第3の任務 ポルナレフを探せ
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「僕が行きます。」
沈黙が流れそうな空気を一刀両断したのは、まさかの初流乃の声だった。しかしそれをいち早く制したのは典明で。「僕はカビに感染しないから、僕が行くよ」と、初流乃よりも力強い声でそう口にした。こちらの敵には、私は些か不利だから。
「…分かりました。」
「気をつけてね、典明。」
ニコ、と笑顔をひとつ浮かべてから、典明はヘリコプターの方へと足を進めた。
「…花京院さんが行くのは、確かに最善かもしれませんが…。…お二人の事を思うと、ちょっと嫌ですね。」
「初流乃…。ふふ、私達の事、よく分かってるのね。」
確かに典明が行けば、典明自身は怪我をしない。しかし、何かあった時に怪我をするのは私の方。私と典明の魂は繋がっているから。
私が怪我をすれば典明はきっと、自分のせいでと自身を責めるだろう。私は、それが嫌なのだ。だから、典明の身を危険に晒したくないのだが…今回は有利不利がハッキリしすぎている。誰が見たって、典明が行くのが一番良い。
「なまえ。操縦席の脇に医療器具がある。もしかしたら医者か何かかもしれない。…!?…これは…!一体どういう…!?」
「典明!?」
思わず、だった。典明の焦ったような声が聞こえた瞬間には既に体が動き始めていて、気がついたらヘリコプターの正面まで飛んでいた。そして中に見えたのは…バラバラになった体で動き回る、敵の姿だった。
「…っ、典明!ハイエロファントで拘束!」
「!…すぐにッ…!」
狭い機内。どういうわけか敵は体をバラバラに切断されながらも縦横無尽に動き回っている。その上任意のタイミングで自在に元通りにくっつけられるらしい。そんなの、もう人間じゃない。
「スタンド能力を応用しているとはいえ…人間の限界を超えてるわね。」
「それは君も大概だけどな。…しかし…すまないが、僕のパワーでは拘束は無理だ。作戦変更だ。少し距離を取ろう。」
敵は切り取った切断面にカビを纏わせている。攻撃しようと触れれば瞬く間に感染し、腐敗してしまいそうだ。
グイ、と典明に体を引かれて、気がついたら今度は近くの建物の上。その上典明の腕に抱かれていて、この状況ではあったが典明がかっこよすぎてドキドキする。
「初流乃。君はそこにいて、待っててくれ。」
「何か作戦があるんですね?」
「あぁ。じきに落ちていくだろうから、処理を頼むよ。」
典明は、勝ちを確信している。そんな風な余裕の表情だ。かっこいい。私を抱き上げて立っているなんて重いだろうに…涼しい表情を浮かべていられるなんて、本当に素敵。好き。
「ふふ…。僕の事よりもほら、かかったぞ。」
「?…あ。ハイエロファントの結界?」
狭いヘリコプターの機内で、エメラルドの粒が飛び交い堪らず本体が穴から飛び出してきた。さすがは典明。戦う場所や状況をよく見てよく考えている。敵が落ちた先にいたのは、待機を命じられた初流乃。
「初流乃!決めちゃえ!」
「…さすがは、花京院さんですね。僕は何もしてないのに…。」
本当に何もしてないのは、私だ。典明は、強い。初めて会った時からずっと、私よりも何倍も強い人だ。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!」
…対する初流乃は、さすがはDIOの血を引く人間、というか…。オラオララッシュならぬ無駄無駄ラッシュを繰り出しているさまは、嫌でもDIOを思い出させる。いつもはあんなにいい子なのに、たまにこういう、DIOとよく似た雰囲気を纏うようになった。元々の初流乃を知っているから、別に構わないのだが。
「無駄無駄無駄無駄無駄!無駄ァ!!」
