答え合わせをしよう
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▽承太郎視点
「え…あの、……典くん、は…。」
花京院がみょうじの特訓を俺に任せたと宣い事務作業やその他俺の仕事を全て受け持つと逃げた事で、急遽俺がみょうじとの待ち合わせ場所へと赴く事となった。花京院から何も聞かされていなかったのか突然待ち合わせ場所へと現れた俺を見て彼女は辺りを見回したのち少し言いづらそうに上記の台詞を述べた。こちらとしても言いづらいが、「…花京院は、しばらく来られない」と、事実だけを述べた。…やれやれだぜ…。
「まずは、今きみがどの程度スタンド能力を使いこなせているのか、見せてくれないか?」
花京院からは彼女はこの数週間で随分成長したと聞いている。俺としては戦闘向きの能力であればぜひとも協力を仰ぎたいと考えているため、今の実力を知りたい。が、この前花京院といた彼女とは違い、ガチガチに緊張しているのが見て取れる。
「は、はい…よろしくお願いします…!」
まぁ、手合わせできるなら、何だっていい。つい先日完成したという、風を使った技が見られれば。
「オイ…、どういう事だ?」
「すっ、すみません…!」
どういうわけか、花京院から聞いていた技『大鎌』は上手く発動せず、完全に拍子抜けだ。期待していただけあって、正直ガッカリしている。一体、なぜか。
「…ふざけているわけじゃあ、なさそうだな…。」
「そんな事は…!」
みょうじは、真剣にやっている。やろうとしている。それは付き合いのない俺にも分かる程に必死に。思わず、ため息が漏れる。
「ハァ…。全然、集中できねぇみてーだな。」
みょうじの大鎌は、鎌鼬に比べて集中力を要する。最近会得したばかりでまだ体に馴染んでいない技のため、集中しなければ安定して出せないはずだ。つまりみょうじは今、集中できていないのだ。
「せっかく…典くんが教えてくれたのに…。ごめんなさい。少し、待っててもらえますか?」
「……いや、今日はもういい。」
「でも…承太郎さんも忙しい中、時間を作ってくれたのに…。」
「…それよりも、引っかかってる事があるなら、ソイツを先に取り除いた方がいいんじゃあねぇか?スタンドは、精神が具現化したものだ。精神の乱れは、スタンドに影響するぜ。」
どれだけ時間をかけたところで、心を乱している原因を取り除かなければ何も変わらないだろう。いつ敵が襲ってくるかもしれない今、それを一刻も早く取り除くのが良い。…まぁ原因について、大方の予想はつくが。
「……承太郎さん…、典くん、何か言ってましたか…?」
「……何か、とは?」
「何でも、です。典くんは私の事、承太郎さんにはお話しますか…?」
「あぁ…、まぁ、な…。」
やはり、引っかかっているのは花京院の事。本当に、うっとおしい。なぜ俺が、間に入って話を聞かなきゃならねぇんだ、と心の中で毒づいた。それもこれも、花京院の面倒臭い性格が原因だ。
「俺は、君ら2人の事に口を出すつもりはない。が、しかし…花京院は10年もの間、ずっと君の身を案じていた。…とだけ言える。」
「!…そう、なんですか?…10年…。」
「俺は君とはこの杜王町に来てからが初対面だが、10年前から色々と聞かされて、知ってはいた。…それがどういう事か、君なら分かるだろう?」
俺が彼女の名前を知ったのは最近の事だが、どんな子供だったのかは、過去に花京院から聞いていた。つまり、花京院は10年前…いや、それ以前から今までずっと、彼女の事を忘れる事なく思い続けていたと、それだけ伝えたかった。
「…ふふ…、嬉しいです。承太郎さんって、分かりづらいけど、お優しい人なんですね。」
「…別に、そういうんじゃあねぇ。」
