、典くん。」
少し乱暴に涙を拭って、続いてカチャ、とシートベルトを外す音。僕がそれを黙って眺めていると、気がつけば彼女は車のドアも開けていて、こちらをチラリと振り返ったのと目が合った。その睫毛は濡れていて目も赤くなっていて。僕は何も言えないし、ハンカチを渡す事すらできない。
「じゃあ…またね、典くん。」
バタン─と、無情にも閉められたドアの音が聞こえて、以降何の音も聞こえなくなった。
「っ、僕は…!…最低だッ…!!」
このまま何もかも投げ出して、消えてしまいたい。だというのに、承太郎に言われた『テメーは、何のために生き残ったんだ?』という言葉が、頭から離れなかった。
「…花京院…テメー…、今回ばかりはマジに、見損なったぜ。」
「…奇遇だな。僕もだよ。」
翌日。外出の用事があり承太郎と外に出なければならないため承太郎の部屋へと訪れ、顔を合わせた瞬間に言われたのが上記の台詞。一体誰からどう聞いたのかは知らないが、僕も全くの同意見であった。誰から、なんてなまえちゃんから聞いた以外にはないのだが、彼女が承太郎にどのように話したのかは全く想像もつかない。どうせ、承太郎がしつこくなまえちゃんを問い質したに違いない。
「女は優しく丁重に扱えと言っていたテメーが、聞いて呆れるな。」
「……彼女を前にすると、どうにもできないんだ。」
「ハァ……。詳細は、車内で聞かせてもらうぜ。」
昨日はどうやら、仗助達が学校近くで敵スタンド使いと自称宇宙人に会ったらしく、そのスタンド使いへの接触のため、また自称宇宙人とは何者なのかの調査のための外出だ。その行きの車内で昨日僕達の間に起こった事を話すと、承太郎は黙って頭を抱えた。少し腹立たしいが、それが正しい反応だ。
「…?承太郎、他にどこか寄るのか?」
敵スタンド使いとの接触を果たし、今後誰かに危害を加えるつもりはない事を確約させたあと、来た時とは別のルートに車を走らせている事に気がついた。先ほど「今日は自称宇宙人はいないようだな」と言っていたところで、探しに行くにしてもあてもないはずだ。
「あぁ…ちょっと、露伴先生のところにな…。…おい…、これは、何が起こってる?」
露伴の家?と思ったのもつかの間。何やら人集りができている家があるなと思ったらどうやらそこが岸辺露伴の家だったらしい。人集りの理由は一目瞭然。岸辺露伴の家が燃えているからであった。
幸い燃えているのは家の一部分で消火活動もしているが…まさか、スタンド攻撃の類いだろうか?と承太郎と二人、車の外へと飛び出した。
「あぁ、承太郎さんに花京院さんじゃあないか。」
「露伴!君、家はどうしたんだ?スタンド攻撃か?」
「いや。仗助の奴とチンチロで勝負をしていたんだが…クソッ!逃げられた。」
「はぁ…?」
よく分からないが、見たところ露伴には怪我もなくいつも通りで緊急性はないらしく、ホッと胸を撫で下ろした。しかし…一体何をどうやったら、チンチロの勝負をしていて火事になるんだ?…いや、まぁ、関係ないからいいか。
「露伴先生…昨日話していたヤツを頼む。」
「昨日話していたヤツ…?承太郎。露伴は今、家が燃えてるんだ。用事はまた今度でいいんじゃあないか?」
「あぁ、昨日のヤツか。別に構わない。そんなに時間もかからないしな。」
"昨日話していたヤツ"
二人の間ではそれで通じているらしい何か。恐らく昨日、僕がなまえちゃんを車で自宅へ送っている時に話した何かだろう。
なんの事だろうかと二人を見ると揃ってこちらに視線を向けてきて、気づいた時には露伴の「ヘブンズ・ドアー!」という声が聞こえてきて、その対象が僕であると、遅れて気がついた。
「っ…!露伴!何をするんだ…!!」
「まぁまぁ、そう怒るなよ花京院さん。僕は承太郎さんに頼まれただけだ。それにホラ、もう終わった。」
「そういう問題じゃあない!!承太郎!」
「感謝するぜ。じゃあな、露伴先生。忙しいところ、邪魔したな。」
「おい!!」
わけも分からないままここへ連れてこられ、わけも分からずヘブンズ・ドアーを受け何かを書き込まれた。これが怒らずにいられるだろうか?
「おい承太郎!僕に何を書き込んだんだ!?」
無理やり押し込められた車内で、ちゃんとシートベルトは締めつつ承太郎へ声を荒らげた。しかし怒りの感情を向けられているというのに承太郎はチラリとこちらを見ただけで「さぁな」とだけ。ムカつく…!ムカつく!!