最終任務 パッショーネのボスを倒せ
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「それで…承太郎は何の用?報告なら、少し待っててくれる?最後の方は私も気を失ってて、人から聞くしかないの。」
「いや…初流乃達が中々戻ってこないんでな。何かあったんじゃねぇかと来てみただけだ。」
「…あっそ。」
露伴が言えば"素直じゃないなぁ"とかわいく思えるのに、承太郎が言うと本当に言葉通りだから全然かわいくない。むしろちょっとイラッとする。だけどまぁ、心配してくれたのは本当だろうから、許そう。
「それで…えぇと、アバッキオ。気持ちは嬉しいけど、ジョルノを私だと思って…、…お願い。」
がんばって、と言うのはなんだか違うような気がして、言うのをやめた。しかし、パッショーネは今、生まれ変わったところ。ジョルノが信頼している人間に、側にいて支えてあげてほしい。が、アバッキオのジョルノ嫌いは露伴の仗助嫌いに近いものがあるので、正直難しいかもしれない。だけどそれでも、アバッキオはやってくれるのではないだろうかと期待してしまう。アバッキオは、とても義理堅い人だから。
「……ボスになったからといって、あんまり舐めた態度をとるんじゃあねーぜ。…ジョルノ。」
アバッキオの命を救ったのは、なにも私だけではない。私の能力だけでは、体は治せなかった。また逆も然り。アバッキオが私を"命の恩人"だというなら、ジョルノだってそう。嫌々ではあったが認めるような台詞を吐いたのは、彼もそれを理解しているからだ。アバッキオはこれからは、なんだかんだ言いながらもジョルノを支えてくれるだろう。
「アバッキオ…くどいようだが、本当になまえに惚れてないんだよな?」
突然、話の腰を折るように不穏な空気を滲ませ何を言うかと思えば、典明の口から出てきたのはそんな心配するような言葉で。それだけ不安で仕方がないなんて…と胸がときめく。もう、典明…好き…!!
「あぁ、心配するな。俺はもっと落ち着きのある女が好みなんだ。」
「それじゃあひとまずは安心だな、花京院さん。」
「露伴。」
本当に露伴は一言多い。まさか露伴も心配していたとか?もしそうだとすれば、かわいいのだが。露伴の言葉にそれもそうかと言いたげな顔で口を閉ざした典明も少し気にはなったが、典明は典明なので、許そう。もうなんでも許す。
「これ、私の連絡先。ジョルノに何かあったら、すぐに連絡してね。あと、困った事があれば、いつでも。」
みなにプライベート用の名刺を配って、話はようやくひと段落ついた。そして部屋の中を見回して、家具などの設備がとんでもなく高価そうな事に気がついた。ジョルノがここのトップになるなんて……一気に遠い人になってしまったように感じる。
「…なまえさん。向こうの部屋で採寸をお願いできますか?実は、式典は来週を予定してまして。」
「そうなの?じゃあ、すぐに取り掛からなきゃ。大丈夫。2日あればできるわ。」
「いえ…できたら、ミスタとアバッキオの分もお願いしたいんです。」
わぉ…。ジョルノにしては、珍しく無理難題。1週間で1人分できれば良い方なものを2日で作るのも大変なのに、数日で3着とは…。これは、猫の手を借りるしかない。
「なるほどね……。…露伴、手伝って。」
「はぁ?なんで僕が。」
「だって…露伴は前に手伝ってくれた事があるじゃない。その時、すごく上手だったから…。デザインも、露伴がいてくれた方が捗るし…。」
「はぁ…。…いいか?僕は3日で帰るからな。帰って原稿を仕上げて、式典の日にはまた来てやるよ。」
「ありがとう露伴!最高!!」
本当に露伴は、なんだかんだ言って私に甘い。それを利用しているようで申し訳ないが、助かるものは助かる!!本当にありがとう、露伴!
