第3の任務 ポルナレフを探せ
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「初流乃、体は何ともない?服は綺麗に直したよ。」
「はい。ありがとうございます。わぁ…!新品と見分けがつかないですね!さすがです!」
ホテルの一室を借りトリッシュの護衛がてら、みんなの衣服の補修に勤しんだ。みんながみんなどこか穴が空いていたり破けたりで、それはそれは酷い有り様だった。本当、過酷すぎる。ギャングを裏切るって大変だな…なんて他人事のように思った。
「初流乃、そのブローチよっぽど気に入ってるのね。何個も替えがあるなんて、びっくりしちゃった。」
「あぁ、これですか?実はなまえさんに頂いた物は寮の鍵付きの引き出しに仕舞ってあるんです。大事にしたいけど傷がついたらと思うと使えなくて…。」
「えっ、使ってないの?…まぁ、このペースで無くなるなら、結果的に良かったのかもね…?」
「ふふ…、はい。仕舞っておいて本当に良かったですね。」
幸運を呼ぶテントウムシのブローチ…こういうところで幸運を発揮するなんて、思ってもみなかった。
「なまえさん。それらしき場所を見つけたと、ブチャラティから連絡がありました。」
この島に到着してから3日後。とうとう写真の場所が見つかったとの報告が入った。いよいよ、ボスの正体を突き止められる。
「…行きましょう、なまえ。」
トリッシュはもう、覚悟を決めている。実の父親と、対峙する覚悟を。
トリッシュにはまた亀の中に入ってもらい、私と初流乃と典明は揃って、ブチャラティ達との待ち合わせ場所へと向かう。ボスは、きっと来る。そこで直接戦闘が起こるかもしれないと、ぎゅっと拳を握りこんだ。
「…?アバッキオ…?…ッ!!アバッキオ!!」
目的地の見える道までやってきて最初に見えたのは、今まで何度も見た、見たくなかった、鳩尾の穴。遠くまで良く見える自分の目が恨めしいが、今はそんな事を気にしている場合ではない!
「初流乃!」
途中で合流したミスタを置いて、初流乃を乱雑に担ぎあげアバッキオの元まで跳躍をした。その際に脚に負荷をかけすぎて地面を砕き、足の骨も何本か折れた音がしたが、それでも早くアバッキオの元に初流乃を届けなくてはと、着地も丁寧にはしなかった。
ドォン!と大きな音、土煙を上げながら着地し初流乃を下ろしたところで脚に痛みがやってきて、その場で蹲った。
「初流乃…!アバッキオは、治りそう…!?」
「なまえさん…、ギリギリ、です。間に合うか…!」
意味があるかは分からないが、初流乃のゴールド・エクスペリエンスに合わせて、治癒の波紋を流した。アバッキオとは特にこれといった関わりはないが、だからといって死んでもいいなんて、そんな事はない。既に数日間、一緒に過ごした人の内の一人なのだから。
「体は、治しました…。」
絶望感を感じさせる、初流乃の表情。耳を近づけて心音の確認をするが…何も、聞こえない。
「っ、山吹色の波紋疾走!!」
少し荒療治だが、波紋を流して心肺蘇生を試みる。バチバチと音を立てるこれは、電気のようなもの。これで何とか、戻ってきてはくれないだろうか。
何度か波紋を流し心音を確認して…と繰り返しているとやがてみんなが集まってきて、私達の様子を伺っていた。みんな言葉を、発さなかった。
「!なまえ…!」
「っ!」
典明の声にハッとして意識を戻すとアバッキオが一度息を吸ったところで…どうやら戻ってこられたらしいと理解した。
「良かった…!!」
「アバッキオ!…なまえ…アンタすげーよ!ありがとう、なまえ!!」
「私は何も…、いったぁ!!」
ホッとしたのも束の間。両脚の激痛を思い出した。さっきは無我夢中だったから忘れていたが、かなりの衝撃だったため立ち上がる事は不可能なほどの怪我だ。ゴールド・エクスペリエンスの治療の痛みなんて比じゃない痛みで、これほどまでの怪我は実にDIOとやり合った時以来であった。
「アバッキオを助けるためとはいえ…本当に無茶をしましたね、なまえさん…。」
「はは…、初流乃、もっと言ってやってくれ。」
「だって…間に合わないかと…。初流乃が助けられると思ったから、無茶できたんだよ。」
「!……アナタは本当に…かわいい人だな…。」
「あはは、知ってる。」
何とかなって、良かった…。ブチャラティもアバッキオも典明と同じように鳩尾に穴を開けられるなんて、なんだか私のせいみたいじゃないか。…違う。乗り物の墜落といい鳩尾の穴といい、絶対に私のせいなんかじゃない!
