最終任務 パッショーネのボスを倒せ
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「なまえ、おはよう。寝起きも世界一かわいいな。」
「典明…。おはよう…。ねぇ、露伴が変な事言うの。ここがパッショーネのアジトだって。」
沈黙を破るかのように姿を見せた典明は、私に対する100点満点のセリフを口にしておでこに優しいキスを落とした。思わず蕩けそうになるのを、さすがに今は違うと思考の外へとやっとの思いで追いやり、今知るべき事を問うた。そんな事あるわけないと思いつつも、わざわざ露伴がそんな嘘をつく必要はない。だから典明の口から、違うと否定してほしかった。
しかし典明は私の問いを聞いて困ったように眉を下げ、視線を逸らした。まるで、典明自身も信じたくない事を今から言わなければならない、とでもいうように。
「…それは…、間違いじゃあないんだ。ここは、パッショーネのアジトで間違いない。…僕が一から説明するから、聞いてくれるかい?」
「……うん。」
典明から聞いたのは、初流乃が矢の力を手にし、ディアボロを倒した事。問題の矢は、これ以上混乱を招かぬよう亀の中へ封印する事にした事。ブチャラティが死んだ事。そしてそのブチャラティの意志を引き継ぎ、初流乃がパッショーネのボスに君臨した事。
「は…、は、初流乃が……、ギャングの、ボス…!?」
今聞いた話は、全てが全て重要な話だ。しかしやはり初流乃がパッショーネのボスになったという事実が、一番衝撃を受けた。
だって、初流乃はまだ15だ。学校へと通っている、子供なのだ。仗助や億泰よりも年下で、あの優しくてかわいらしい初流乃がギャングの…それもよりによってボスだなんて…!
しかし…朦朧とする意識の中で見た初流乃の姿は、DIOそのものだった。奴を褒めるわけではないが、DIOのオーラやカリスマ性は本物だった。それを初流乃は、しっかりと受け継いでいる。それをこの目で見てしまっては、仕方ないが認めるしかないのかもしれない。初流乃は、人の上に立つ素質があるのだと。
「まぁ…案外上手くやるだろう、初流乃は。現にあいつらだって、初流乃の下に就くのを承諾してるんだ。つまりは、そういう事だろ。」
「あいつら…?そうだ…トリッシュは…トリッシュは無事なの!?」
「安心してくれ。トリッシュは生きてる。それに、アバッキオも無事だ。」
「アバッキオも!?…そう…。…良かった…!」
聞きたい事がたくさんありすぎて、そして驚いたり喜んだりで、頭の中が忙しい。たった1週間足らずで、よくここまで色々起こったものだ。
コンコン、ガチャ
控えめなノックの音を聞いて、何となく初流乃だと思った。ゆっくりと開いたドアの向こうから顔を覗かせたのはやっぱり初流乃で「なまえさん、目が覚めたんですね」と嬉しそうに微笑んだ。かわいい。こんな天使がギャングのボスだなんて、誰が信じられるだろう。
「僕は…初流乃が決めた事なら、応援したいと思っているよ。…君はどう思う?なまえ。」
脈絡のない典明のセリフの言いたい事は、ちゃんと伝わった。初流乃は自分で決めたのだ。ボスになる事を。私や典明がなんと言って引き留めようと、それを覆す事はない事ぐらい、もう分かっている。
「私も…応援する。手助けだってする。…まずはボスに相応しい服を作らせてね。…ジョルノ。」
「!…はい。お願いします、なまえさん。」
この子はもうすでに、杜王町で一緒に過ごしたあのかわいらしい初流乃とは違うのかもしれない。私の子かどうかは抜きにして、対等に扱うべき1人の人間なのかも。
「ところでなまえさん。先ほど手助けをしてくれるって仰いましたよね?」
「え?うん、もちろん。」
何かと思えば、そんな当たり前な事を…と笑いながら返すと、ジョルノの口からは笑えない一言が飛び出してきた。
「なまえさんさえ良ければ、パッショーネのNo.2の座を…と考えているのですが。」
「はぁっ!!?初流乃お前、何考えてるんだ…!?」
衝撃のセリフにいち早く反応したのは、私でもなく典明でもなく、露伴だった。それまで黙って成り行きを見守っていた露伴が感情を露わにするので、私と典明は言葉を発するタイミングを完全に失ってしまった。信じられないといった様子で怒りの感情を表す露伴。そしてそれを見越していたかのように笑顔を浮かべるジョルノ。変な空気感が、部屋の中に流れた。
「露伴先生は、困りますよね。なまえさんがNo.2の座に就いたら、なまえさんの拠点は杜王町ではなく、こちらに移りますからね。」
「初流乃お前…ッ!」
「常になまえさんの側にいられる花京院さんと違って、露伴先生は杜王町で漫画を描き続けたい。だからなまえさんがイタリアで暮らすのは、何がなんでも回避したい。そうじゃあないと、露伴先生はなまえさんと離れ離れになってしまいますからね。」
あれ…?なんかジョルノ…ちょっと怖くない?一体どこで覚えたのか、露伴の事を上手く煽っている。きっと私よりも、典明よりも上手に。そう、まるで…DIOを見ているかのように。
ギロ、と露伴の瞳がこちらを向く。それは睨んでいるというよりも縋っている、という方が正しい、懇願するような視線だった。露伴の視線が「僕を選べ」と言っているようで、胸がきゅ、と締め付けられた。
「ごめんね、ジョルノ…。とても光栄な話だけど、私はSPW財団員で画家で、デザイナーなの。これ以上の肩書きは持てない。…それに、露伴を一人日本に残しておくなんて、できない。」
「……そうですか。…ふふ。なまえさんなら、そう言うと思ってました。」
「初流乃…お前、いい性格になったな…!」
「はは、…良かったな、露伴。なまえは君の事がかわいくて仕方ないらしい。」
コンコン、ガチャ
「邪魔するぜ。」
「!アバッキオ!!」
ジョルノと比べていささか力強いノックのあとに姿を見せたのは、最終戦の時に死んだとばかり思っていたアバッキオ。先ほど典明に聞いた話によれば、コロッセオに向かう道中でブチャラティに強制的に病院の側で車から降ろされたのだという。ほとんど傷は治っていたが血を流しすぎていたため、賢明な判断だと思う。あのままコロッセオに向かっていても、満足に戦う事はできなかっただろうから。
「アンタがNo.2になるんなら、ジョルノに従ってやってもいいと思ったんだがな…。」
「アバッキオ…!」
「…アンタには、恩がある。頭の良さも、スタンドの強さも、本物だ。…最初は気に入らなかったが、今はブチャラティの次くらいには、尊敬している。…ありがとな。」
「わ…、わー!露伴よりも素直!」
私やジョルノをチームで一番疎ましく思っていたはずのあのアバッキオが、突然素直に私を認め、感謝を述べるなんて。驚きを通り越して、もはや感動すら覚える。
「おい。僕を引き合いに出すんじゃあない。」
「だって…!露伴みたいに天邪鬼な子だとばかり思ってたから…!」
「君…いま僕に喧嘩売ってるのか?」
露伴があまりに素直じゃないのが悪い。今までは典明を見習えと言っていたが、これからはまずはアバッキオを見習ってほしい!
ガチャ、とノックもなしに突然部屋へと入ってきたのは、承太郎。次から次へと人が来て、いくらなんでもそろそろ部屋が狭くなってくる。
「えーと、私はもう元気になったから、部屋を移動しようか?」
ただでさえ身長の高い面々に見下ろされ、居心地が悪い。