とうとう、奴を倒した。最後の一撃を受けて吹っ飛んで行った先にはゴミ収集車。よくもまぁ、タイミング良く走っていたものだ。なんにせよあそこまで粉々になっては、さすがに死んでいるだろう。
「初流乃。知らない間に、強くなったのね。」
「なまえさん…。僕には最強の、お手本がいますからね。」
「ね!典明、強くてかっこよかった!」
「…ふふ、はい。そうですね。」
GEの治療の痛みも、随分慣れた。慣れるほど怪我をしたのだと思うと考えものだが、怪我を治してもらう前提がなくては勝てない時もあるのだから仕方がない。今だって、典明がいなかったらもっと酷い怪我だっただろう。
「車は、もうコロッセオに着いたかな?早くみんなに追いつかなきゃ。」
「ここからなら、なまえさんならひとっ飛びですね。お願いします。」
丘の下の方には、既にコロッセオが見えている。確かに私が抱えていけばすぐに着くが、あれで移動すると仗助や億泰は文句を垂れるのであまりいい手段とは言えないと思うのだが。
「結構なスピードと衝撃だけど、大丈夫?」
「ああいうのは、コツさえ分かれば大丈夫なものです。さ、急ぎましょう。」
初流乃が良いなら、いいか。
初流乃と典明を両手で抱えて、まさに両手に花。この綺麗なお花達が傷つかないよう、丁寧にコロッセオまで運ばなければ。
ドンッと地面を蹴って、向かうはコロッセオ。いち早くポルナレフと合流し、パッショーネのボスの情報を聞き出さなければ!
「あ、ブチャラティ!っ、やばい!」
ドォン!
ブチャラティの姿に気を取られ、危うくコロッセオの外壁に衝突するところだった。咄嗟に足を前に出して着地したが、約1900年の歴史のある世界遺産であるコロッセオの外壁にはヒビが入ってしまっていた。SPW財団に資金があるとはいえ、少々マズイかもしれない…とさすがに少し青ざめた。…いや…申し訳ないが今はそれどころではないのだ。
「初流乃。みんなの治療をお願いね。」
「なまえ…君のそういうところはかわいいと思うが、これはさすがに…。」
「勢い余っちゃって…つい…。」
「まぁ、なってしまったものは仕方がない。今はそれよりも、ポルナレフを探そう。」
もう日が暮れている。ポルナレフはまだ、コロッセオの中で待っているだろうか?もしもいないとなれば、典明が黙っていないだろう。「なぜすぐにどこかへ行ってしまうんだ!」とポルナレフに怒る典明の姿が想像できて、少しおかしかった。
「あれ…誰かいる。男の子…?」
コロッセオの入口を見つけて足を踏み入れると、一足先に入ったであろう見知らぬ男の子。このタイミングで知らない人物がコロッセオ内にいるなんて、警戒せざるを得ないが…向こうもこちらに気がついて振り返ったその顔は、とてもじゃないがギャングには見えなかった。気の弱い、いい子、というのが人相に出ている。
「あ…、こんにちは。ここへは、観光ですか?」
「…まぁ、そんなようなもの。人と待ち合わせをね。貴方は?」
「僕はちょっと、探し物を…。」
こちらも向こうも、多くは語らず。だが、怪しい。しかし万が一本当に一般人だった時の事を考えると、迂闊に手が出せない。…が、彼の視線が、典明の方へと動いたのに気がついて後ろへと飛び退いた。
「なまえ?」
「典明!コイツ、スタンド使い!典明の事が見えてる!」
典明の姿を視認できるのは、霊感の強い人、もしくはスタンド使いだけだ。霊感の強い人なんて、そうそういるものではない。このタイミングこの場所にそんな人がいるよりも、スタンド使いがいる方が圧倒的に確率は高い。
「なまえ!」
「!…ポルナレフ!今、敵が…!っ、いない!!」
時を飛ばされたのだと気がついたが、飛ばされたあとにしか動けないのが辛い。すぐに行動に移さなければ。
この場面で敵が姿を消したという事は、敵はパッショーネのボスで間違いない。消したあとにどこへ向かうか…と考えた結果、ポルナレフの元かもしれないと思い至り典明の腕を掴みポルナレフの元へと急いだ。