「なまえさん。初流乃に聞いたが、君、随分と無茶をしたらしいな。」
「…えぇと…、そうでもしなきゃどうにもならなかったと言いますか…。」
布にペンを走らせる音。ハサミで布を裁つ音。ミシンの音。フル稼働で作業をしながら、露伴の口からはお説教が飛び出してくる。口を動かしながらも手は正確に動いていて、露伴の才能が恐ろしい。
「露伴。なまえは仕事をしたまでだ。恨むなら承太郎やポルナレフを恨むんだな。それに、今回なまえを焚き付けて余計に無茶をさせたのは、僕なんだ。」
「…花京院さんが?」
「強敵を前になまえが諦めれば、みんなも諦めてしまうと思ったんだ。あのメンバーの中でなまえは、スタンドでの戦闘においてはかなり頼りにされていたからな。」
「……それで死んだら、どうするんだよ…。」
「…悲しみは、いつか癒える。残された者には申し訳ないが、自身の命ひとつで繋がる希望があるなら、賭けるしかないんだよ。」
ポタ、と手元の型紙へ水のシミができる。自分の涙だと気がついたのは、すぐ後だった。
典明がまるでエジプトで命を賭した時の事を語っているようで、当時を思い出して出てきた涙。
「典明…、あの時、そんな事を思っていたのね…。…今回も、そこまで考えて…。」
「…泣かないでくれ、なまえ。エジプトでの事は、後悔していないんだ。今回の事も…露伴にはすまないが、あれはどうしても必要な事だった。」
ぎゅっと典明に抱きしめられる感覚。作業する音が聞こえなくなって、露伴の手も止まったのだと分かった。
「露伴。私はSPW財団員で、スタンドやそれに関わる調査をしているの。時には命に関わる仕事になる事もあるけど…危険を侵さなきゃ、大勢の人が被害に遭う事になるところだった。今回の事も、杜王町の事もね。」
「…そんなの、分かってる。けど、僕にとっては君は、SPW財団員ではなく、僕の恋人の、なまえさんなんだよ。僕はSPW財団員じゃあないから、簡単には割り切れない。」
「露伴…、…ごめんね。」
謝る事しか、できない。典明の腕からそっと抜け出して露伴を抱きしめると、素直に抱き締め返してくれて安心した。今の露伴は、素直な露伴だ。
「本当は…、正直に言うと、財団員なんてやめて欲しいと思っている。けど、君は僕に頼まれたからといって簡単にはやめられない事も理解している。…承太郎さんが、許すわけないしな。」
「…さすがは露伴。よく分かってるのね。」
「それに、戦う君はかっこよくて、魅力的だからな。やめて欲しくない自分もいるんだよ。」
「うん…。…私ね、今回いよいよどうにもならない事態になった時ね、財団員なんてやめたいと思ったの。でも、無理だった。やめたところで結局、無茶しちゃうだろうしね。…そこは典明と、似てるのかもね。」
あの時確かに、自分が死んでもジョルノ─初流乃がいるから大丈夫、と思っていた。初流乃が、私やみんなが繋いだ希望を拾い集めて、ボスを倒してくれると信じていた。それはきっと、DIOを倒した時の典明と同じ気持ちだ。
「全く……2人ともかっこよすぎるな…。」
「ふふ…、露伴がそう言ってくれるなら、かっこいいところを見せ続けなきゃね。」
「…あぁ、そうだぜ。簡単に死んじまったら、かっこわるいからな。」
結果的にではあるが、生きていて良かった。確かに死ぬ気で戦いはしたが、生きていた方がいいのは当たり前だ。私はまだ生きて、希望を繋いでいく側の人間らしい。
「さぁ、話もまとまった事だし、手を動かそうか。僕は力になれなくてすまないが、このままじゃ間に合わなさそうだ。」
「う…。…よろしくね、露伴。」
「今日中に1人分、裁断まで終わらせてやる。」
今は生きていた事を喜ぶための、式典の準備をいそがなければ。止まっていた手を動かし、再び揃って机へと向かった。
翌週。パッショーネの新しいボスの就任式。それは小規模とはいえ、もはや社長就任式のような規模ではなく──一国の主が入れ替わるかのような戴冠式といった方が近い雰囲気だった。外に向けて大々的にする事はないが、パッショーネのアジト内で一部の幹部や上層部が集められ、厳かな雰囲気で始まった就任式はさすがはギャングとでもいうべきか…他を圧倒するような空気感だ。隣で黙ってスケッチブックに鉛筆を走らせる露伴は、本当に貴重な体験をしそれを我が物にしようとしている。こんな中でも絵を描いていられるなんて、本当に尊敬する。
何はともあれ3人分のスーツの仕立ては間に合い、今、式典に臨んでいる。遠くから見るジョルノは初流乃とは違いオーラを纏っていて、遠い人かのように感じた。
「なまえさん。花京院さん。こちらに。」
「……えっ?」
私語ひとつない空間。その空間に私の間抜けな「えっ?」という一言が響き渡る。だって、私が呼ばれるなんて、聞いてない。予定にないものだったのだから。典明を見ると彼も予想外だったようで、私を見ていた。戸惑っていたって仕方ない。ボスの言葉を無視するわけにはいかないと、指示された通りにステージへと登壇した。
「こちらの方は、花京院なまえさん。僕の母だ。」
「!…ジョルノ…?」
「そしてこちらは…殆どの者には見えているはずだが、花京院典明さん。僕の父だ。お2人とも、パッショーネとはなんの関係もない。が、僕の何よりも大事な人だ。丁重に扱うように。以上だ。」
こんなの、聞いてない。これでギャングの幹部達に、顔がバレてしまった。ジョルノはイタリアに住むうちに、変わってしまったのかもしれない。