最終任務 パッショーネのボスを倒せ
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「あ、やっと見つけた。フーゴ。」
新生パッショーネ、アジト内。自由に歩き回っても構わないという新しいボスのお言葉に甘えて建物内を練り歩き、ようやくお目当ての人物に巡り会えた。事前に今日はいるだろうとの情報を得ていたのですぐに会えると思っていたのだが、向こうは向こうでこちらを避けていたため中々に時間がかかってしまった。が、見つけてしまえば問題はない。
「おっと、逃げないでよ。」
「これは…、花京院さんの…。」
ハイエロファントグリーンの触手が、フーゴの体を包む。見つけさえしてしまえば、こうしてハイエロファントで拘束すれば良い。
触手でぐるぐる巻きにされたフーゴは諦めたように小さくため息をひとつつき、こちらを見やった。
「…僕に何か、ご用ですか?」
「んー。特にこれといって用はないんだけど。」
「はぁ?じゃあ、離して頂けますか?僕は暇じゃあないんだ。」
「もしかしてフーゴ、私は暇だと思ってる?まぁ、あながち間違いではないんだけど…。…日本に帰る前に、会いたかったからさ。」
「……そう、ですか。」
もう逃げない気がしてハイエロファントの触手を解いてもらうと、地面に足を下ろしたフーゴはやっぱりもう逃げようとはしなくて、それをいい事に一歩前へと近寄った。
「私はパッショーネの人間じゃないから、組織に関する事には口出ししないよ。」
「…そうですか。」
「ただ…、フーゴの事が心配だったから。責任を感じて、辞めちゃうんじゃないかって。」
「…まさか。ギャングを抜けるのは、そんな簡単にできる事じゃあないんですよ。」
「ふ…、そうかもね。」
「…話は終わりですか?なら、僕はもう行きますけど。」
「えぇ…?フーゴ、もしかして私の事嫌い?」
なんだか、ものすごく冷たくはないだろうか?気まずいのは分かるが、それにしたって逃げたいという気持ちがありありと伝わってくるのだが。
「私はもう少し、フーゴの綺麗な顔を見ていたいんだけど。」
「はぁ?」
「なまえ?」
姿を現した典明は眉間に皺を寄せていて、フーゴの顔を褒めたのに不信感を抱いているようだった。もう…私が一番好きなのは、典明の顔だというのに。
「いや…芸術的な美しさだなぁってだけよ?」
「君は面食いだから、心配なんだよ。」
「確かに典明の顔は芸術的に美しくていつでも見ていたいけど…。でもフーゴって、王子様とは程遠いじゃない?」
「露伴の前でもそう言えるのか?」
「うーん…それは無理かも。」
確かに言われてみれば、露伴だって王子様とは程遠い。かといって露伴にそれを求めているかと言われれば、そんな事はない。ならばフーゴもそういう対象となるかというと、ならない、が答え。自分でもよく分からない。よって、典明を納得させられる言葉が浮かんではこない。
「…分かったよ、典明。典明が心配なら、必要以上に構わないから。って事でフーゴ、元気でね。これ、名刺。」
「はぁ…。」
「困った事があったら、連絡して。それと、ジョルノに何かあった時もね。」
返事はない。フーゴにとって私は、そんなに思い入れのある人物ではないから仕方ないのかもしれない。
「…ジョルノを、お願いね。」
最後のお願いも、返事はなかった。だけどこれだけは伝えなければならないと思った。フーゴと、ジョルノのためにも。
「ねぇ、本当になんとも思ってないからね?ジョルノに対する感情と変わらないからね?」
「ジョルノは僕達の子として接しているから良いんだ。だけどフーゴは…。…君、彼に優しくされたら落ちるんじゃあないか?」
「…ねぇ、典明は私の事なんだと思ってるの?」
こんな事なら、露伴とも適切な距離を保っていれば良かった。いまさら、そんな事はできないが。アバッキオ相手にも牽制していたし、私ももう少し気をつけた方がいいのかもしれない。
「…はい、報告書。」
「あぁ、確かに。後で読ませてもらおう。」
「しっかし承太郎、この部屋違和感ないね。ジョルノよりもボスっぽい。」
ジョルノに許可を得て借りている、ボスの執務室。この部屋にある物ひとつひとつが高価な調度品で、華美な装飾はなくとも趣きがあり承太郎によく似合っている。まるでこの部屋の主が承太郎であると錯覚しそうになるほどには。
「おい…ここはギャングのアジトだぜ。冗談でもそういう事を言うんじゃあねぇ。」
「それにしてもポルナレフがギャングのNo.2か…。それも亀の姿で。笑えるな。」
「いつも一言余計なんだよ、花京院。」
亀の背中から顔を覗かせたポルナレフは、まるで昔のような眼差しで典明を見た。ジョルノ達の前では大人ぶっていたというのに、かつての仲間の前ではこうして砕けた話し方をするので、なんだか昔に戻ったみたいだ。
「なんか…懐かしいね。」
「…そうだな。」
「みんな、随分と大人になってしまったな。」
「なまえはそんなに変わんねーけどな。」
「は?正気かポルナレフ。なまえも随分大人の魅力が出てきただろう。本当、気が気じゃないよ。」
「あー…、そう。」
「典明も露伴のおかげで大人の姿になって…。大人の色気で毎日大変よ…。」
「…まぁ、お前らが幸せなら、いいんじゃあねーの?」
なんだか若干投げやりな気がしないでもないが、ポルナレフの言った事は本心も含まれているのだろう。いつだって彼は、私達の幸せを願ってくれていたから。
「ジョルノをよろしくね、ポルナレフ。」
「…あぁ、任せてくれ。」
ポルナレフはパッショーネのNo.2として、ここに残る。私達は日本に帰って、承太郎はアメリカへ帰る。また、離れ離れだ。だけどなぜだか、またこうして集まれる気がしている。
ガチャ
「おや、皆さんお揃いで。」
「ジョルノ。」
ノックもなしに入ってきたのは、この部屋の本来の主。新しく仕立てた黒い服が、よく似合っている。
「なまえさん、これを着けてくださいますか?」
そう言ってジョルノが箱から取り出したのは、テントウムシのブローチ。
「これ…私があげたやつ?」
「はは、まさか。あれは寮の金庫から、ここの金庫に移しました。」
「…宝物なのは分かるけど、たまには着けて欲しいな。」
「ふ…、そう言うと思って、式典の時には着けさせて頂きましたよ。」
う…、それは、嬉しいかも。それを今になって言うあたり、いい性格というかなんというか。
「ジョルノ…がんばってね。幸運が舞い込みますように。」
願いを込めて、丁寧にブローチをジョルノの服へ着ける。黒の服につけると急に何か意味のあるものに見えてくるのが不思議だ。
「なまえさん、ありがとうございました。流れだったとはいえ、手を貸してくださって。」
「ジョルノ…。…私が手を貸さなくても、きっとジョルノならやり遂げられたよ。」
「いえ。なまえさんがいなければ、助けられなかった人もいますから。それに、僕はなまえさんがいたからがんばれたんです。」
「…そう…なら、良かった。」
ジョルノはこれから汐華初流乃という名を捨て、生まれ変わって生きていく。だけど確かにジョルノは初流乃で、共に暮らした数ヶ月間の記憶がある。
「行ってきます、なまえさん。」
「……行ってらっしゃい、ジョルノ。」
さようなら、初流乃。
涙が出そうになるのは、なぜだろうか。
翌日、私達は日本へと帰国した。
新生パッショーネの、さらなる繁栄を祈って。
「黄金に輝く、彼」
-完-
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