「これが…パッショーネのボスの素顔…。」
アバッキオは死ぬ間際、力を振り絞って手がかりを残してくれていた。蘇生はできたのに目を覚まさないので無理やりにでも起こしてリプレイの続きを頼もうとしたのだが、そのような心苦しい事をしなくともよくなって、良かった…。
カタカタ、カタカタ…
亀の中の部屋に、キーボードを打つ音が響く。警察のデータベースから指紋の照合をしようと試みるためだ。しかし該当者はなく、今度は死亡者リストから検索を開始した。
「…ヴェネツィアの時と同じ感覚がさっき、少しの間あった。アバッキオに近づいたのは…父だわ。」
「!」
やっぱり…。パッショーネのボスはどうやら、余程素顔を人に知られたくないらしい。そしてそれは、パッショーネの幹部にも明かしていないのだと、今確信した。だってそうじゃなきゃ、わざわざボスが自ら動くなんておかしい。幹部にさえ素顔を知られたくないから、自分でアバッキオを始末しに来たのだ。
ピッピッ、という音がして画面を見ると、死亡者リストを調べ終えたPCは虚しくも"該当者なし"と告げていて、ため息が漏れる。それは初流乃やブチャラティも同じようで、ブチャラティは唇を噛んだ。
「やはりボスは抜け目ない…。これ以上、追跡はできない…!」
「……。」
…なにか、他に手立てはないだろうか。せっかく素顔が分かったのだ。これで手詰まりだなんて、あんまりだ。
ビーッビーッビーッビーッ、
突如けたたましい警告音のような音が響き、思わず思考が止まり意識をPCへと戻した。一体、なんの音なのだろうか。
「そんな事はないぞ。君達は追跡をもう、終えている。あとは倒す方法を…見つけるだけだ。」
「!…この…声は…!」
聞き間違いじゃなければ。私が彼の声を間違って覚えているのでなければ。歳をとって少し雰囲気は変わったかもしれないが、私の頭は都合よく、一人の男を思い浮かべている。
典明を見ると彼も私と同じような表情をしていて、やっと自分の感覚に自信が持てた。
「ポルナレフ!!!」
「その声…、なまえか?なまえみたいな奴がいるとは思ってたが…まさか本人とはな。」
「何呑気な事言ってるのよ!無事なら連絡くらいしなさいよ!!こっちは生きてるのか死んでるのか分からなくて、心配したんだから!!」
「わ、悪い…。いや、しかしだな…とりあえず一旦、俺の話を聞いちゃあくれねーか?」
そうして仕切り直して話し出した話はパッショーネのボス"ディアボロ"の事。そして彼は今、戦える体ではないという事。それと、ディアボロを倒そうとする人間をずっと探していたという事。
「私のところに来い。ローマに来るのだ。そうすれば、君達に可能性を渡せる!」
「…可能性、って…?ポルナレフ、どういう事?承太郎に報告は入れてるの?」
全く、いつもいつも単独で行動して報告はいつも後回し。スタンド関連の調査なんて、一人でするものではないというのに…と、典明と二人、頭を抱えた。