第3の任務 ポルナレフを探せ
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「なまえが操縦すんの!?」
空港に到着し、久しぶりに外の空気を吸い込んだ。それはトリッシュも同じようで、眩しそうに目を細め体の凝りを解した。飛行機に乗っている間だけでも、外の景色を見て気を紛らわせてほしい。
そして飛行機だが、敵や危険物がないか入念に確認しいよいよ出発というところでアバッキオのスタンドで操縦する流れになったのだが、離陸までに少し時間がかかるという事で私が名乗りを上げた。私ならば、スタンド能力に頼らなくとも操縦できると。最初は半信半疑だった面々も免許証を見せると納得してくれ、今に至る。管制官はいないが天気は良いし風もなく、見通しもいい。まぁ、なんとかなるだろう。
「久しぶりに見る君のその姿…本当、かっこいいな…。」
「…もしかして、惚れ直した?」
「うん。サルディニア島に着くまでの2時間、ゆっくり眺めさせてもらうよ。」
「やだ…そんなに長い時間典明に見つめられたら、私逆上せちゃうかも。」
あるいは、ドキドキしすぎて心臓が止まってしまうかもしれない。本当、かっこいい。
「燃料ヨシ。異常ナシ。ブチャラティ、いつでも離陸できるよ。」
「よし、出発だ。」
ジョセフさんから受け継がれたかもしれない乗り物が悉く墜落する呪いも、私が自分で操縦すれば大丈夫。乗り物が落ちるなんて事には、絶対にさせないんだから。
「初流乃っ…!!」
一体何度目だろうか。こんな風に初流乃の名前を呼ぶのは。しばらくは高度を維持して真っ直ぐ飛ぶだけだと自動操縦に切り替え、ブチャラティに抱えられ連れてこられた初流乃を見ると、両腕とも失い血を流しているところで。思わず初流乃の名を呼んだが返事はなく、震える手でブチャラティから初流乃の体を受け取った。
「一体…何が…!初流乃は生きてるの!?ブチャラティ!」
「…生きている。しかし…両腕は、敵スタンドに…。すまない。」
「ッ…!怪我した2人を、私の側へ!初流乃のような即効性はないけど、治癒の波紋を流す!」
ナランチャとミスタも、ひどい怪我だ。怪我を治せる初流乃までこの状態の今、治癒の波紋を使える私が、少しでも傷を治してあげなければ。
ゴゴゴゴ…
「!今度は何っ!?」
敵スタンドは外に捨てたと聞いている。だというのに飛行機は異音を響かせ、心做しか高度も下がってきている気がする。
「なまえ、エンジンに何か異常があるようだ。ハイエロファントで見てこよう。」
「っ…次から次へと…!…うっ…!!」
「なまえ…!これは…敵スタンド…!?」
突然、自身の腕から血が吹き出す。この光景は、以前にも見た事がある。吉良吉影とやり合った時だ。これは…ハイエロファントが攻撃を受けたという事だ…!
