第2の任務 トリッシュを護衛せよ
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「なまえ。」
「?なぁに、ブチャラティ。」
無事に初流乃が回収したディスクを受け渡し、いざ亀の外に出ようと背を向けた時…ブチャラティに呼び止められる。これから次の指令とやらを確認するはずだが…このタイミングで、何の用だろうか。
「君さえ良ければ、一緒にこのディスクを確認してくれないか?」
「…はぁ?なぜ…?」
「…正確には、気を遣ってわざわざ外に出なくとも良い、という事を言いたい。別に俺達のチームに加わってくれというつもりはないが、現に何度も助けられているからな。」
なるほど。ブチャラティなりの気遣いという事か。しかし…チラリと周りの反応を伺うと、2回も共闘したミスタと露伴のサインをあげたナランチャはまだしも、アバッキオは不満気な表情を浮かべているし、外にいるフーゴだってきっと、いい顔はしていないだろうと予想がつく。ブチャラティが"良い"と言っている手前反対はできないが、賛成もしていないといった表情だ。
「悪いけど、私はそっちの事情には巻き込まれたくはないの。私は…息子である初流乃が危険な時に、手を貸しているだけ。それに言ったでしょ。私には、探している人がいるの。」
私の元々の目的は、ポルナレフの捜索だ。そしてその次に、初流乃の安全だ。
露伴の言った事を気にしているわけではないが、面倒事に首を突っ込んでいる場合ではないのだ。
私の頑なな返答を聞いて「そうか」と言ったブチャラティはそれ以上引き留める気もないらしく、次の言葉は出てこなかった。なんだか…承太郎と話しているような気分だ。
「これまで通り、助けが必要な時は言ってくれれば、手を貸すから。必要な情報だけを教えて」とだけ言い、当初の予定通り亀の外へと飛び出した。
「サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会…なかなかに独特な名前ね。露伴なら知ってるんでしょうけど。」
サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会。海に浮かぶ島に建てられた教会で、かなり古い歴史を持つそれは、さすがイタリアの有数の観光名所なだけあって外観すらも美しい。典明と一緒に視界に収めると、神々しくて今すぐ絵に残したいくらいだ。
「私は一緒には行けないけど、大丈夫。きっとブチャラティがあなたを守ってくれるから。それこそ、自分の命と引き換えでもね。危険を察知したら私もすぐに駆けつけるから、心配しないで。」
ここまで来ても不安な表情が消えないトリッシュ。安心させるように声をかけるが、それでも浮かない表情である。
「なまえは…ジョルノの母親、なのよね?じゃあ、花京院さんは、ジョルノの父親?」
「…血の繋がりはないけど、そうよ。」
「2人ともジョルノと血が繋がっていないのに、どうしてそこまで心配したり、大事にしたりできるの?」
「うーん…、私も、そうしてもらったからかなぁ。あとは私は初流乃に、たくさんの愛を受けて育ってほしかったから。」
トリッシュは、パッショーネのボスの娘らしいと聞いた。生まれてから今まで会った事がないと、トリッシュから聞いた。彼女の父親がどんな人なのかは分からないが、承太郎が徐倫と会わないようにしているのと同じような理由だろうか?それともDIOのように、育児放棄をしているか。どちらにせよ、私と典明には理解できない関わり方だ。
「今まで会えなかった父に会えるせっかくの機会だから、会うだけ会ってくるといいわ。聞きたい事があれば聞いて、気に入らなかったら私に言って。あなたも初流乃みたいに、うちの子にするから。」
「!…それも、いいわね。」
「ふふ、うん。ねぇ、いいでしょ、典明?」
「もちろん。こんなにかわいい娘ができるなんて、夢みたいだな。」
私がかつて聖子さんにしてもらったように、トリッシュのもしもの時の逃げ先になってあげたい。本当にうちの子になったっていい。ならなくたっていい。うちの子かうちの子じゃないか、本当は関係ない。それくらい私がトリッシュをかわいがり、愛を持って接しているのだと理解してくれれば、それで。あの時の聖子さんもこんな気持ちだったのだろうと、今になって分かる。
「…行ってくるわ。ありがとう、なまえさん。」
「うん。くれぐれも気をつけてね。ブチャラティも、お願いね。」
「あぁ。」
2人がボートから降り、教会へと向かっていく。帰ってくる時は、1人か、2人か。どちらにせよ、トリッシュにとっていい選択ができる事を祈った。
「はぁ…典明、本当に素敵。神々しい。ねぇ、横顔もいい?風がいい感じに吹いてるから、向こうを向いて。」
「すっげー…。なまえって、絵がめちゃくちゃ上手なんだな!」
我慢ができなくて、鞄から取り出した手帳に典明の姿を描き始めて早数分。暇を持て余したナランチャが私の手元を覗き込み、純粋な感想を述べた。犬みたいでかわいい。
「上手なのは当たり前でしょう。こう見えて、一応プロの画家なんですから。…信じられないですけどね。」
「ふふ…、あなたも大概、素直じゃないのね。かわいい。」
「はぁっ!?かわ…!」
「あぁ、勘違いしないで。私は全員の事をかわいいと思ってるから。」
ギャングといえど、全員まだまだ若い。その未熟さが、私はかわいいのだ。私にもそういう時期があったのだろうが…ジョセフさんは、私や典明、承太郎を見て、当時こういう感情を抱いていたのかもしれない。
「…あれ…。」
瞬きの間に、見つめていた典明にふと、小さな違和感を感じた。しかし何がかと言われると分からない。気のせい、かもしれない。
どこからともなく猫がやってきて、前を横切ろうと歩いてくる。何気なくその子に手を伸ばして、しかし次の瞬間には猫は数歩先を歩いていて、嫌な予感がしてくる。
「ねぇ、典明。」
プルルルル
「!ブチャラティ!」
着信を告げたのは、初流乃の携帯電話。電話の相手はブチャラティで、初流乃の口ぶりや表情から、中では何かただならぬ事が起こっているようだ。
「トリッシュ…!」
「ブチャラティ!」
「なまえ!」
初流乃とほぼ同時に、走り出す。初流乃も来るのなら、私が抱えた方が速い。初流乃をしっかりと抱き抱え、教会へと向かって走り出した。
初流乃の案内によるとブチャラティは地下の納骨堂にいるらしい。きっと、トリッシュも一緒だ。
何事もなくあってくれ…!