「私も、典くんから少し聞きました。承太郎さんは怖そうに見えて、実は優しい人だって。」
「…やれやれだぜ。」
こいつらの間に挟まるのは酷くむず痒く、この先御免こうむりたいと感じた。
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▽露伴視点
「承太郎さんと、なまえさん…?オイオイ、面白い組み合わせじゃあないか。花京院さんはどうしたんだ?わけを聞かせてもらおうじゃあないか。」
たまたまフラっと立ち寄ったれんが亭で、普段は花京院さんと行動を共にしている2人が花京院さん抜きで食事しているのを目撃し一気に興味をそそられる。この2人はスタンド使いであるという以外の共通点は花京院さんの友人というだけのはず。それが2人きりで食事なんて、なにかあるに違いない。
「岸辺くん、こんにちは。典くんは今日忙しいみたいで、代わりに承太郎さんに特訓の成果を見てもらってたの。」
「…それだけか?」
「?それだけって…?」
「みょうじ。俺はもう行く。状況が変わった時は、必ず花京院から連絡させる。じゃあな。…露伴先生も。」
「あ、はい。ではまた。ご馳走様でした。」
承太郎さんは僕から逃げるように席を立ち、伝票を持って去っていってしまった。…まぁいい。何らかの情報を引き出すのに承太郎さんを相手取るのは骨が折れるだろうから。残ってくれたのがなまえさんの方で、こちらとしても都合がいい。
「承太郎さんとは、どんな話を?」
「承太郎さんと?うーん…アドバイスだとか、そういう話、かな?」
「アドバイス…どんな?」
「焦りは禁物って言われたよ。」
「焦る?なまえさんが?」
いつもマイペースに振る舞うなまえさんが焦るなんて、僕には想像がつかない。それに、人間観察を趣味としている僕でも気づかなかったなまえさんの焦りに、承太郎さんが気づいたなんて。なんか、怪しい。
「ヘブンズ・ドアー。」
「えっ、ちょっと岸辺くん!?」
……なんだ、これ。
ヘブンズ・ドアーでなまえさんを読んでみて、最初に感じたのはそれだ。それと、「花京院さん…面倒くさっ…!」だ。
"焦りは禁物"って…特訓の事じゃあなく花京院さんの事だったのか。
「岸辺くん…、人の記憶を勝手に読むなって、お母さんに言われなかった?」
「残念ながら、そういった事を言われた事はないな。」
「はぁ…。私は別に読まれて困る事はないけど、そうじゃない人もいるからやめるようにね。…いや、これを読まれたら、典くんに悪い気も…。やっぱり、人の記憶を読むのはやめましょう!」
「忙しいな、君。」
ヘブンズ・ドアーを解除し、コーヒーを一つ頼む。先日なまえさんの特訓に同席した時にも思ったが、2人はお互いがお互いを想い合う、所謂両想いらしい。花京院さんの記憶を読んだわけではないが、いつも余裕綽々でポーカーフェイスの花京院さんがなまえさんの前では表情筋を緩めてとびきり優しい瞳で彼女を見つめているのだ。あれで気づかない方がおかしい。だというのになぜ、花京院さんは彼女を避けるのか。その理由がなんとなく分からんでもないが、やっぱり直接確認したくなってしまうのが、僕だ。
「花京院さんがどう思っているか、なぜこうして君を避けるのか、知りたくはないか?」
「…、…知りたいよ。でも、典くんが言ってくれるまで、私は待てるから。…だからヘブンズ・ドアーで読まなくても、大丈夫だよ。」
「…話してくれるまでって…いつだ?それに話してくれるとも限らないぜ?」
「典くんは、きっと話してくれるよ。…優しいもの。本当に、いつになっても構わないの。…ふふ、だって私、小学生の時から典くんが話してくれるのを待ってたんだよ?」
「…そうだったな。まぁ、精々頑張るんだな。」
なまえさんが待てても、僕は待てない。僕は僕でヘブンズ・ドアーを使って、花京院さんを読む事にしよう。