「トリッシュ…!慌てずゆっくり、こちらへ来るんだ。」
「まずい…このままだと、落ちる…!」
痛む体を治癒の波紋で無理やり落ち着かせ、操縦席へと戻る。高度計を見るとやはりどんどん落ちていて、このままだと確実に墜落する。自動操縦を切って手動に切り替えたが…サルディニア島まではまだ、距離がある。少しでも時間を稼がなければ、無事に辿り着くことはできないだろう。
「典明、怪我人を亀の中へ!…それと、墜落が怖いから、抱きしめてて。」
「!…あぁ、もちろんだ。」
指示をしながらチラリと典明を見ると申し訳なさそうな表情をしていて、どうしても放っておけなかった。その理由はもう10年以上の付き合いだから、分かる。ハイエロファントが攻撃を受けた事で、私がダメージを負ったからだ。
私と典明は、繋がっている。私の体は、典明の体なのだ。ハイエロファントは典明の指示で動くが、魂がひとつになった事で、典明の受けたダメージは私の体へと反映される。
私を守りたいと思っている典明は、とてもショックだろう。吉良吉影にやられた時も、ひどく狼狽していたのをよく覚えている。
「ごめん、なまえ。」
「大丈夫よ、典明。ほら、もう塞がりかけてる。それに、スタンド使いとの戦いで傷を受けるなっていうのも無理な話でしょう。」
「…分かってる…。だけどそれでも…僕のせいで君が傷つくのは…」
「コックピットに入るのよ!ブチャラティ!!」
「!…トリッシュ…!」
コックピットへと駆け込んできたトリッシュの手には、初流乃のテントウムシのブローチ。それも指のようなものも見えた気がした。初流乃は頭の回転が早い。きっと腕を失う直前に、テントウムシのブローチに生命を宿していたのだ。さすがは、私と典明の子。
「典明…さっきの話だけどね。」
よく晴れた空の下、トリッシュのスタンド能力でフワフワとゆっくり下降する中、私は口を開いた。周りに人がいようが、今話さなければならないと思ったのだ。
「私ね、典明の気持ち、分かるよ。あの時一緒にいたのに、典明だけがやられて…何もできなかった自分に苛立ったし、嫌悪感も抱いた。…それに、絶望もした。」
「なまえ…。」
思い出したくもない、エジプトでの記憶。あの時計台や給水塔は、今でもたまに夢に出てくる。
「でもね、大丈夫だよ、典明。私は、典明と2人でひとつなんだから。典明だって、受け入れたでしょう?」
「だけど精神は、君は君で、僕は僕だ。それに、僕は君を守りたい。」
「それは私だってそうだよ。……典明は、傷だらけの私は嫌?」
「そんなわけないだろう!今は、そういう話をしてるんじゃ…!」
「うん、そうだよね。典明は、私の傷跡ごと愛してくれるもんね。…私だって何も、好き好んで怪我をしてるわけじゃないよ。だけど、典明を守ってできた傷を典明が愛してくれたら、私は嬉しいし、やっぱり典明愛してるって、思うんだけどな。」
私の背中には、今もDIOに蹴られてついた傷跡が残っている。刺青で分かりづらくはなっているが、きっと一生消える事はないだろう。
「っ、…君は、天使か…?」
ポロ、と典明の綺麗な瞳から、一筋の涙。それをちゅ、と唇で吸い取るようにキスをひとつすると、お返しのキスが唇へと返ってくる。
人前だというのにそのキスは止まりそうになくて、先にキスした私も悪いが、グ、と手首を掴んで無理やり引き剥がした。典明は意外と、人目を憚らない時があって困る。
「もしもし承太郎?パッショーネのボスのスタンド能力についてだけど。」
何とか無事にサルディニア島へと到着した。しかしここ数日戦いに次ぐ戦いで疲労困憊の彼らは、休息しつつ目的の地を探す事にしたようだ。こうして少し時間ができたというわけで、やっとの事で承太郎へ電話する事ができた。
「スタンド能力が分かったのか?」
「まぁ…そうね。とても厄介な能力で…正直、承太郎には今すぐこちらに来てほしいんだけど…。」
「なんだ。テメーがそんな事を言うなんて、珍しいな。勿体ぶらずに早く言え。」
「…時を、飛ばす能力。それと数秒先の未来を予知できるみたい。」
「……なるほどな…。分かった、すぐに向かおう。…間に合う保証はないがな。」
「だよね…。でも、承太郎が来てくれるなら心強いよ。ありがとう。」
「…そうか…。何かあればすぐに連絡しろ。じゃあな。」
承太郎は、果たして間に合うだろうか。ボスのスタンド能力に対抗できそうな人物は、現状承太郎しか思い浮かばない。露伴のヘブンズ・ドアだって有効かもしれないが、そもそも近づく事が困難な上に攻撃の手段を持たない露伴を危険な場所に出すわけにはいかない。
なんて…典明はいつも、こんな気持ちで私を守っているのかもしれないな、と思った。